第2話 復活。

 夢を見た。

 

 真っ暗な空間、宙に浮いている。


 目の前には二十メートルほどの巨大な影。

 やがて、影から姿が見えた。


 邪神龍ザルデバランだ。


 絵でしか存在していなかった邪神龍ザルデバラン。

 本当に絵のままだ。


「お前は死んだ。私にお前の身体をくれ」


 意味がわからなかった。

 俺が死んだ?


 ああ……。


 思い出した。


 いきなり目の前にゴーレムが現れたと思ったら、殴られたんだったな。

 んで、【怪物変身】だとかいうスキルを……。


「まっ、とは言っても私が力を出せるのは一日十五分だけ……あとはお前の時間となる」

「邪神龍ザルデバランで間違いないんだよな……」

「そうだ。私の名前はザルデバラン……」

「俺、冒険者になりてえんだ。お前の力を使えばなれるのか?」


 ゲラゲラと邪神龍ザルデバランは笑い出した。


「容易いことだ」

「そっか、ならわかった……お前にやるよ俺の身体」

「ふん、スキルを使えばお前の身体に私が宿る。さあ、叫べ!!」


 まさか、こんなことになるだなんてな。

 死に際にスキルなんかに目覚めるだなんて。


 本当、神様遅すぎるぜ。

 まったくよお。


 俺は肺いっぱいに空気を入れ、叫んだ。


「怪物変身──ッ!!」


 と。



 目を開けると、私は落下していた。


 肩甲骨からは私と同じ大きさの羽が生える。


「ふん、これが小僧の身体か!」


 羽を動かして、上に向かって飛ぶ。


 久しぶりだ。

 何百年ぶりだろう、こうして外の景色を見るだなんて。


 何もかもが新しい。

 景色だ。


 屋上へと飛び、地面に着地する。


「よお、お前が小僧を殺したのか?」


 ゴーレムごときにやられてしまうだなんて、なんて脆い人間なんだ。

 こんなやつ……


 ゴーレムは私に向かって殴りかかる。

 私はその一撃を右人差し指で止めた。


「この指だけで十分だ」


 人差し指でゴーレムの拳を振り払い、ゴーレムの胸元に人差し指を置いた。


「はい、おしまい」


 突如、ゴーレムは崩壊を始め出す。


 はあ、この小僧……なんて貧弱な身体なんだ。

 それに魔力を貯めることができない身体なのか。

 ゴミだなあ。


 ゴーレムは砂になり、風に吹かれた。



「──はッ」


 目を覚ますと、俺は倒れていた。


 いてて、と頭を押さえながら立ち上がる。


 空は星が綺麗だった。


 フェンスを見ると、壊れていた。


 そうだ、俺はゴーレムにやられ、スキル【怪物変身】を手に入れたんだ。

 んで、邪神龍ザルデバランの力を得て……。


 つまり、今の俺の中には邪神龍ザルデバランがいるのか。


「ゴーレムをやったんだよな……ふっ」


 なぜだろう、なんだかとても面白い。


「ははははは!!」


 俺は一度死んだんだ。

 なのに今こうして、生きている!


「ははははは!!」


 それだけじゃない、あの太古の時代に存在したと言われている禁断大魔獣の力を得たんだ。


「神様ありがとよ、俺にこんな力をくれてよ」


 この力があれば、冒険者になることなど容易いことに決まっている。

 最高だ。


 俺は冒険者になれるんだ。


 これは、ひょんなことからスキル【怪物変身】に目覚めた結果、世界を滅ぼしかけた邪神龍ザルデバランの力を得た俺の冒険者になるまでの物語──

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