終わり始めた彼女たち




―序―



 これは「彼女たち」の終焉までの道のりを追った物語である。


 その前に彼女たちについて簡単に説明しておこう。


 我々の住む地とは似て非なるその世界において、異端視されるふたつの存在があった。


 ひとつは「思う者」……巫女ふじょ


 そしてもうひとつは「思われる者」……蠱女こじょ


 彼女たちは巫蠱ふこと総称される。


 その目的は誰にも分からない。


 ずっと、ある地を守り続けている。




赤泉院せきせんいん①―



 彼女らの守る地のひとつは赤泉院せきせんいんと呼ばれる。


 名前のとおりに泉はあるが、けっしてその色は赤くない。


 水たまりにも見まがう、ほんの小さな泉。


 そこを中心として、いびつなまるを大きくえがく。


 すると土地の輪郭に重なる。


 筆頭巫女ひっとうふじょがそこにいる。




赤泉院せきせんいんめどぎ①―



 筆頭巫女ひっとうふじょ赤泉院せきせんいんめどぎ


 彼女は、泉の底に沈んでいた。


 衣装をまとったまま、体を丸めている。


 気泡も立てず、動かずにいる。


 水たまりのような泉ではあるものの、人ひとりがおぼれることのできる程度の深さはある。


 彼女はそこで瞑想するのだ。




赤泉院せきせんいんめどぎ②―



 そうして泉の底で瞑想する赤泉院せきせんいんめどぎであった。


 が、たいして息をとめられもしない。


 すぐ水面に浮上する。


 力を抜きつつ上がっていく。


 変わらず気泡は漏らさない。


 顔を水から抜いてのち、ようやく激しく呼吸を始めた。




宍中ししなか御天みあめ赤泉院せきせんいんめどぎ①―



「いやほんとめどぎって息、続かないよね」


 泉から顔を出しためどぎに話しかけたのは、蠱女こじょのひとり、宍中ししなか御天みあめであった。


「あれ、御天みあめ


 さっきまでいたっけ」


「いなかったよ、ただいま、ふってきたところ」


「変な表現だな。


 用は?」




宍中ししなか御天みあめ赤泉院せきせんいんめどぎ②―



 赤泉院せきせんいんめどぎを見下ろしつつ、宍中ししなか御天みあめが問いに答える。


「用というか報告。


 次でわたしの仕事が終わる」


「そう……」


 泉に濡れ、体に貼り付く衣装。


 それをいじくりながらめどぎは質問を重ねる。


「……このことすべらには言った?」




宍中ししなか御天みあめ赤泉院せきせんいんめどぎ③―



「もちろんすべらにも伝えようとしたんだけど、どこにもいなくて。


 いちおう伝言はぜーちゃんに頼んである」


「マジであいつよく消えるよな。


 ともかく知らせてくれてありがと。


 すべらはわたしが探しとく」


「助かるよ、それじゃあ最後の仕事に向かうね」



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