十四、僕たちはテロリスト

 タナトス研究所とは、死を研究するところ。僕が教団と接触してから建てられた、不死人を殺すための施設である。国内唯一であり、中には同じこころざしの研究者が少なからずいて、今もなお、ザ・グリムリーパーを作ってくれているはずだ。いつか人類を救うために。

 

 僕は網膜もうまく認証システムに目を見せて、扉を問題なく開けると、山根を連れて入っていく。すると、きらびやかな受付場所に出会った。そこに立つ喪服もふくのような制服を着た女性二人はあっ、と声を上げてこちらに駆け寄ってくる。


「泉様! 無事だったのですね! 一体、何があったのですか? 教主様は? ほ、本当に捕まってしまったのでしょうか?」

「裏切者が出たと聞きました! それと、そちらの方は……」

「落ち着け」焦り、捲し立てる二人にそう言って、続ける。「とにかく、みんなを呼んできてくれないか? その時に話そう」


 人を呼びに行かせて、数分後。研究所内にいる人々が集まった。研究者を除いて、やはり喪服を彷彿とさせる様相の者たちである。彼らは教主たるエリザの逮捕を悲嘆しており、無事帰ってきた僕に対して説明を求めるのだった――。それから語ったのは、知る限りのこと。内通者がいて、薬が混入した花火の打ち上げを阻止されてしまい、挙句の果てには、首謀者が警察側に露呈ろてい。そして、エリザは捕まったと。また、彼らから情報を得て、僕が指名手配されていると知った。

 

 警察官二名の殺人、及び人質を取り、運転させての逃亡……世間にはそのように報道されており、すでに車を捨て、行方をくらませているとも周知済みだそう。だが、ザ・グリムリーパーの存在は混乱を避けるためか、詳しくは言及しておらず、『危険極まりないテロ行為』としか現状流されていないらしい。



「どうしますか?」


 幹部の一人が真剣な眼差しをこちらに向ける。

 エリザは計画が漏れ、警察の下へ。僕は指名手配されてしまい、本格的な捜索が開始される予定。

 本当に困った状況だ。


 しかし、取れる手がないわけではない。


「はぁ、仕方がない。結局のところ、目的が達成されればいいのだ」

「それって……まさか、再現計画を? ま、まだ時期尚早では? どう考えても、薬が足りません」


 視界の端で、山根がピクリと肩を跳ねさせた。

 

「いいや、違う。僕たちはテロリスト。その前提で考えれば、自ずと何をすべきか分かるはずだ」僕は微笑みながら、教団員に告げる。「君たちよ――。人類のために、命を捨てろ」


 すると、項垂れる者も頭を抱える者も、顔を上げて瞠目どうもくした。

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アタナトス彗星 織田なすけ @bartholomew1722

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