ぼくたちの図書館

 昼でも夜でも、楽しい夢を見るとぼくはうれしくなる。

 しかし、父さんは、悪い夢を見て目覚めると安心し、楽しい夢を見て現実の世界に帰ってくると悲しくなるらしい。

 ぼくも働くようになると、父さんみたいな受け止め方をするのだろうか。


 ぼくが今いる学校の図書館は、四階建てで、真中が吹き抜けになっている。

 一階にカウンターがあり、本を借りる時などに上をながめると、四階で本を探している人の顔を見ても、遠くてだれなのかわからない。

 もちろん、四階に上がり、張り巡らされた転落防止の柵越しに、一階の人たちをながめても、同じ話であった。

 三階にいたぼくが、備え付けられたイスに坐り、階下を何気なく見渡すと、同じ学年のカナコさんが、男の子たちに囲まれていた。


 カナコさんは、ショートカットが良く似合う女の子で、学年トップの成績だったが、眼鏡をしていなかった。

 ぼくは眼鏡がなければ日常生活を過ごせないほど目はわるかったが、成績は中の上がやっとであった。


 カナコさんは、ひとりで乱暴者たちを追い払うと、ぼくの視線に気がついた。

 どうやら、三階に上がって、ぼくのところへ来るようだ。

 カナコさんは、自分よりも成績のわるい、臆病な男の子を好きになってくれるだろうか。

 先週、父さんから将来の夢を聞かれて答えられなかったけれど、カナコさんと結婚できたら幸せだろうなと、この頃、ぼくは思う。

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