たとえば世界に対するふたり
―
「……姉はきょうも戻ってきませんでした」
よって、まずはそれについての報告を済ませる
一方の
「うん、そうだろうな。
あと、ぜーちゃん、わざわざ道場をあけてくれて、ありがとう」
「今朝、門下生たちには帰ってもらいました。
きょうは休みという看板も出しています」
自分の道場を毎日休みなくひらいている
ただし
まぎれもなく
だから彼女は、いやいや休んでいるのでもない。
とはいえ。
本題は別にある。
自分が腰を下ろしている座布団を整え、
「それで
「おまえどう思う?」
自分は「思われる者」の
よってこんな言葉が口をついて出る。
「
―
「うちの妹、ずっと怖がっています」
きのうの未明、
その際、
しかし
そして。
声の調子が変だったのは、彼女が心に不安を隠していたから。
もちろん
「
しかしいずれ知ることになるのであれば、できる限り早い段階で知らせるべきです。
また、妹ならこれを乗り越えることができるとわたしは信じていますので」
そして付け加える。
「
あの人は
その巨大が失われるとなれば、
妹のわたしたちも同様。
いまの仕事を喪失します」
ここで
「まあ『自分』と『仕事』とを切り離している
彼女も
「少なくとも、わたしの門下生はいなくなるでしょう。
……なお、
その受取人の
だが
―
「みんな不安だよな。
わたしだって、そうだ。
でも手はある。
そのひとつを言おう。
そして
「
「
言葉をさえぎる
彼女はこれまで柔らかく
そんな彼女がここで発言に割り込むような真似をしたのはなぜか。
当然ながら理由がある。
これは真実だ。
しかし逆に言えば
ただし、
だが少なくとも
いつも道場で、
もちろん仲間の
しかし自分たちのために人々を苦しませることは、いかなる理由があっても許されない。
そう、
そしてもうひとつ。
彼女は
平和から遠ざける工作を世界に仕掛けることさえ彼女には可能なのだ。
それが脅威であった。
また、
ともあれ。
彼女の口調に、冷気が加わる。
突発的というわけでもなく。
慎重に彼女の脳裏を追えば、とくに不自然な変化でもないことが分かる。
「あなたがわざとそういうことを言っているのは分かります。
しかしそんな提案、姉にも通用しませんよ」
―
「意地悪、言ってごめん」
素直に謝る
一方の
「わたしも少し熱く……いえ、冷たくしてしまったようです」
「おまえが謝ることはないからな。
真っ当な反応をされてわたしは嬉しいよ。
別の手だってちゃんと考えてあるから、そっちに切り替えよう」
「最初から試していましたね」
「いいや、わたしは本気だった」
「そういうところが、あなたが
少々呆れた声音になる
「で、ぜーちゃん」
ここで話を進める。
「ちょっとそとのえらいやつらと会談しようと思ってるんだけど、その場所にこの道場使えない?
もちろん、すぐにって話じゃないからな」
「いずれ必要になることですね。
この道場は
普段からそとの人々も入ってくるので、外部との会談には比較的利用しやすいと思われます。
道場の持ち主のわたしとしては稽古以外で使われるのは不本意ですが、事情が事情ですし構いません」
「ありがと。
これも
「……確かに今回の件でもっとも思うところがあるのはあの人でしょう」
―
そして時間は過ぎ……。
見ると、屋敷の庭で
唐突な描写にもみえるが。
彼女たちにとっては普通の光景のようだ。
「あ、ねーちゃん。
「まあね」
「
あの人がいつも沈んで瞑想する、例の泉はうちにないからね」
彼女たち
そして。
物騒な提案をしたことといい、実際のところ
念のため
多少の妥協は仕方ないにしても。
「確かにねーちゃんの言うとおりかも。
空からおりてくる妹に合わせて視線を移しつつ、
「だから代わりとして、うちの風呂、使わせてやって。
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