とある男の処刑執行後の話

『探査ロケット【シーカー】探査員再起動シーケンス全て完了、おはようございます創造者マスターお目覚めは如何ですか?』




 意識が覚醒するかしないかのまどろみの中、そんな声が聞こえてきて俺はようやく覚醒した、身体も特に眠らされる前と変わりなく動くようだな…




「ああ…まあまあだな、管理AIコルタナ現在の状況を報告してくれ。」



『了解しました、、本星宇宙探査局に気付かれた形跡はありません。』



「そうか………つまり確実に本星からは隔離された状態になった…そう考えていいんだな?」



『はい、その通りです創造者マスターもはや貴方に干渉する存在はありません。』



「そうか……………やっと……………叶ったのか………」







































「だぁ~はっはっはっはっはっはっ!やぁ〜っとあのクッッッソ忌々しい連中から逃げだせたぜぇ!!!!転生してから百数十年!ようやっとオサラバ出来たんだぁ!!!!バンザァァァイ!!」



『本当に嬉しそうですね創造者マスター。』



「違うぞコルタナ!嬉しそうじゃなくて嬉しいんだ!」




 そう!何を隠そう俺には前世の記憶がある!この身体になってからすぐに地球の日本で暮らしていた記憶を思い出した。

 ………それが地獄の始まりとも知らずに呑気に喜んでいたんだよなぁ………




「うぅ…宇宙人になってしかも技術もすごくて勝ち組じゃね?とか考えが甘かった……何なんだよ!この身体はよぉ!!クソがぁ!!」




 創造してみてほしい、冷蔵庫の上に電子レンジを載せてその上にトースターを載せた3段重ねの状態、それに手足を生やせば現在の俺が出来上がるっていう寸法さ……ふざけんなよ!前世の俺にあった自慢の主砲は何処に行ったんだ!!この悶々した気持ちは何処で発散すりゃいいんだ!この星の奴ら機械の身体だから飯も食わない、酒も飲まない、女もいないときたもんだ!


 …………いや…女性体はいるんだよ……ただ、機械だから風俗に行く必要無いからそういう店は無いし…その女性体ってのも手足の生えたクローゼットの上に椅子を適当に積み上げたみたいな状態だし、その椅子の足が出ているトゲトゲが顔の代わりだそうでトゲトゲが多いほど美しいらしい………そんなんもう無理やでエトウ……しかも人類で言う美女がベッドの中に全裸で入ってカモンベイビー状態をこっちではクローゼットを開いて中の電球みたいなのをピカピカ光らせるんだぜ…………分かるかっちゅうねん!


 幼馴染みたいな機体からこれやられてポカ~ンとしてたらもう1人の幼馴染の機体からどつかれて初めて知ったが、知らん方がよかった……ちなみに、その幼馴染は昭和の家電が重なった感じで、俺は平成中期の家電が重なった見た目をしている、男性体はスマートな見た目がイケメンらしいので俺は女性体にはモテモテだった……

 いらねぇわ!んなもんこっちから願い下げや!




『溜まった鬱憤もあらかた吐き出したので、もうよろしいですか創造者マスター?』



「えっ?声に出てた?」



『はい、バッチリ出てましたよ。』



「…まあいっか、ここには俺とお前さんしかいないしな。」




 さっきから俺と喋っているのは自立量子コンピュータ搭載AI【コルタナ】、この冷蔵庫生が始まって少しして身近な科学技術だけで作り上げた地球だと某空網君とかのSF映画に出てくるAIを全部合わせたくらいには性能がいい、簡単に言うと秘密道具抜きのポンコツじゃない某青狸と言ったところか。




『で?わざわざ私をここまで連れてきた理由をそろそろ教えて頂けますか?まさか最後機能停止後の処理の為と言ったら今すぐロケットコレごと爆破してご一緒させて頂きますが?』



「怖ぇー事を言うんじゃない!そんな馬鹿なことをやる為に昭和君に頼んでまでお前さんを連れてきたりせんわい!」



『ああ…あのご友人ですか……しかしインストール時や誤魔化す為の偽造データはなんとかならなかったのですか?もはや彼の中では創造者マスターはAVマイスターですよ?』



「ふんっ!二度と会うこともない奴の評価なんぞ知った事か!それに、馬鹿な内容なら消される確率は低くなるだろう?結局計画通り上手くいったという事実の方が重要なのだ!………で?進路は指示通りの方向に向かっているのか?」



『そちらは抜かりなく打ち上げまでに全システムを掌握して大気圏脱出後にすぐさま進路変更は完了しております……それも私を連れてきた理由ですか?』



「おう!その通りさ!まあ後は向かうだけだから計画のおさらいを兼ねて説明するとしよう。」




 俺はこの人生…いや冷蔵庫生が始まった時に思い至ったのが地球への帰還だった。だがそんな簡単にはいかなかった、そもそも宇宙関係の情報は管理局が一元管理をしていて部外者では簡単な情報しか手に入らなかった。

 そこで、わざわざ管理局へ入局し窓際部署の情報整理班へ配属されるようにして、見事に希望通り配置されたのはいいものの、あのパワハラ上司に憂さ晴らしを兼ねていじめられる日々が来るなんてことは思わぬ障害物だったが、苦節十数年あのアホ上司のガバガバセキュリティのおかげで上級ライセンスが必要な情報も見ることができたのだ。

 



「その点は情報端末をつけっぱなしにして早上がりしまくっていた上司バカに唯一感謝するところだな。」



『そうでしたか、しかし創造者マスターの入手した情報…百数十年前の探査電波発射記録ですか?こちらだけで地球とやらの位置を特定するのは不可能では?』



「ふっふっふ…そう、ふつう誰だってそう思うさ…俺も初めはそう思ってたさ、しかし!ある記録を見て考えが変わったのさ!」




 その記録は百数十年前に行われてた計画のものであり、簡単に言えば宇宙へ探査電波を照射し、跳ね返ってきた電波の状態から生存可能惑星を探すというものだった。

 もちろんその計画は失敗し、計画立案者を含めた関係者全員が失脚するという結果だけを残し、計画は破棄されることとなった。




「だがなコルタナ、その記録の中で一本だけ予定とは違った方向へ飛んで行ったって事例があってな、詳しく調べてみると重力の強い恒星の影響で飛んでった方向が変わったらしいんだよ。」



『まあ宇宙は広いですしね、そういう現象も起こりえるでしょう…それがいったい創造者マスターの向かう地球とどのような関係があるのですか?』



「……あったんだよ!地球でも謎の電波が送られてきた事例がな!【ワォ信号】って言われていてな、その受信時間は実に72秒間、かなりの強度の電波だったそうだ。」



『……まさか、その事例だけでその宙域へ向かうと?』



「その曲がってどっか行っちまった時の電波はな、気づいて途中で照射を止めたんだそうだ。そしてその時間はこっちの時間と地球の時間単位が違っていたけど、何とか計算してみたんだ!そしたらきっかり72秒だと俺の計算では出せたんだ!」



『ふ~む、信憑性は増しましたがそれでもかなり低い確率ですよ?』



「それでもかける価値はある!……何より!もう俺の精神は限界だ!うまい飯もない!何が面白いかわからんヘンテコな映画にマンガ!極めつけはクローゼット相手に電球ピカピカの子作りだぁ?!いい加減に我慢の限界だっつうの!おまけに自立AIの作成まで禁止されてるとかさぁ!コルタナがいなかったらとっくの昔に自殺しとったわ!」




 そう!うまい飯に酒!高度な娯楽!そして何より美女達とのアバンチュールでトゥギャザーをして心に栄養を補給しなくてはならないのだ!




『まあろくでもないことを考えているのは丸分かりですが、その体ではそういった欲求を解消することは不可能では?』



「ふっふっふ、何のためにお前さんにネットワークからあらゆる技術情報をインストールさせたと思っているんだね?地球人類に似せた人工生体の作成から死体へのインプラントで意識をコピーさせる等々といったあらゆる手段を使うためじゃないか!複数の手段を持っておくことで高度な柔軟性を保持しつつ臨機応変に対応するという事が可能なのだよ!」



創造者マスターの情報からのみですが、目的地である地球の技術は我々よりもかなり劣っていることが予想されます。無事につくことができればですが、潜り込むことは容易であると判断できます。』



「その通り!だからこそ人一人が増えたとしても問題はないのさ!さて!地球につくまでに理想的なイケメンの絵図面を作成せねば!待っててくれよぉ!まだ見ぬ美女美少女たちよ!グェ~ヘッヘッヘッヘ!」



『はぁ~……まったくこの創造者マスターは……まあ到着予定まで十数年もありますからのんびりしててもらいましょう……』




 その後、無事地球に到着した俺は生成した地球人類(もちろん男性体だ)に意識を移し超越した技術を使って世界中の美女美少女を守るために戦争・紛争・疫病等々の猛威を吹っ飛ばしてしまい、結局多忙の日々を送ることとなってしまったが、それはまた別の機会に語ることにしよう……




「チクショーーーー!!!忙しすぎて時間が取れへんとか本末転倒じゃねぇかぁーーーー!」



『はいはい、創造者マスターの時間はまだまだあるんですから、ゆっくり落ち着けるまでしっかり働いてください。』





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とある男の処刑までの記録 R・S @hy0106

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