第19話 破壊1
第十九話 破壊1
その日僕は、ギルドにいた。
「うーん。やっぱりいい仕事ないな〜」
クエストボードの前で、延々と悩んでいた。
「ダンジョン攻略は全部レベルファイブ以上しかない……」
けれど、他の簡単なやつというと、人捜しとかになってしまう……。
どうしたものかと、さっきから小一時間は悩んでいる。
「どう? いいのあった?」
紅がダンジョンでのモンスターの部位を換金し終えたらしく、聞いてきた。
「ないね。いいのは」
「そっか。またバイトでもしたら? ダンジョンで命の危険にさらされるよりは、マシだと思うけど」
「それも考えたよ。だけど……実質すぐなくなるから、こう、パーッと稼ぎたいんだよねえ」
「なるほど。そうね。宿代とかでそういうのは全部消えるもんね」
そうなのだ。結局バイトをしたところで、稼げるわけじゃない。その日暮らし、日銭を稼ぐことしかできない。
「うーん。じゃあ、あれは? 他のパーティに混ぜてもらうとか」
確かに。僕の実力が足りないから、こうやってダンジョン攻略のクエストをどうしようかと悩んでいるのである。
だったら、いっそ他の強いパーティに混ぜてもらうというのは、名案である。
「いや……。僕結構弱いしなあ……」
「でも、何もしないと何もできないわよ」
ぐ。それを言われたら確かにそうなのだ。
その日暮らしでもいいから、何かしないといけない。
お金は目減りしていく――。
「わかった。ダンジョン攻略をする」
「レベルの低いダンジョンないのに?」
「紅丸さんに頼んでついてきてもらう!」
そして紅丸さんにお願いしたら、あっさりオッケーをもらった。
「僕がいればおそらくレベルファイブくらいだったら大丈夫だろう。この前みたいにレベルシックスがレベルナインになるという間違いも起きなさそうだしね」
あれは結局、ギルドのせいだった――ということになっている。
だが、ファイブをいくら変形してもツーにしかならないから、ギルド側が間違えることも、こちらが勝手に間違えることもない――という判断だった。
「じゃあ行こうか。それにしても、君は武器には興味ないのかね」
「え? 武器?」
そうだ。僕の持っている鉄剣は、安い方の武器である。
高い武器は資金面からして買えないのだ。
だが、武器を新調した方がダンジョン攻略にはいいというのは、よく理解している。
「あー、そうですね。完璧主義があればいっかなー的な」
「〈主義〉にばかり頼っちゃだめだよ。もっと即物的なもっと根本的なところを変えていかないと」
「そうですね……。まあ、次お金が入ったら買います」
「いいや。今行こう。僕が買ってあげるよ」
「いやいや! そんなわけには! 悪いですよ」
「じゃあそのボロい剣でダンジョンに挑むのかい?」
「…………」
それを言われると何も反論できないのだが、どうしたらいいのだろう?
「わかりました。せめて毒の剣とかにします」
「武器屋へ行こう」
「はい」
そして武器屋へ向かうと、紅丸さんは片手剣を持ってきた。
「ダンジョンは洞穴のような構造だ。太刀とかもあるが、まずは片手剣でやった方がいいだろう。これは麻痺の〈主義〉と同じ力が封入されている剣だ。ちょっと振ってみたまえ」
ブンブンと剣を振ってみた。
結構しっくりくる。
意外と軽い。
「モンスターを麻痺させて、完璧主義で出たランダムの〈主義〉で倒すって流れですか?」
「うん。そういうことになるね。ただ、君の〈主義〉の欠点は、ランダムだってことだ。しょぼい〈主義〉もあれば、強い無限主義のようなものもある。そこがちょっと難点だね」
「はい。僕もそう思います」
だからあまり〈主義〉に頼ってはいけないのだ。
「じゃあ、火の剣とかはどうだ?」
「かっこいいですね」
「剣を振るうと火花が散る」
「どういう効果があるんですか?」
「相手の温度を上げる。これだけで倒せるかもしれない。だけど……」
だけど?
「高い。僕には払えない」
そういうことかー。
「さっきの麻痺の剣でいいです」
「うん。ダンジョン攻略を進めて、お金が貯まったらまた考えよう」
そして僕らは二人でレベルファイブのダンジョンに入った。
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