第5話 これからも

 ――そうして、部屋に誘われたリッティアは、久々に再会した幼馴染と積もる話をする前に、二人でベッドの上にいくことになった。

 事情はすでに聞いているから、深くは聞くつもりはない。ただ、


「……その、どうして私なのかな?」


 やっぱり、この理由だけは聞いておきたかった。


「わたし、リッティアのこと忘れたことないよ」

「……え?」

「いつか、あなたのこと迎えに行こうと思ってた。仕事が忙しくて、タイミングが合わなくて……。だけど、あなたのこと、ずっと好きだったから」

「……!」


 好きだった――そんな風に言われてしまっては、リッティアとしてもこれ以上問うことはない。

 口づけを交わして、フェインはすでに準備万端といった様子だ。

 けれど、リッティアにはそういう経験はない。


「リッティア……?」


 だが、何故だろう――経験はないけれど、幼馴染が恥ずかしそうにしながらも、求めている姿を見てしまっては、頑張るほかないという気持ちになる。

 リッティアも決意を固めて、自身の身に纏う衣服を脱ぐ。

 下着はまだ、恥ずかしいから身に着けたままで。

 手探りながらも、リッティアはフェインの身体に触れた。

 ぴくりと、耳と尻尾が反応する。

 その反応は――以前に耳や尻尾に触れていた時に近くて、気持ちいいと彼女が感じている時の動きには見覚えがある。

 だから、リッティアは必死で彼女の相手をした――けれど、やはりあまりうまくできなくて、結局はフェインの望むように、少しだけ長い口づけをかわして。


「……ありがとう。おかげでかなり調子出てきた」

「そ、それはよかったよ」


 リッティアの方がぐったりしているが、フェインは言葉通り――本当に元気な様子を見せていた。

 ――一先ず、呼ばれた目的については達成できたようで、フェインは騎士団長であるオーリエに報告しに行くと着替え始める。

 まさか、幼馴染同士でいかがわしいことをした、という報告をしに行くという――ある意味で羞恥の極めたようなことをされることに、リッティアは恥ずかしさを隠せないが。

 そんなリッティアに対して、フェインは以前と変わらず、涼し気な表情を浮かべて言う。


「久々に会えたことだし、まだまだ話したいことあるから。夜は――続きをしながら話そっか」

「……!? え、これで終わりじゃないの!?」


 フェインの言葉に、リッティアは思わず驚いて身体を起こす。

 そんな様子を見て、クールな彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

 冗談のようで、けれど――本気らしい。

 たった一回で解決する問題ではないということだろう。

 彼女の発情期の根本的な解決は、早い話がフェインの好きな相手でいるリッティアが傍にいることなのだから。


(……まあ、私も、好きだけどさ)


 心の中で――そんな風に呟きながら、部屋を出て行く彼女を見送る。

 ――王国の英雄となった幼馴染のために、これからもリッティアは尽力しなければならないことが、確定した瞬間だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「えっちなことをしてほしい」と英雄になった獣人幼馴染に呼び出されました 笹塔五郎 @sasacibe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ