第20話 破壊2

第二十話 破壊2

 それは突然だった。

 レベルファイブのダンジョン攻略中に起きた。

「何か空気が重いというか、変な感じしません?」

「確かに。何かの圧を感じるね」

 そう。先程からモンスターがあまり出現していない。代わりに、何かの、ある種の力を感じる。

「気にせず進みま――」

「しっ」

 紅丸さんが唇に指を当てた。

 少し、何かが動く音が聞こえる……。

「やはり何かいる」

 そう言った瞬間、目の前の床が真っ二つに割れた。

「気をつけたまえ! これは巨大なモンスターだ!」

 そう言われて、一瞬でダンジョンは壊れて、僕らは勢いよく外に放り出された。

 その次に見たのは、巨大な岩のようなモンスターだった。

 何……だ……あれ……。

「ウオオオオオ!」

 その咆哮が聞こえたかと思うと、紅丸さんが駆け上り、攻撃をするのが見えた。

 僕も完璧主義を発動する。

「いいのが来てくれよ!」

 そして、手に炎がまとう。

 火炎主義だ。

 これで焼き尽くす!

「紅丸さん! 炎がいくので、ちょっと避けてください!」

「何!? わかった!」

 そして巨大なモンスターに向けて全火力を吹きつけた。

 しかし、びくともしなかった。

 そして氷山の一角と言うのが正しいだろう。

 ゴゴゴという音と共に、大地は揺れ、牛久大仏くらい大きなモンスターが現れた。

 いや、もっと大きいだろう。

 推定200メートル。

 上が見えない。

「僕らでは無理だ。逃げよう!」

「でも、どこへ? やつはそこにいます!」

「逃げるんだ。勝ち目はない……!」

 そう言った途端、その岩から人間が出てきた。

 生きている人間?

「大人たちだ……。生きている!」

「何だって?」

 そう。生きている大人たちがいた。

 食われたと思っていた大人たちだ。

「何だ、この数は……全員が出てきているとしか思えない!」

「紅丸さん。体が……!」

 紅丸さんの体がうっすらと光り始めている。

「おそらくモンスターが消えているんだろう。あれが最後のモンスターだ。倒せよ。君にしかできないことだ。今までありがとう。僕は消える前に、一撃を加える。そこに君の何かの〈主義〉をぶつけたまえ!」

「はい! ありがとうございました」

 そして紅丸さんは空を漂い、モンスターに体ごとぶつけて、四散した。

「完璧主義!!」

 無限主義が出た。

「よし。全部吸い込めぇえええええ!!」

 モンスターをすべて吸い込んだ。ダンジョンも何もかも。これで終わりなのだ。これで!

「主義……剥奪しました」

 そうどこからか聞こえてきた。

「ふむ……。面白い。サンプルデータは取れた。地球を離れるとしよう」

 と、誰かが呟いた。パソコンをカタカタと打った。

 それから三日後。

「浩二! 会いたかった」

 両親だった。

「よかった。生きていたんだね」

「うん。一時はどうなることかと」

「そうだ。阿久津さん見てない?」

「誰だいそれ」

「え?」

 それから二度と阿久津さんに会うことはなかった。

 モンスターはすべてなくなり、〈主義〉もなくなって、ギルドは解散、政治社会も戻り、整備がなされていった。

 紅ともはぐれたままだ。

 元気にやっているだろうか?

「浩二。学校の入学式だ。ちゃんとやってこいよ」

 父親が肩を少し叩いた。

 あれから学校再入学制度が発足し、僕らは学校に通った。

「自己紹介を」

 担当の先生が言った。

「はい。僕は烏丸浩二です。元冒険者です」

「じゃあ、拍手」

 そしてみんな拍手をして、次の人へと移った。

 その時、誰かが遅れてやってきた。

「すみません。ちょっと道に迷っちゃって……」

「席に着きなさい」

「はい。すみません……」

 そしてその子の番になった。

「えっと私は結構歳なんだけど、高校をやり直すこととなりました。えっと名前は……」

 そう。僕は知っていた。

 彼女が誰かということを――。

「私の名前は、月城――」

 ここから始まるのだ。

「月城紅です。よろしくお願いします」

 拍手が響いた。

 僕の隣に来て言った。

「浩二、よろしくね」

「うん。よろしく」

 僕らは出会った。

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ダンジョン攻略が普通になった世界 おがた @eelmaru

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