第4話

「こんくらべだな」

科過がドッカリと椅子に腰を

降ろした。

「えへへ、いやだな」

左門が急に照れた顔をしだした。

「どうした、恥ずかしいのか」

「だって、刑事さんの腐りきった顔面を

ずっと、見続けなければならないかと思うと、

情けなくて」

「動機は」

科過が天井の蛍光灯に目をやった。

「いいじゃないっすか。動機なんてどうでも」

「そうはいかん。重要なんだ」

「刑事さんが悪いんっすよ」

「どうして」

「オレの女房に手を出してオレを怒らせたりするから」

左門が顎を擦った。

「怒ったから宝石商を殺したのか」

「だから俺じゃないってば」

「動機は」

「しつこいなあ」

「動機は」

「犬神様のお告げがあったんですよ」

「宝石商を殺せってか」

「だから、おれじゃないってば」

左門が身を乗り出した。

「まあいい、食事にでもするか」

「よっ、待ってましたって、なんだいこれは」

「ドッグフードだ、犬ころにはちょうど

いいだろう」

「いつてくれるじゃねえか」

左門が犬歯を剥き出しにした。

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動機不明(エピソード1) @k0905f0905

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