第3話 魔法の使える身体
一日に十五分だけ、俺の身体に邪神龍ザルデバランを憑依させることができる。
そんな力を手に入れたわけだが……。
正直言って、実感がわかない。
いきなりこんなことになるだなんて想像していなかったからだ。
次の日の朝、勉強机の上にノートが開いて置かれていた。
絶対にこんなところにノートが置いてあるはずがないと思った俺は、ノートを見ると文字が書かれていた。
『私はザルデバランだ。お前が寝ている間に少し、身体を貸りこうして伝えたいことをノートに書くことにした。どうやら、私がお前に憑依できるのはお前が【怪物変身】と叫んだ時、またはお前の意識がない時だけのようだ。お前の中にいる間に私はお前の記憶を見ることにした。なんだ、お前は魔法が使えない体のようだな。ふん、もう安心しろ。私の力により魔力の代わりに食力──食欲を使うことにより魔法が放つことのできる体にしておいた』
「なんてこった……」
『他にも今のお前には私の意識がなくても私の力が体に宿っている。つまり、私がお前であるようにお前が私である、ということだ。とりあえず、簡単な魔法の使い方を書いておいた。よく読んで使ってみるといい』
「俺が魔法を使うことができるだと……」
俺はどうやら魔法を使うことのできる身体になったようだ。
それも、邪神龍ザルデバランの。
感謝でいっぱいだ。
なんてことをしてくれたのだろう。
ページをめくると簡単な魔法の使い方とやらが三ページに渡って書かれていた。
読んでみたが意味がわからなかった。
「全然簡単じゃねえ……」
○
放課後、俺は広場へとやってきた。
邪神龍ザルデバランから教えてもらった魔法を使ってみるためだ。
『【
「モノは試し、やってみるかあ」
ノートに書かれている通りに俺は右手のひらに意識を集中させる。
はあ、こんなんで魔法が使えたら苦労はしねえってのに……。
正直言ってできる気がしない。
五分ほど集中してみたが案の定、【
「……だよなあー」
もっと詳しく書いてほしいものだ。
なんて初心者に優しくないのだろう。
「いや……こうしてチャンスをくれたんだし何様だって話だよな」
魔力の代わりに食欲を使って魔法を使うことのできる身体に書き換えてくれたのだ。
そんなことをしてくれたというのに、さらに注文をするだなんて図々しいにもほどがある。
「いよし、もう一回!」
手のひらに意識を集中……
んで黒く燃える炎を想像……
瞳を閉じる。
より黒く燃える炎を鮮明に想像する。
「んぬぬぬっ」
額から汗が垂れる。
身体中が熱くなってきた。
熱さは右手のひらに集中していく。
次第に、右手のひらからとんでもない熱気を感じだす。
ん?
目を開けると、俺は大きく目を見開いた。
「できた!」
右手のひらには黒く燃える炎の弾が出現していた。
「うおおお! これが【
初めての魔法。
ずっと夢見ていた魔法を使うことができた。
その興奮は全身に鳥肌を立たせるほどのものだった。
「って、あっつ!!」
手のひらから数センチ浮いているとはいえ、炎が近くにあるのだ、熱いに決まっている。
慌てて俺は手から【
「あっ」
下が芝生だということを忘れていた。
芝生に【
慌てて【
「あっ、あぶねー……」
あと一歩で大火事になるところだった……。
とはいえ、魔法が使えることが確定したのはなんて嬉しいことだろう。
魔力0冒険者、禁断大魔獣の力を得る。 さい @Sai31
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