第3話

「ダクトのどこかに出口があるかもしれない。知らないか?」

「知らないかな。つい最近見つけたばかりだもん。」

「すごーく残念だ。」

そんなふざけているようでふざけていない会話をして、出口を探す。

「あ、そうだ。裏口があるんだよね。」

!?!?

「そうゆうことは早く言ってくれ!」

ダクトで作戦会議をしていた俺達は、裏口を目指すことにした。

「どこにあるか知ってるか?俺が探索したときには見つけれなかったんだが…。」

「うん。知ってはいるよ。でも、クマが細工してるからね。カギもいるし、ほかにもなにか要るのかも。」

大分大変そうだ…。


「ここだよ。」

梨愛に連れられ、裏口まで来た。

いかにもな普通の玄関だ。

だが、大量の木の板が打ち付けられており、そう簡単には出れなさそうだ。

それに、南京錠がついている。

「祈、俺の身体なら木の板を引き剥がせたりするか?」

「廉くんそんなに力強くないでしょ。知ってるよ。」

「うっ…」

確かに俺は力が弱い。

女子よりはさすがに強いがな!?

……やめよう

あのクマをどうにかするしかないのだ。

「廉くん、身体の調子は?」

…へ?身体の調子?

「あ、ごめんね、言ってなかったね。私持病持ってるの。吐き気と頭痛、腹痛、体のだるさが酷いんだよね。」

「あぁ。だからなんかキツイのか。」

「その様子だと駄目そうだね。近いうちに倒れるよ。」

「まじかよ。やべぇじゃん」

「どうしよう」

そこまで言うと、梨愛は少しなにかを考え、

「薬を探すよ。」

とだけ言った




「薬?そんなのがあるのか?」

「あるよ。じゃないと今病院にいるよ。」

「確かに…」

そんな訳で薬を探すことになった。

「薬ってどこにあるんだ?」

「リビング。クマが一番巡回に来て一番長くいるところ。」

「巡回…?まるでパトロールする警察だな。」

「警察?あんなのが?笑わせないでよ。あんな武器もってキモい声だすヤバいのよ?まぁ、パトロールって表現は間違ってはないわね。」

……どうやらクマは巡回ならぬパトロールしているらしい。





クマがリビングから出ていったのを見計らい、俺達はそ〜っとリビングに侵入する。

「そこ、そこの棚の上から4段目のとこの白い箱」

梨愛の言う通りの箱を手に取る。

「2階行くよっ…」

梨愛に着いて行く。



二階の梨愛の部屋で、梨愛は手早く薬を準備して、俺に飲ませてくれた。

ふっ…と身体が軽くなる。

「なあ…祈。」

「どうしたの廉くん?」

「これ、なんだ?」

俺は血塗れのカッターを指さした。

「あぁ、これ?………私も詳しくは知らないけど、二重人格らしいの。私。」

「じゃあ…、もう一つの人格がやったのか?」

「それもあるけど、クマにもやられたよ。」

「だから変形してるのか。」

すると梨愛はカッターを手に取り手にぐっとあてた。

「お、おいっ…!俺の身体…!!!」

「大丈夫だよ」

梨愛はそう言い、カッターを滑らせる。

シュッと音がして、俺は目を背けた。

「見てもいいよ?こわくないし。」

「ぉ、?」

そして俺が見たのは、傷一つない俺の身体。

よく見るとカッターは刃を変えていないのかぼろぼろだった。

「このなまくらだったら傷つかないし。」

「じゃあ、この傷たちは…?」

「………もう一人の私とクマが本気で押し当てたらさすがになまくらでも切れるよ。すーっとはいかないけどね。」

俺は梨愛の身体を見た。

塞がっている傷や、無理やり刃を押し当てられ、ぐちゃぐちゃになってしまった傷。痣だってあった。

そういえば二重人格だっけな。

「そろそろ行くよ。」

梨愛はそう言って進んでいった。



俺は梨愛とダクトの交差点、少し広い空間にいた。

「裏口の南京錠があいつの持ってる鍵だとして、玄関はどうなるんだ?」

「さぁ、わかんないや。」

「投げやりやめてくれ」

「あの重りは時間経過で消えるよ。じゃないと学校行けないもんね。」

時間経過となると、時間になるまでクマから逃げないといけないのか。

「何時に消えるんだ?」

「6時」

あと5時間、寝ずに逃げると…?

無理だろ!!!


「廉くん。ねぇ、今思いついたんだけど。」

「何だ?」

ダクトをまた2人で進んでいるとき、梨愛が話しかけてきた。

「お父さんの書斎いかない?何かあるかも。」


てことで書斎の前に来た。

「鍵しまってる……」

「ウソだろ…」

わざわざダクトから出てきたのに!!!

「ごめん。鍵まで考えてなかった……」

梨愛が申し訳無さそうにそう言った。

「いや、大丈夫だ。とりあえず安全な場所に」

[きゃーきゃきゃきゃ!!!]

「「!!!」」

野生のクマが現れた!!

「そんなこと言ってる場合じゃないよ!?」

「あれ、声に出てた?」

クマはせいぜい速歩きくらいの速さだ。

走れば逃げれる!!

[ミツケタァ…リアァ…ドウシテマダオキテルンダァァァ!!]

「なにを言ってるんだあいつは!?」

「知らないよ!?」

2階に上がる。

梨愛の部屋に!!そこのダクトに!!

ごちんっっ

意識が暗転した。



起きたら知らない部屋にいた。

黒や焦げ茶で合わされた暗い部屋。

いや、実際は暗くないんだが、部屋の色が暗すぎて、暗いと錯覚してしまう。

本棚、パソコンの乗っている机、高そうなイス。

イスの脚についてる小さなタイヤがからから…と音をたて、イスが俺の方をむいた。

「おはよ、廉くん。」

俺だった。


________

『きみいのあとがき』


『君に祈りは届かない。』略して『きみいの』を読んでいただき本当にありがとうございます。

今回は秘密のお父さんの書斎にたどり着きましたね。

野生のクマに見つかってチェイスが始まるのかと思ったら始まりませんでしたね。

まぁ、梨愛ちゃんと廉くんの仲がとても仲良くなっているようなので私は結構満足ですね。


次回更新日は未定です。

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