第6話 異変
「んなもん決まってんだろ」
ゆっくりとした動作でこちらに歩を進めるおやっさんこと、ガイアン・アルクヴァース。体の大きさも相まって、ただの歩行にものすごい圧を感じてしまう。
「腕試しだよ」
言って、おやっさんは俺に向かって何かを放り投げてきた。
反射的に受け取ったそれは、木で作られた両刃剣。
「聞けばオメェ、勝手に『
「う……」
『勝手に』の部分を強調され、思わずたじろいでしまう。
おやっさんは怒っている。
師匠と同じ様に、俺が一人で『
「さぞかし死線をくぐり抜けて成長してきたんだろうなぁ? えぇ?」
そんなことはない。俺の『
「いや、そんなことは──」
「成長したんだよなぁ?」
「…………うっす」
あ、だめだこれ。完全に戦わなきゃいけない流れだ。
逃れられないことを悟った俺は、諦めて立ち上がり、木剣を構えた。
それに応じるようにおやっさんも立ち止まり、持っていたもう一本の木剣を構える。
「帰ってきたと聞いて、ここに立ち寄ってみりゃあ、吠えてるお前がいた」
「…………」
「ちったあ自分の掲げた夢に見合う男になったのか、見せてみろ」
「────はい‼︎」
おやっさんの言葉を受けて、俺は気合を入れ直した。
そうだ。俺の掲げる夢は、今の俺じゃ達成できない。
なら、少しずつ成長するしかないだろう。
曲がりなりにも、『
あの過酷な地を生き延びるために、一人で色々準備や鍛錬をしてきた。
その成果を、おやっさんに見せつけてやる!
「……行きますっ‼︎」
言葉で合図を送り、俺は前へと駆け出した。
低く、鋭く。一気に彼との距離を詰める。
振るう木剣の
おやっさんの脇腹をかち上げるイメージの斬撃だ。
だが、おやっさんは一歩も動かない。
片腕だけを動かし、俺が振るった剣の軌道に、自らの木剣を差し込むことで、体に直撃する前に完璧に受け止めてみせる。
「くそっ‼︎」
両手で握りしめ、力を込めて繰り出した斬撃を、腕一本で止められた。わかっちゃいるけどショックが大きい。
「おぉい! 久しぶりに『
「【
気づけば、店の前の通りには人だかりが出来ていた。
ここでおやっさんと喧嘩、もとい訓練をするといつもこうなる。
すっかり店の出し物の様な扱いだ。
……まあ、そのほとんどがおやっさんの剣技を楽しみにしている人たちだけど。
よくみれば、師匠も呆れた顔で人だかりに混じっている。
「それが『
「い、いいえ、まだです! こんなもんじゃないですよ、俺は‼︎」
なまっちょろい。確かにそれは事実だ。この
だけど、諦めるわけにはいかない。
せめて一太刀はおやっさんに見舞ってみせると覚悟を決め、俺は再び走り出した。
────だが、その時。
「なあ、アレやばくね?」
周りを囲っていた観衆の誰かが呆然と言葉をこぼした。
最初は、耳に入っても気に止めず、おやっさんとの距離を詰めようとした俺だったが、その言葉を皮切りに観衆がざわめき始めた。
そして、何より。
「────」
相対しているおやっさんが、
俺は慌てて足を止め、おやっさんが見つめる方向、すなわち後方へと振り返った。
「……………は?」
そこには、信じられない光景が広がっていた。
俺の目に映るのは、大通りの向こうの『
それは、この街から『
その
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