画板をたたく/草原のなかに
―
夜明けの
長身の
「
ここに来るまでも、わたしのお姉ちゃんと付き合ってくれてありがとう」
「いえいえ、あなたのお姉さん……
「うん、帰りの道案内はわたしに任せて……」
そして自分の顔を上げきったあと、急にかくんとあごを落とした。
うつらうつら、頭部を前後に動かす。
彼女は画板をかかえて地面に座っている。
いままでの文章に添えてきた奇妙な絵は全て彼女の作品だが。
これから載せていく絵もまた、ひとつ残らず
そんな
紙を載せるための画板を持ち歩いているのだが。
現在、絵はかいていない。
そもそも
きのうの昼間、
夕刻が過ぎてから起きた。
屋敷の部屋を貸してくれた
昨晩のあいだに
だから朝になったいまごろになって眠気が襲ってきたのだろう。
さきほどから目もあまりあかず。
頭部を揺らしている。
しかし
ここでは紙が。
ふやけてしまうからだ。
確かにその最奥に関しては、べっとりした空気感はないものの。
水滴を吹きかけられている感覚は、やはり存在する。
それも当然。
最奥の地の中央において噴き上げる水の柱が。
この場所が「水」と無縁でいられないことを物語っている。
よって
自身の視線で、この場にいる
このあと
だから眠らないように。
あごを上げる。
首を動かす。
水の柱と。
噴水によって出来た鏡を見つめる
目の前でしゃがんで小さな自分と目の高さを合わせようとしている
敷き詰められた小石の上に寝転がる
もう片方の手を使い、自分の髪をこする。
髪をこする行為は本来、
画板をたたいている指のほうは、じきに。
その表面をすべり。
さながら絵をえがくように、不規則な軌道を見せ始める。
筆も顔料も取り出していないので、なんの絵にもなりはしないが。
―
そして。
寝転がっていた
そこでのやりとりは、ほとんど
ともあれいよいよ
この最奥を……
そこを管轄する
水の柱に映った
噴き上げる水の柱のなかにいる
自分の人差し指と中指で
三女に比べて、次女の
実際のところ、それは「冷たさ」とは違う。
……「思う者」たる
重大な思いのもと、おこなわれている。
だから
むしろ安心を覚えていた。
「じゃ、ありがとう。
これから、わたしたち
おまえらを苦しめるような真似は、絶対にしない」
こうして
道案内の
その正確さは。
きのう
妹の
植物のあいだをかき分ける。
べっとりした空気と。
肥大した植物を抜けるたび。
いまは最奥から遠ざかる道を選んでいるので、きのうとは逆に。
進むごとに、湿り気も植物もその勢いを縮小させ……。
だんだんと歩きやすくなっているのだ。
とはいえ水滴を吹きかけられる感覚は、この地にいる限り持続する。
湿り気も植物も
したがって、泉に沈んで瞑想するのが趣味である
その瞑想が疑似体験できる場所として
よって
三人の道のりは、この上なく順調であった。
そのなかで
「
向かうのは
「ああ」
彼女たちは現在、
とくに「思われる者」たる
そもそも
自分の仕事の終わりを予告したからである。
巨大な
そんな彼女の仕事が終わるなら仲間の
ひいては
全滅すると。
だからそのことを、現在のところ所在不明の。
その上で対策を練るしかない。
また
さらに追加で手紙を渡す必要性が生じたため。
できれば
「
対して
……ちなみに
その所有者は、長女の
三女の
―
……最初から迷わず進めたからだろう。
三人は
まだ日は傾いていない。
湿り気が失せる。
方向感覚が戻る。
ここからは
上下左右前後に繁茂していたはずの。
代わりに。
草の丈は、そんなに高くない。
いわゆる木は、どこにも見られず。
そこらの草に。
花がちらほら咲いている。
さらに深く、息をはいた。
「
それじゃあ
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