第4話 秘密

季節は冬。粉雪が舞うとある夜、女は小さな明かりのもとで縫い物をしていた。巳之吉は、あの夜見た白装束の女の話をはじめた。お雪が問う。


「どんな女性の方だったのですか?」


「そうだなぁ…白い装束をまとった、お雪さんみたいな人でしたよ。凍えるような吐息でした」


ふと、お雪は手を止める。そして、突如として激昂するように、


「お雪です! あの時の女性はこの私、お雪なのです! これでもう私は雪女として生きてゆけず、息子も助からないでしょう。ああ、なんということをしてくれたのですか」


剣幕に巳之吉はたじろぐほかなかった。


「あそこで眠っている子供たちのことがなければ、あなたをすぐこの場で殺していたようなものを……! 子供を困らせるようなことがあれば、その時はいつでもお前に処分を下せますからね。雪は操ることは能わずとも、あなたを殺める方法は妖魔である私にはいくらでもあります。どうか子供たちを…」


言いながら、お雪の姿が薄く遠くなってゆく! 煙出から吸い込まれるようにして、お雪はまったく消え去ってしまった。それ以降、お雪を見かけた者はひとりとしていなかった。



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新訳 雪女 博雅 @Hiromasa83

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