第9話 【支配(ドミナント)】
「ナユタ、そもそも君は【
「……えっと、
異変を引き起こした黒
「う、ん、そう──はぁ、──だね。じゃ、じゃあ、【
「…………【
「その通───……ごめん、ちょっと待って、疲れた……」
「いや早っ⁉︎ まだ走り始めてから1分も経ってないですけど‼︎」
「う、うるさい……。私は運動をほとんどしてないんだよ…………!」
彼女の声がいきなり遠くなり、慌てて振り返ってみれば、そこには肩で息をし、手を膝につくテルルの姿が。
ナユタは急いでテルルに近寄り、彼女をおぶって追跡を開始する。
「えーっと、なんだっけ? 『
「もう直前の記憶も
「ああ……、そうだったね……。【
突き当たりを左へと曲がり、屋根を走る黒
彼は今、ナユタが走る通りの左沿いに並ぶ建物の屋根を伝っていた。
「見てごらん」
テルルが指差す先には、男と同じように屋根を伝いながら彼を追いかける
「彼らは皆、『
男を追跡する
燃え盛る木の枝を穂としている槍を持つ者。『
それらは全て、テルルの言う通り、それぞれの
彼らは支配した物質や生物を巧みに扱い、黒
二段構えの波状攻撃。
そのことを、男は後ろを
三角屋根の頂点を走っていた男は、後方から襲いかかる脅威に対し、斜め右に進路を逸らすことで、三角屋根を滑り落ち、高低差によって炎の渦を回避する。
そして、その勢いを保ったまま跳躍をすることで、通りの向こう側にある建物の屋根へと移動した。
それを見て、指示を飛ばされている魔物たちも進路を変える。
狼の魔物、ヒイロキバはその跳躍力を以って、
男の左側からは、屋根へと着地し、瞬時に襲いかかるヒイロキバ。
正面からは、弾丸のような速度で突撃を仕掛ける
魔物であるが故に、一切の容赦なく男に危害を加えようと迫る脅威。
が、男は全く動じない。
「────」
むしろ、彼の方から短く、一歩だけ、距離を詰める。ヒイロキバの方へ。
今まさに、彼を襲わんと、その名前の由来となった
下から上へ。開いた口を閉じろと言わんばかりの鋭く一本の線を描く一撃。
果たして、ヒイロキバは、男が振るった一撃によって絶命した。
そのことを確認した途端、男は瞬時に後方へ強烈な蹴りを放った。
捻りから放たれた腰の勢いに逆らわず、左の足を折り曲げ後方へ突き出す。
その蹴りが捉えたものは、彼に突撃した
横合いから強烈な一撃をくらい、体をくの字に折れ曲がらせる
そこにさらに突き刺さったのは、男が右手に所持していたナイフ。
蹴りを見舞った直後に、ナイフを投擲することで、止めとする。
力なく地面に落下していく
その様子を眺めていたナユタは、思わず足を止め、見入っていた。
わずかな時間で行われた攻防。
3体1にも関わらず、男は一瞬の内に魔物を2体も仕留めてしまった。
「すごい…………」
あまりにも圧倒的な力量に、知らずの内に感嘆の声を漏らしてしまうナユタ。
「こら」
「いたっ」
そんなナユタの頭に、おぶっていたテルルからのチョップが見舞われた。
「何するんですか師匠……」
「感心するのいいけど、足が止まってちゃ観察が続けられないよ。ほら、追って追って」
「うわっ、そうだった⁉︎」
テルルの言葉を受け、慌てて屋根を走る男の追跡を再開する。
「……でも師匠、なんで今更【
「ん?」
「俺も一応、ひよっこですけど
それは、ナユタにとって当然の疑問だった。
そもそも、彼がテルルたちに無断で『
【
「そうだね。私も別に君の知識を疑っているわけじゃないよ」
「じゃあ、何でなんです? 俺にわざわざ【
「単純だよ。きっとすぐに【
「へ?」
「ナユタ、ガイアンを含む
「何を言って……」
「いいから、言う通りにする」
困惑の表情をみせるナユタに、テルルはピシャリと言い放った。
彼女が見据えているのは、いまだに
「あの男は、こうなるとわかった上であんな演説をした。自分が犯人だと名乗り出なければ、何が起こったか分からず混乱する私たちの目を盗んで、秘密裏に『
「あっ……」
確かにそうだ。考えてみれば、あの男は何故自ら犯人だと名乗り出たのだろうか? 異変を起こした理由は、演説の中で語っていたが、そもそもそんなことを話さずに、彼は混乱する人々の中に紛れていればよかったはずだ。そうすれば、犯人を探し出す方法がなかった
彼が行った犯行の自白にはメリットが
「一体何が目的なんだ? あの人は……」
「さあね。奴の目的を推し量ることは不可能だ。──でも、一つだけ言えることがある」
それは。
「奴は、こんな状況になっても達成する自信があるんだ。フットレストにいる大人数の
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