終わり始めた彼女たち
―序―
これは「彼女たち」の終焉までの道のりを追った物語である。
その前に彼女たちについて簡単に説明しておこう。
我々の住む地とは似て非なるその世界において、異端視されるふたつの存在があった。
ひとつは「思う者」……
そしてもうひとつは「思われる者」……
彼女たちは
その目的は誰にも分からない。
ずっと、ある地を守り続けている。
―
彼女らの守る地のひとつは
名前のとおりに泉はあるが、けっしてその色は赤くない。
水たまりにも見まがう、ほんの小さな泉。
そこを中心として、いびつなまるを大きくえがく。
すると土地の輪郭に重なる。
―
彼女は、泉の底に沈んでいた。
衣装をまとったまま、体を丸めている。
気泡も立てず、動かずにいる。
水たまりのような泉ではあるものの、人ひとりがおぼれることのできる程度の深さはある。
彼女はそこで瞑想するのだ。
―
そうして泉の底で瞑想する
が、たいして息をとめられもしない。
すぐ水面に浮上する。
力を抜きつつ上がっていく。
変わらず気泡は漏らさない。
顔を水から抜いてのち、ようやく激しく呼吸を始めた。
―
「いやほんと
泉から顔を出した
「あれ、
さっきまでいたっけ」
「いなかったよ、ただいま、ふってきたところ」
「変な表現だな。
用は?」
―
「用というか報告。
次でわたしの仕事が終わる」
「そう……」
泉に濡れ、体に貼り付く衣装。
それをいじくりながら
「……このこと
―
「もちろん
いちおう伝言はぜーちゃんに頼んである」
「マジであいつよく消えるよな。
ともかく知らせてくれてありがと。
「助かるよ、それじゃあ最後の仕事に向かうね」
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