母と娘

「さて、皆さまお集まりですわね」

 緋簾葦が、いつもとは違う席に座っている。爛道が座っていたであろう席だ。戸鞠は緋簾葦との距離が遠くなってしまって悲しい。もっと前に座りたいと言いたいところだが、そんな明るい雰囲気はない。というか、みんなぎすぎすしている。

「おや? 緋簾葦くん、まるで君が仕切っているように見えるが?」

「ええ、ご不満ですか?」

 緋簾葦が正面からニッコリと微笑むと、九朗が狼狽したように、押し黙った。

「別に良いではありませんか。九朗伯父さまはこういうこと苦手でしょう?」

「……やりたいなら止めないよ。だがみなが集まっていると言うのは違うのではないかね。麻衣華くんが居ない」

「ああ、そうでしたわ。なら、どなたかお呼びになってくださいな」

 どなたかと言いながらも、緋簾葦の目は翠華に向いている。最低でも二人一組で動くとなると、あと一人必要だ。

「誰も行かないなら僕が行きますけど。誰も居ないなら」

 別に行きたいわけではないことを念頭に置く。幸い、誰も突っかかって来る人は居ない。

「なら、翠華、僕と一緒に行こうか」

「あ、はい」

 翠華がおずおずと立ち上がった。戸鞠は、その背中にそっと触れて、先を促す。翠華がビクッとしたので、悪いことをしたかなと思いつつ、今この子に優しくしてやれるのは自分しかいないのだと思い直した。緋簾葦はあんまり、妹に優しくないみたいだし。


 翠華や麻衣華の泊まっている北館に着くのに、大した時間はかからない。せいぜい一分歩いたかどうかという短い間に、麻衣華の部屋まで来てしまった。勢いで同伴を願い出たものの、正直、麻衣華には苦手意識がある。戸鞠は緋簾葦の仲間だと思われているだろうし、そういう意味でもよい印象は抱かれていないだろう。

「僕、一緒に行った方がいいかな。それともここで待ってる?」

「えっと……」

 翠華は困ったように視線を泳がせた。翠華もまた、迷っているのだ。まあ、誰もが緋簾葦のように、迷いなく前へ進んでいける訳は無い。

「お母さんは、僕が現れたらビックリする?」

「ビックリは……どうでしょう。緋簾葦姉さんと、先輩は違いますし」

 そんな感じなのか、と得心する。自分は緋簾葦と一緒にいると色々な意味で目立たない。

「……なるほど。じゃあ、僕は隣に居るから、翠華がお母さんに話を進めてくれるかな。何かあれば、僕が補足なり手助けなりするから」

 翠華が途端に安堵した面持ちに変わって「はい」と頷いた。ノブを捻り、翠華に続いて中に入る。

 中は、まるで時間が停滞したような、淀んだ空気が漂っていた。何百年も前に作られたピラミッドに初めて足を踏み入れるような異質感。その奥で、黙って外を眺めている麻衣華が居た。窓際の腰掛けに座り、視線は虚空に固定されている。

「ママ?」

「……翠華ちゃん?」

 覚束ない声で、麻衣華が振り返る。すると傍らの戸鞠に気づいて「あ……」と小さく声を上げた。僅かだが恐怖を帯びている。

「僕は翠華の付き添いです。……その、今は一人で行動しない方が良いということになりまして」

「知っているわ。燕治義兄さんと、日向が亡くなったのでしょう。聞こえていた。ここは静かだから」

 そうだったのか。まあ暴れられても困るし、わざわざ翠華と二人で来るまでもなかったのは、手間が省けて良いが、早速やることが無くなったのは痛い。緋簾葦が居ない時の麻衣華が一体どう振る舞うのか、興味がある。この人は確かに緋簾葦を罠にかけようとしたが、それはきっと恐怖に駆られてだ。根っからの悪人には見えないが、それをこの目で確かめておきたい。

「ママ、大丈夫?」

 幸い、翠華は心配そうに母親に話しかけた。

「わたくしは平気よ。あなたこそ参っているのではない?」

「私は大丈夫だよ。戸鞠先輩も居るし……」

 チラッと翠華が戸鞠を一瞥する。それを麻衣華は胡散臭そうに、戸鞠を見た。翠華が思っているほど、麻衣華は戸鞠を信用していないのだ。

「……翠華ちゃん、その方は、本当に信用できるの?」

 案の定、麻衣華が戸鞠がいるにもかかわらず、そう翠華に尋ねる。

「えっ、あ、当たり前だよ。だって戸鞠先輩は、昔から私にも優しくしてくれて……」

「本当に? 言っては悪いけれど、わたくしの目には、その人には緋簾葦と同じものを感じるのだけれど」

「緋簾葦と同じものって何ですか?」

 気になって、戸鞠は思わず口を挟んだ。麻衣華がウッと気後れした様子を見せるも、すぐに敵意をあらわにする。

「人を人とも思っていないということよ。あなたも緋簾葦も、まるで化け物だわ」

「ママ、良い過ぎだよ……!」

「そうかしら。だって実際そうじゃない。この人たち、まるで動揺していないんですもの。中庭で遺体が見つかった時も、今も、なんだかスンとしているじゃない。おかしいわよ」

「お言葉ですが、僕だって――多分緋簾葦も、何も感じていない訳じゃないですよ。ただ最善手を心がけているだけです。動揺したって何もならないじゃないですか」

「それがおかしいって言ってるの! こんな状況で、どうして機械みたいにしていられるのよ!」

「ま、ママ……」

「……ごめんなさい。わたくしったら、感情的になってしまって。ダメね」

 麻衣華がシャンと、自身の頬を叩く。その姿は母親として気を張ろうとしているみたいで、怒鳴られた戸鞠も悪く思えなくなってしまった。やっぱり、気の小ささが攻撃性に繋がっているだけだ。小型犬が吠えているのと同じ。あるいは手のひらのハムスターが、飼い主以外の人間に強気に出るのと同じだ。

「……すみません、麻衣華さん。僕たちは確かに、普通の反応はしていないでしょう。でもそれは、僕たちの信念によるものなんです」

「……あなたたちの信念?」

 麻衣華が怪訝そうにしたのを見て、戸鞠は最大限の申し訳なさを顔に貼り付けた。ここが最大のチャンスだ。

「はい。いつでも強く優雅に。どんなに追い詰められても、それを見せてはいけない。滑稽かもしれませんが、僕たちはたとえ断頭台の上でも気高くありたいだけなんです。フランスのさる王妃みたいに」

「……ふぅん」

 麻衣華が考えあぐねている様子で戸鞠を見つめる。あと一押しだ。戸鞠は確信する。

「それに僕は、翠華のことも同様に大切に思っていますよ。こんなことがなければ、姉妹仲を取り持ちたいと思っていたんです」

 翠華がハッと戸鞠を見つめたが、戸鞠は麻衣華から目線を外さなかった。ややあって、麻衣華の方がスっと違うところを見る。

「……そう。よく分からないけれど……確かに、あなたは誠実である気がするわ」

 姉妹仲を取り持ちたかったのは本当なのだから、そう思って貰わなければ困る。そんなことを思いながら、戸鞠は真剣な表情を崩さない。

「ありがとうございます。信じてくださって」

「信じたわけじゃないわ。疑うのに疲れただけよ。……それに、わたくしは翠華ちゃんが無事なら、それで良いの」

 麻衣華が薄らと微笑みを浮かべた。今にも凪いでしまう水面のような儚さを感じる。隣で翠華が「ママ……」と小さく呟いた。何故だか泣いてしまいそうな声だ。

「……ママ、教えて」

 翠華が不意に、戸鞠も予期していなかったことを言った。戸鞠と麻衣華、二人の視線が注がれても、翠華は泣きそうな顔で母親を見つめている。

「ママ、私にも言っていないことがあるよね。ここに来た理由も、帰りたいのに帰れない理由も……私、ずっと不思議だった」

「……翠華ちゃん」

「ママのこと、私は大好きだよ。だから教えて欲しいの。こんなことになっちゃって、私も、自分で何か考えたいし、しなくちゃって、思ってるから」

 麻衣華がもう一度、「翠華ちゃん」と呟く。戸鞠にしても、翠華がこんなにも強いことを言うとは思っていなかった。急な心変わりだとも感じる――緋簾葦に、何か言われたんだろうか? 戸鞠たちが居ない時に、緋簾葦と二人きりだったはずだ。その時に、何か。

 翠華が麻衣華に近づいて、そっと屈みこむ。椅子に腰かけた麻衣華に手を差し伸べる様は、まるで中世の騎士のようだ。

「ママ、私はママだけに頑張って欲しいわけじゃないよ。守られたいわけじゃない」

 麻衣華が、緊張の和らいだ風に笑う。

「……そうね。わたくしが守る必要も、無いのよね……あなたは爛道の娘でもあるのだから」

 麻衣華は静かに息を吐くと、次いで語りだした。

「わたくしがここに来たのはね、爛道に脅されたからよ」

「え……」

 翠華が驚いたからだろうか。麻衣華が自嘲的に笑って、窓の外を見る。

「わたくしたち夫婦はね、最初から破綻することが見えていた。あの人はただ自分の子供が欲しかっただけ。わたくしは……あの人の富に目が眩んだ。そうして結ばれたんですもの。あの人はわたくしなんか眼中にも無かった。わたくしも、それはそれで良かったのよ――緋簾葦さえ、あの娘さえ居なければね」

「どうして、緋簾葦姉さんが」

「あの娘は本当に父親に似ている。それに比べてあなたは……どちらかと言うと、わたくしに似たわね。わたくしはそれが嬉しいと同時に、酷く気がかりだった。だって、わたくしなんかに似て、どうしてあの人たちと同じ場所に立っていられるかしら? わたくしは、あの人たちと比べるとどうしても凡庸で普通の人間だもの。欲しいもののためならなんだって出来てしまう爛道や、その親戚たちが、何をするかも分からないのに、どうして恐れずにいられるでしょう?」

 外でカナリアが鳴いた。それはまるで、麻衣華の嘆きのようだ。

「わたくしは、毎日考えていたのよ。先に死ぬであろうわたくしと、残される翠華ちゃんと、あの緋簾葦。なにか今のうちに、わたくしに出来ることは無いのかしら。わたくしの命が尽きてしまう前に、翠華ちゃんに出来ることは――そんなときだったわ。燕治義兄さんに、手を組まないかと持ちかけられたのは」

「伯父さんに?」

「ええ。あの人も、爛道と比べると、あまり良い立場に無いのは分かるでしょう? 爛道に上手くすり寄った九郎義兄さんと比べて、我の強かった燕治義兄さんでは、爛道も邪魔に感じていたでしょう」

「でもママ、伯父さんたちだって兄弟だし、パパだってそんなに酷いことは……」

「するわよ。する。兄弟とか血の繋がりとか、あの人にはなんの制約にもならないに違いないもの」

 確信を得ている口調で麻衣華は言う。

「わたくしだってね、一度くらいは……何度か、夢に見た事があるのよ。今はこんなでも、いつか心を通わせられるかもしれない、いつかわたくしもこの人を愛せるかしら……って。翠華ちゃんが生まれた時、あの人、本当に嬉しそうだった。こんな顔するんだって本当に驚いたわ。わたくしの願いもその時、頂点に達した、これからはもう少し歩み寄ってみようかしらって……けれどもその瞬間、翠華ちゃんを胸に抱きながら、あの人は言ったのよ――『もういいぞ』って」

「……もういいって、それって」

「用が済んだと言いたかったのでしょう。ここに居るのはね、あの人にとってはもう使い道の無い紙くずと一緒なの。わたくしは、わたくしは……」

 麻衣華が涙ぐみ、顔を手で抑える。しばらく、彼女はそのまま嗚咽を漏らしていた。翠華がその背を撫で続ける。

「……だから、わたくしは燕治義兄さんの手を取ることに決めたの。爛道の動向や取引相手の機密情報を、燕治義兄さんに伝えることでね。最初は結構上手く行ったのよ。商談が上手く行かなくて不機嫌なあの人を見た時なんか、胸がスッとする気さえ覚えた……けれども結局、全部ばれてしまったのだけれど」

 麻衣華が声を上げて笑う。何もかもが終わると気づいた時の自棄的な哄笑だ。翠華が絶句するのも厭わず、麻衣華は在りし日の記憶を見ているようだった。

「……それで、脅されたのですか? ここに来るように?」

「それとはまた違いますわ。あの人は一言『わかっているからな』と言っただけで、その後はお咎め無しでしたもの。それが逆に気味が悪くて。燕治義兄さんも同じでした」

「なら、どうして今回は来られたのですか?」

「招待状にね、書いてあったのよ。今回は特別な催しだから、できるだけ参加するようにって。わたくし分かりましたわ。ああとうとう、その日が来たのねって」

「……それが脅しなのですか?」

 思ったよりもマイルドだし、ともすれば被害妄想にも思える。

「気の所為だって思ってらっしゃるわね……あなたは、爛道を見た事がないから、きっとお分かりにならないわ。本当に怖いのよ」

「爛道さんが?」

「ええ……後にも先にも、あの人と同じものを感じるのは緋簾葦だけ。人間の皮の中に、なにか別のものを飼っているような違和感。あなたは感じないのかしら」

 赤く腫れた瞳を、麻衣華は戸鞠に向ける。緋簾葦にという意味なら、戸鞠には分からなかった。

「緋簾葦は確かに突飛なこともしますが、恐ろしいわけではないと思いますよ」

「そう……あなたはそう感じますのね」

 麻衣華の視線が翠華に移る。

「翠華ちゃんは、どう?」

 翠華は少しの逡巡の後、硬く決意した面持ちに変わった。

「私は確かに姉さんを恐ろしく思う時もある。けれどそれは、自分の問題だと思うの。私の弱さを姉さんのせいには出来ない」

「そう。大きくなったわね」

 麻衣華が少し腕を伸ばして、翠華の頭を撫でた。細くて柔らかい赤茶色の髪がもさもさと揺れる。

「……ところで、麻衣華さん。今ホールでみんな集まっているんですけど……」

「行かないわ。嫌味を言われるだけだもの」

「けど独りで居るのは危ないかもしれませんよ」

「そうね。きっとそうなのでしょうね……けれど、今頃はどうせ、緋簾葦が仕切っているのでしょう? 九朗義兄さんはなんだかんだ押しが弱いし」

 全くもってその通りだ。戸鞠が同意を示すと、麻衣華は渋い顔をする。

「やはりね。九朗義兄さんはいつもそうよ。そんなだから爛道が好き勝手するんだわ」

 そう言えば、同じことを燕治も言っていた。

「そういうわけだから、わたくしはここで残っているわ。わたくしが何かするなんて誰も思わないでしょうし……黙って時が過ぎるのを待つわ」

「ママ……」

「大丈夫。大丈夫よ、翠華ちゃん。あなたはわたくしの娘だけれど、爛道の娘でもある。だから大丈夫」

 翠華が心配しているのは自分のことではないはずだ。だが麻衣華は、戸鞠ともに行くように扉を示した。

「戻って言ってちょうだい。ヒステリックを起こした馬鹿な女が部屋で引き籠っていると」

「言いませんよ。そんなこと」

 だがまあ、これ以上、麻衣華が変なことに巻き込まれないように、配慮はしておくべきか。無垢な子羊が無惨に殺されることを、戸鞠とて望んでいない。

「まあ、適当になんか言っておきます……緋簾葦にも」

 最後の一言が効いたからか、麻衣華が心から嬉しそうに破顔した。金目当てで爛道と結婚したとは言うが、何かやむに已まれぬ事情でもあったのかもしれない。やはり邪悪な人には見えない。

 麻衣華に見送られて、部屋を出た。途中ハンカチを落としてしまって麻衣華に手渡される。何となくで引き合いに出した、さる王妃ことマリーアントワネットだけれど、麻衣華の方が近しいな、なんて思った。


 ややあって翠華と共に帰ってきた時、見えたのは悠然と微笑む緋簾葦と、言い争っている老人二人だった。

「私はもう帰る! くいなさんに車を出してもらってくれ!」

「落ち着いてください教授。何も急ぐ必要などありません。せめてあの話だけでも進めましょう」

「地域活性プロジェクトかね? それともあなた方の望む販路拡大計画かね? どちらにせよ、私が話す予定だったのは爛道さんだった。あなたは代理に過ぎないではないか」

 代理と言われたからか、九朗が怯んだ様子で口を噤む。緋簾葦は他人事と割り切っているのか、楽しそうに肩を竦めた。

「あなたたちが居なくなってからずっとこんな調子」

「止めないの?」

「人が困っているのを見るのって、時には愉快なものよ」

「うーん、悪魔かな」

 冗談はさておき、いつもの席に座る。九郎に麻衣華のことを尋ねられたので、戸鞠はただ首を横に振った。翠華が言うのに任せよう。

「ママは、体調が悪くて」

「そうか……まあ仕方あるまいな」

「仕方ない? 我々には単独行動を封じておいて、特別扱いするのかね?」

 芧鏡教授がまた食って掛かっている。まあ麻衣華を良く知らないのだから、特別扱いにも見えよう。それにしても今まで静かだった分、二人分の遺体で相当ストレスが蓄積しているみたいだ。たった数時間前まで、同じテーブルでお茶菓子を嗜んでいたとは到底思えない。笑って見ている場合ではなかったろうに、緋簾葦はまったく。ここは、麻衣華と接した自分が、何か言ってやろう。

「芧鏡教授、僕が見てきた限りでは、麻衣華さんは殺人なんてできる人じゃありませんし、随分参ってしまっているようです。無理に呼んでも場を混沌とさせるだけでしょう」

「だが――」

「それでも一人にすべきでないとおっしゃるなら、どうぞ麻衣華さんのところに行って来たらいいですよ。傷心のご婦人が一人、窓辺に腰掛けているだけです」

「む……」

 これで納得してくれるかと思ったのだが、芧鏡教授は怒り心頭と言った様子で立ち上がると、どうやら本当に麻衣華の部屋まで行くらしかった。あっと思って止める間もなく、彼はずんずんと行ってしまう。緋簾葦が「あらあら」と戸鞠を笑った。人心掌握が下手だと揶揄っているらしい。仕方が無いから戸鞠は肩をすくめてみせる。

「教授は思慮深い方ですし、すぐに戻ってくるでしょう……それよりも、くいなの不在が気になるのはわたくしだけかしら。遅い気がするわ」

 戸鞠が確かにと呟いた時、九朗が何かを知っている様子で緋簾葦に顔をやった。

「くいななら、村人との対応に出ている」

「対応? なんのことかしら」

「……昨日までの雨で、山道が少々、危ないそうだ」

 九郎が言いづらそうに述べたのに、緋簾葦がクスクスと笑った。その口で、「そういうことにしたのね」と小さく独り言ちた。

「伯父さま、諸々の報告、わたくしに任せてもらってよろしいかしら。お疲れでしょう?」

「疲れているのは君もじゃないのかね……したいなら構わないが」

「ありがとう存じます」

 緋簾葦が意外なほど恭しく頭を下げた。髪がするりと下に流れる。それを、九郎が瞬きもせず見ていた。

 ややあって帰ってきた教授は、麻衣華と何かあったのか行く時よりも数段テンションが落ちていた。怒りが静まった肩は力なく垂れ、まるで死を待つ野生動物のような有様である。緋簾葦が彼に声をかけると、彼は一瞬怯えた顔をしてから、椅子に腰を下ろした。緋簾葦がそれを待って、事情を説明する。

「なっ……まさか帰れないなんて、そんなことを言うつもりではありませんでしょうな」

 教授が頼むから嘘だと言ってくれ、という切なる表情をする。緋簾葦は安心させたいのかニッコリと微笑んだ。

「大丈夫ですよ、教授。誰も帰れないなんて申しませんわ」

「そう……だが、しかし……」

「帰る手筈でしたら、わたくしが整えて差し上げましょう。あと数時間……そうね、夕方頃には車を出せますかしら」

 教授が「夕方……」と心ここに在らずでつぶやく。今は一時頃だから、あと数時間の辛抱だ。

「さて、これにて議題は終演。お話はまとまったと存じます。他になにかご意見等ございますか?」

 誰も、うんともすんとも言わない。緋簾葦がややあって九郎に顔を向ける。

「伯父さまは?」

「無いよ」

「そうですか。では皆さま、解散といたします」


 皆がそれぞれに散ったのを確認し、戸鞠は緋簾葦に近づいた。何やら満足そうな緋簾葦に、戸鞠は呆れる。

「積極的だな」

「その方があなたも好きでしょう?」

「僕の好みを知ってくれてるなんてね」

 緋簾葦がおかしそうに笑う。その顔には、調子に乗るなと書いてあった。分かっていながら、戸鞠は緋簾葦の斜め前の席に座ると、作戦会議をするみたく頬杖を突く。

「さっき妙な話を聞いたんだ」

 戸鞠は密やかに囁く。緋簾葦は胡散臭そうな、それでいて少し興味ありげな表情で戸鞠を見た。その表情を見るだけで、戸鞠は大概満足なのだが、それはそれこれはこれ。

「麻衣華さんが何かおっしゃったの?」

「ああ。翠華には聞かせず、僕だけにひっそりね。聞きたい?」

 緋簾葦が真っ白な頬をむくっと膨らます。可愛い……じゃなくて、怒っているみたいだ。女王様は自分が揶揄うのは好きでも、揶揄われるのは嫌いなのである。戸鞠は引き続き声を潜めたまま、先ほどの会話を思い出し始めた。


 それはハンカチを落とした時のことだった。


 いや、ハンカチを落としたと麻衣華に声を掛けられた時のことだ。

「戸鞠さん」

 翠華の後に続いて部屋を出る直前、麻衣華が戸鞠を呼んだ。戸鞠は何だろうと振り向く。話は済んだはずだし、何より翠華が居なくなった瞬間に声を掛けてきたのが気になった。

「なんでしょうか?」

「ハンカチ」

 麻衣華がそう言って、戸鞠のハンカチを差し出してきた。白いレースの布地に、グレーの糸でバラの装飾が為されている。いつか、緋簾葦が持っていたものの色違いで、戸鞠のお気に入りだ。いつの間に落としたのだろうか。気づかなかった。

「ああ、すみません」

「いいのよ。わたくしが勝手に取ったものだから」

「取った?」

 麻衣華がいたずらっぽく、その華やかな顔を緩める。母親のような慈愛に満ちたそれに、戸鞠は一瞬、唖然としてしまった。

 しかし、取った……とは、すなわち、この懐からスリのように盗んだと言うことだろうか。戸鞠の中で、異なる驚きが波紋のようにじわじわと広がって行く。この人もやはり、血は異なれど堯家だ。

 それでも麻衣華は、母なるたおやかな微笑みでいる。緋簾葦とは決定的に違うものを感じながら、戸鞠は麻衣華を見つめていた。彼女が再度口を開くのに、多くの時間は要らなかった。

「戸鞠さん、あなたを信じて、一つ言いたいことがあるの」

「……言いたいこと、僕にですか」

「ええ……」

 麻衣華の瞳が一瞬、静かに波立つ。

「この状況、きっと爛道が作り出したものに違いないわ」

「作り、出した? どういうことですか」

 確かに爛道は、この屋敷の主である。鯉庭を作った人であり、皆を招いたのは彼なのだから、状況の元凶とは言えるかもしれない。だが彼は、誰かに毒を盛られたことによって病床に伏している。死に瀕した病人に、一体何ができると言うのだろう?

「わたくしは、あの人に脅されてここに来た……そしてそれは、燕治義兄さんも同じ。わたくしたちを脅しておいて、爛道が一切出てこないなんて、おかしいじゃない」

「確かにおかしいですけど、でも病気で……」

「本当に病なのかしら」

 麻衣華が真剣に言う。酔狂なんて一ミリも入る隙の無い鬼気迫る面持ちだ。

「わたくし、思うの。ずっとずっと、思っていたの……あの人は、本当は病なんかじゃないのだって」

「病気の振りをしているとでも言うんですか?」

「だって病気だと言えば、皆の前に出て来ずに、好きに動けるじゃない。例えば今みたいな、皆で監視し合うような状況でも……」

 麻衣華の視線がずるずると下へ下がっていく。虚ろに床を見ていた瞳は、まるで狩人を前にした小鹿のようだ。

「……次に殺されるのは、わたくしだわ」

「えっ……」

 思わず驚きの声を上げてしまった戸鞠に、麻衣華が顔を上げた。その時既に、彼女は微笑みを取り戻していた。いたずらっぽい口角が、にこやかに動く。

「なんてね。……冗談よ」

「……麻衣華さん」

「わたくしは、翠華ちゃんが無事ならそれでいいのよ。だから大丈夫」

 麻衣華は確かに、死を払拭したような安心した笑みを浮かべる。だが彼女は……。

「さあ、もう行って」

 その言葉で、戸鞠は扉のノブを離してしまった。一瞬の後、部屋と廊下に世界が分断される。麻衣華が窓の方へ戻っていく足音が、聞こえるような気がした。


「……へえ、麻衣華さんがそんなことを」

 場面を想像しているのか、緋簾葦が遠い目をする。自分が話した内容について、彼女が頭に思い浮かべてくれるのが、戸鞠は嬉しい。

「次に殺されるのは自分だってさ。緋簾葦はどう思う?」

「さあ……そうなんじゃない?」

 緋簾葦がなかなか投げやりに答える。かなりどうでも良さそうで、戸鞠は苦笑する。血が繋がっていないとはいえ、一応は義理の母親で、数年以上の時を過ごしただろうに。共に居た時間の長さで言えば、きっと戸鞠よりずっと長いのだ。長さより密度の方が大事だと言えば、確かにそうだが。

「緋簾葦は本当に、自分のことしか考えていないな」

「それが何よ」

「何でもないよ。それでこそ緋簾葦だ」

 そう言うところが好きなのだから、と内心で付け足して、戸鞠は独りよがりに笑ってみせる。緋簾葦は意味が分からなそうに、胡乱な目で戸鞠を見るが、突っ込む気は起きないようで、黙って見ているだけだった。

「でも、そんな緋簾葦だからこそ気になる。教授が帰れるよう手を回してやるなんて、緋簾葦らしくないんじゃないかな」

「彼はこの狂騒には、あまり関係無い。違う?」

「そうだけど、そうじゃない。僕が気にしているのは緋簾葦の行動で……」

「これ以上うるさくされても困るのよ。うるさいのは嫌い。そうでしょう?」

 そうでしょうと聞かれると、確かにとしか思えない。戸鞠の知る緋簾葦は、ベートーヴェンのピアノソナタを愛している。鍵盤をなぞる旋律は雨音だ。そして雨音は、どこか涙を思い出させる。

「それにね、少し考えたの」

 ややあって、緋簾葦が切り出した。梅雨時のような憂鬱な静けさだったので、戸鞠は反応が遅れてしまう。

「そろそろ家に帰る準備をしなくては。旅行というのは、時々にするから気分転換になるのよ」

「まあ、そうだな。毎日してたら、ただの流浪人だから」

「ええ」

「僕もそろそろ帰りたいと思っていたところだし、緋簾葦が頑張ってくれるなら、それに越したことは無いかな」

 重要だと思った情報はきちんと緋簾葦に伝えたと確信した戸鞠は、よいしょと立ち上がった。あまりだる絡みしても、緋簾葦の不愉快ゲージを溜めてしまうだけだ。ならば翠華に話をしにいこうかと、思い浮かぶ。あの子は少し元気がないみたいだった。元気づけに行くのも悪くない。

 緋簾葦に軽く手を振って、翠華と話してくると伝えた。緋簾葦は思うところがあるような消化不良な面持ちで「ふぅん」と相槌を打った。

 戸鞠は鼻歌まじりに翠華の部屋に向かった。


 それが、緋簾葦との別れの会話になるとも知らずに。


 太陽が見えない日はダイレクトに元気が出ない。冬季うつどころではなく、たかが太陽が見えないだけの浅い曇天が、心をこれでもかと鈍らせる。心は体の表象ならば、自分は植物にでもなりたかった。

 靴を履いて館内を歩くと、小学校の頃を思い出す。学校指定シューズの無かった母校は、皆が自由に好きな靴を履いていた。小学生だから、大抵が有名スポーツ用品店の大量生産品だ。他校のバレエシューズが嫌に輝いて見えたことを何故だか思い出す。制服文化が外国では羨ましがられるのと同じことだ。

 人は誰しも、何かに憧れる。それは単に、隣の芝生は青く見えるなんて風にも言う。

 今この瞬間も、戸鞠は遠くから聴こえる旋律に心を奪われていた。子どもの頃、ピアノを習っている人に無性に憧憬を抱いたものだった。ピアノが好きだったわけではない。ピアノを弾ける人間という概念が、まるで英雄のように眩しく見えたのである。親に直談判し、無惨に散ったのが懐かしい。

 二階の廊下を歩いた先、戸鞠は音に導かれて階段を下った。翠華を探して二階に上がり、しかし一階へまた下るのだから、骨折り損もいいところだ。けれどこのピアノの主は、きっと。

 今まで入ったことのない部屋の扉を開ける。一階の隅っこで、場所的には談話室の隣である。他の部屋と比べ窓ガラスの割合が多く、まるで青空教室のような小さな部屋。隅に幼稚園の先生が使うような黒のアップサイドピアノがあり、その前に翠華が座っている。さざ波のように優雅に指先や腕全体を動かす様子は、在りし日の憧憬をまざまざと思い出させるのに、充分すぎる華麗さを孕んでいた。

 邪魔をしては悪いと思い、戸鞠はできるだけ静かに扉を開け、中に入った、つもりだった。だが二歩進んだところで、翠華が演奏をやめ、戸鞠に振り向く。その頬は、恥ずかしさからか、あるいはアップテンポな演奏によってか、薄っすらと茜が差している。

「……先輩、どうしたんですか? こんなところに来るなんて」

 どこか自虐的な笑みだ。緋簾葦とは真逆のそれが、翠華の心の在りかを物語っている。戸鞠は反射的に笑みを返しつつ、翠華に近寄って行った。

「理由が無きゃこんなところに来ちゃいけないかな?」

「理由が無ければ姉の下を離れないのでは?」

 できるだけ気の利いたことを言ったつもりだったのに、いともたやすく確信を突かれてしまった。内心で少し焦るも、それを表には出さない。

 話を変えるべく、戸鞠はピアノを指し示して「うまいね」と伝える。ピアノの上手さなんて本当は欠片も分からないのだけれど、下手なようには聞こえなかった。どこかで聞いたことのあるメロディでもあったのだ。何か有名なクラシックだろう。緋簾葦が聴いていたような気もする。

「それほどでもないです。緋簾葦姉さんの方が上手いはずですし」

「緋簾葦が? 僕は聞いたこと無いけど」

 戸鞠の記憶の中で、緋簾葦はクラシックをかけはすれど、自らピアノに向かっている姿は見たことが無い。というか、二人で暮らしている家にピアノなんて無い。

「見たこと無いのですか? 私よりずっと上手かったんですよ。コンクールの優勝者候補として毎回名が上がるほどでしたから」

「えっ、そんなに?」

「はい……途中で辞めてしまったのですけどね。理由も言わず、家庭教師を無視するようになってしまって……そう言えばみんな、不思議がっていました」

 ふーん、と相槌を打ちつつ、何故彼女がピアノをやめたのか考える。こういうのでよくある話は、音楽大学に進学する費用が無いとか才能が無いとかだが、緋簾葦の場合はそのどちらにも当てはまらない。強いて言うなら……。

「飽きちゃった、のかな」

「ふふ。そうでしょうね」

 翠華が微笑み、頷く。

「どれだけ期待されても、あるいはどれだけの才能を持っていても、己の心が離れれば……それまで。緋簾葦姉さんは本当に自由な人です」

「自由と言えば聞こえはいいけど、自分勝手なだけだったりするけどね」

「それを私に言うのですか?」

 翠華は戸鞠への揶揄の中に、緋簾葦への確かな羨望を秘めている。緋簾葦姉さんの隣のあなたがそれを言うのか……そう言われている気がした。

「たとえ自分勝手でも、それでも緋簾葦姉さんを本気で嫌う人はいない……あの人はただ己に忠実であることを美徳としている。それを一緒に居れば誰しもが理解するからでしょうか」

 翠華が鍵盤の白をスーッと指でなぞる。

「それでもずっと一緒に居るのは、なかなか困難なことかと思いますが」

 翠華がスッと、戸鞠に顔を向けた。透明なのに何を思っているのか分からない無表情だ。

「困難か」

 柔軟剤の量を一ミリ単位で拘る緋簾葦に、怒られたことは何度もある。それを困難と言うならその通りだ。

「先輩は、どうして緋簾葦姉さんと一緒に居るのですか?」

 いえ、と翠華が視線を下げた。

「……どうして、居られるのですか?」


 戸鞠は結局、翠華の疑問には答えなかった。戸鞠が適切な答えを考えている間に、翠華が演奏を再開したからである。

「これ、なんて曲?」

「テンペストの第一楽章ですよ。最近、弾けるようになったので」

「テンペスト……」

 聞いたことのある曲だ。

「確かベートーヴェン、だったっけ?」

「よくご存じですね。クラシックを嗜まない方は運命と月光くらいしか知らないものと。それとも……」

「ああ、確か緋簾葦が部屋でかけていたようなきがするよ。でも第一楽章ではなかった」

「姉のことですから第三楽章でしょうね」

「すごく……急に降り始めた雨のようだった気がする。夜に部屋の中で聞いているような、屋根を叩く雨音」

「ならばそうでしょう。いずれにしても、緋簾葦姉さんならば全て完璧に弾きこなせるはずです。私はようやっと、正しい鍵盤を叩いているだけですが」

 叩いているだけとは言っても、素人の目で見ても、この曲が難解な部類に入るであろうことが予測できる。高速道路を走っている車の中から見る外の景色みたいだ。ピッチの早いリズム、広い音域、離れたところに跳ねる指。

「翠華はきっと、とても努力したんだね」

 思い浮かんだことを言っただけのつもりだった。しかし瞬間、翠華の指が止まる。

「翠華?」

「……久しぶりに」

 翠華がぽつりと言う。

「久しぶりに、緋簾葦姉さんの演奏を見たくなりました」

 そう言って、翠華が戸鞠を見上げる。なんだかねだるような甘さを感じる。

 翠華が絶賛しているのだ。戸鞠だって、緋簾葦の演奏は見てみたい。佇むだけで得も言われぬ存在感を放つ緋簾葦だ。彼女が重厚なピアノを弾きこなしていいるとすれば、それは優雅という言葉には収まりきらない壮絶な絵となるだろう。

「私が緋簾葦姉さんに頼むことはできません。でも先輩なら」

「僕が言っても無視される気がするけど」

「けれど可能性は感じます。違いますか?」

  心なしか翠華の押しが強い。それを肌で感じながら、戸鞠はややあって頷く。

「そうだね。じゃあ行ってみるか」


 翠華も着いてきたので、二人して緋簾葦のいたホールへ向かったが、彼女はいなかった。

「部屋に戻ったのかな」

 飽き性の緋簾葦だから、何もすることの無い場所に長く留まるのは苦痛には違いない。部屋で読書か芸術鑑賞でもしているのだろうか。

 翠華と天気の話でもしながら階段を上る。まだ二日目ではあるが、大正ロマンを感じるステンドグラスの紋様と陽の射した床が美しい。こんな山奥でもなければずっと住みたくさえある。まるで一昔前の華族みたいな生活を出来ることだろう。

 だが、そんな呑気な妄想は一分も経たずに消失する。

 部屋にさえ、緋簾葦が見えないからだ。

 主の居ない部屋は閑散として、中華風の真っ赤な絨毯は、揺れる彼岸花のようだ。まるで血みたいだと反射的に考えた自分に鳥肌が止まらない。

「緋簾葦は……緋簾葦は何処だ」

 隣の翠華が「分からないんですか?」と不思議そうに言う。緋簾葦の居場所を把握していない戸鞠を意外に思っているのだ。だが戸鞠だって、緋簾葦のプライバシーを完全に無視できるわけじゃない。どうせホールか部屋には居るだろうとたかを括っていただけだ。


 トイレも含めて、行ける場所全ての部屋を探し終えた。こんな状況で姿をくらますこと自体、非常識に違いないのに、緋簾葦がどこにも見えない。九朗に伝えると、彼は狼狽し、どうしたものかと頭を抱え始めた。

「はぁ……本当に、君も知らないのかね」

 緋簾葦の行方のことだ。九朗は、ピラミッド建設の奴隷が一日の労働を嘆くような瞳をしている。黙っていても瞳の端に涙が滲み、白目は肝臓が弱っているからか黄ばんでいるのだ。ここまで疲労困憊だともはや死んだほうが彼にとっては幸せなんじゃないかと脳裏に過った。燕治の元気な様子を思い返すと、長兄の九朗が最後まで生き残っていることに、奇妙な感心を覚える。

「僕がちょっと目を離した隙に……」

「君が知らないのであれば、知っている者はいないだろう」

 九朗が感情を交えない口調で言う。

 あと一歩で床が抜け、首に紐が食い込む。そんな気がした。

 あるいは、自分自身が世界から消え去り、世界も無くなるような。

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