飛び続けるよ落ちるまで
―
……何度でも夜は明ける。
繰り返される現象として。
きょうも例外ではない。
暗闇のなか絵をかいていた
その姉の
日差しは、ある部屋を照らし出す。
そこを借りて眠っていた者たちのまぶたを。
優しく撫でるように。
きのう
きょうは、そんな体勢をとらない。
「歩いてきた疲れも完全に抜けたし、ここの風呂も頂いたし、気持ちも落ち着いた」
手足を伸ばし、体を震わせる。
一方。
「これで
大丈夫です。
体力が壊滅的な筆頭でも、あちこち歩けば慣れますよ」
「
「わたしも筆頭の全てが好きです」
しかし
「まあ筆頭以外のみんなのことも好きなんですが。
あ、余計でしたか」
「全然余計じゃない」
「じゃあ気持ちよく起きたところで……」
「やる気ですね」
「……二度寝する」
「そっちのやる気でしたか」
苦笑する
日差しを顔に受けながら、すぐ眠りに落ちる
彼女は小一時間ぐっすり睡眠をとったあと。
玄関口には、その屋敷に住んでいる者のひとり、
「見送りです。
ちなみに、ねーちゃんは道場で門下生のみんなに稽古をつけています。
一日休んだぶん、これは絶対に外せないって」
「マジか」
……という
「うっかりでした。
二度寝が効きましたね。
朝早くの稽古前だったら
「それはわたしのうっかりだ。
しかし改めて礼を伝えそびれたな。
わたしたち
「あと風呂貸してくれたことも。
それと文句ひとつなく、わたしたちを迎えてくれたことも追加で。
ぜーちゃんも
それなのに態度を崩さず、しっかりしていた。
強いよ」
そして
「
「ねーちゃんには、ちゃんと言っとくよ」
自分の姉が感謝されているのが嬉しいらしく、
それを見て、
「
わたしからも、ありがと。
こっちは伝言じゃないからな」
「
「おまえは自己評価が低いようだが。
実際すごいやつだとわたしは思っているし。
みんなも、そう感じているから。
きのうも、うまいメシ作ってくれて」
柔らかく笑う
「そうだった、きょうのぶんのごはん、まだですよね。
作ります。
食べましょう」
そう
―
かくして
それを残さず平らげて。
改めて
再び礼を述べて去ろうとするふたりの
屋敷の玄関から遠ざかっていく
「
「向こうに着いたら今回の件、伝えておきます。
ねーさんの所在についても
ちなみに
……それから。
再度、声を張り上げる。
「それと、ねーちゃんはここに残って、ねーさんが帰ってくるまで待ち続けるみたいです」
さらに彼女は。
やはり大声で。
しかし背の高い
遠くからでも彼女たちを見失う心配はなかった。
「ほんとはわたし、
怖くて!
でも、びびってばっかじゃよくないって。
のんきそうで、頼りがいがあって、大きくあり続けるおまえだったから。
だからわたし、飛び続けるよ。
落ちるまで!」
すると、豆粒ほどになった彼女たちの手が大きく振られた。
そして。
彼女たちが完全にみえなくなってから。
―
「で、筆頭」
屋敷から離れても、しばらく
彼女たちは歩く。
だが無目的ではない。
そのなかで
「
「うーん」
「
で、『どこにもいなくて』とも漏らしていた。
だから
「あの、それが分かっていたなら、なぜ最初に
「いや
今回の件をまず話し合うなら、ぜーちゃんが一番いいとも思った。
いまのところ
「
実の姉妹なんですから」
「だからこそ、たぶん言ってないと思う。
あいつらのいる
ともかく。
ぜーちゃんとは話したいこと話せた。
でも、その際。
だから次は
まだそとに出ていないなら
まずは
もちろん
「はあ、了解です」
―
その先に
そのままそこを通過すれば、
「筆頭、上り坂が続いていますが、平気ですか。
おんぶしましょうか」
「ありがたいな。
でも今度ばかりは自分の足で歩かないといけないように思う」
しかし。
「わたしは変なところで注意力が足りないようです」
「そんなの誰だってそうだよ。
みんなどこかが抜けている。
かく言うわたしも例外なく」
「……わたしは今回の
でも、あの人は去り際に覚悟を示しました。
本当は、それほどのことだったわけです。
わたしは軽はずみに『めでたい』なんて言ってしまいました。
いまごろ急に気付きました。
次に会ったら謝りたいです」
「そうか。
でも、『めでたい』という認識も間違いじゃない。
おまえは、全てを思える
わたしたち
そんな会話を交わしつつ。
ふたりはそろそろ、
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