シェイプデザイアオンライン

 開発メモ


 全NPCに人工知能を搭載すると発表したことで一躍話題になったシェイプデザイアオンライン。

 基本管理も全て人工知能がやるので人間が管理するのはサーバーぐらいだ。

 この世界は様々な人の願いを叶えるために作られた世界。

 一番最初に願いを聞きそれに合わせた武器を作る(今後この武器はデザイアウェポンと呼称する)。

 デザイアウェポンは各プレイヤーに1つ専用の武器として与える。

 この武器には人工知能を搭載することで持ち主の願いに合わせて進化するように設定をしておくとする。

 魔法を始めとしたゲームの中でしか叶えられないことを実装するのも当然だ。

 家づくりや町づくりなどは現実に近いものにするが資材の調達などはある程度の緩和が必要だろう。

 文明レベルはあまり高くしすぎると現実と変わらなくなってしまうからな……ここは中世程度にしておこうか。

 念のため目標として魔王や王様、勇者と言った役職も用意しておくか。

 それにしても上は一体何を考えているんだか……。

 たしかに仮想現実は大規模なシュミレーションをするのに向いてはいるがそれをゲームとしてAIに運営を任せるとは……。

 危険こそ少ないかもしれないがゼロとは言い難い。

 念のため抜け道は用意しといたほうがいいかもな……。

 全くやることが多すぎる!

 納期に間に合うかどうか……なんとかなるのか……これ……。




「さていよいよサービス開始だな……」


「そうですね! ここまでほんと長かったですよ!」


 今日はシェイプデザイアオンライン通称SDO発売日。

 開発陣営は初日にトラブルが発生した時に対応できるように待機していた。


「それにしても全NPCに人工知能を搭載するとか言われた日には耳を疑いましたよ……そんな必要あるのか疑問に思いましたし納期までの期間も短かったので正直なところかなり辛かったんですから」


 開発陣営の1人が愚痴を漏らす。

 正直な話今回の無茶振りに関しては追加料金が発生してもおかしくないほどの作業量だ。


「それについてはすまないと思っている。 しかし上からの命令では聞くしかないだろ?」


「まぁ国がらみの案件ですしね〜こればっかりは仕方ないというかなんというか」


 開発責任者と副リーダーがそんなことを言うが顔に疲れと上に対する不満が滲み出ていた。


「まぁ俺らは大丈夫っすよ〜完成すればあとはほとんど仕事ないんですしおまけに給料もいい案件でしたから俺ら側もかなり得してるし」


「確かにそうだな……」


 今回の案件は国からの直接的な案件だったのでかなりの給料が支払われた。

 さらに開発が終われば後の仕事はAIが行い給料だけが定期的に振り込まれることになっていた。

 この時点でかなり怪しい案件なのだが国からの要請なら受けざるをえない。


「それにしても国も太っ腹ですよね! こんなにたくさんのAIを貰いましたしそれ全部ゲームに使っていいとか言うなんて考えられませんね〜」


「……まぁ国からしたらこれは実験の一貫なんだろ?」


 今回のゲーム開発は国から多数の人工知能を貰いそれをゲームに組み込むことが一番重要な仕事だとリーダーは聞いていた。

 なんでもある実験のためにやる必要があるとか。

 詳しい事情については国家機密扱いらしく聞くことができていない。

 何か知っているとすれば社長だが社長は一部のAIを直接調整していて忙しいのかなかなか会うことができない状態だ。


「実験……プレイヤーを対象に行う実験とか言ってたけど危険はないのか?」


「一応確認とりましたけど危険はないらしいですよ?」


(おそらくそれは国の嘘だ……これだけ大量の人工知能を入れおまけに人々の願いと言う名の欲望と触れ合うことになったらどんな結果が訪れるかなんてわかりきっている……しばらくは様子見しかないな……)


 シェイプデザイアオンライン。

 何を目的として開発されたか今はまだわからないがひとつだけわかることがある。

 そこはただ願いを叶える場所ではないと言うことだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る