今日も俺は凪いでいる〜【予言】によって集められた王国選抜PTに選出されたスキル【凪】のめんどくさがり屋な俺、やっと追放されたが雑用係のボクっ子がついて来た〜
第11話 アイツらはもう死んでると思うぞ?
第11話 アイツらはもう死んでると思うぞ?
◇◇◇
この、代理戦争。
選抜されるのは6名が基本だ。
それは各国共通の取り決めであり、国の大小は関係がない。代理戦争の平等性を謳った結果だが、そもそも人口が多い中から選べる時点で平等性などあったものではない。
そもそも選出された者の中には、魔物を操ったり、使役したりする者もいる。あのメスガキだって確か精霊を使役しているヤツだった。
飛び抜けてガキだったから少し覚えてる。
まあどちらにせよ、俺の知ったことではないがな……。
「やっぱり、アンタらなら無事だと思ってたぜぇ!!」
「うぅう……よかったですぅ……!」
重装備の男は泣き笑いしながらジジイの肩をバシバシと叩き、メスガキはババアに抱きついてシクシクと泣いている。
いい尻……もとい、いい乳もしていた女に重装備の男がローブをかけた時点でもう用はない。
感動の再会なら他所でやってくれ。
(めんどくせぇ……)
兎にも角にもイケメン重騎士が気に食わない。リリアの視界に入らないで欲しいし、シンプルに声がデカい時点でもう頭が痛くなる。
もう留まる理由もないし、めんどくさくなる予感しかしない。ドロップ品の回収は、チュッチュムフフしてからで……いや、取りに帰るのもめんどうだし、……最悪放置してもいい。
素材になりそうなものもほとんど使ったし、飯に使えそうなものも……、オーク肉と蛇肉……。鶏肉!! お、おぉっ? ここの甘い香りは、は、蜂蜜……か?!
実は甘いお菓子に目がない俺は、ダンジョンでの甘味の少なさに泣きたくなっていたのだが、これは神からのご褒美に違いない。
「リリア。お菓子は作れるか? は、蜂蜜をドロップしてるぞ。多分デッカい蜂のドロップ品だ」
「……」
俺は興奮のままにリリアに声をかけるが、リリアは「感動の再会」後、何やら話し込んでいる帝国のヤツらを見つめながら少し寂しそうに苦笑している。
羨ましいのか……?
あんな感じに憧れるのかな?
……うん。わからん!
……ッ!!
ま、まさか、あの重騎士の男を……?
俺は少し顔を引き攣らせつつ、トントンとリリアの肩を叩く。
「リ、リリア……?」
「えっ? ぁっ、ごめん。どうしたの? ルーカス君」
「いやぁ……あ、あれ、蜂蜜だろ? お菓子とかも作れるのか聞いたんだが……?」
「ふふっ、お菓子食べたいの?」
「……? あ、ああ。なにかおかしいこと言ったか?」
「ううん! 可愛いなって! でもお菓子かぁ〜……ボク、一度しか食べたことないし、作り方とかも……うぅーん。砂糖は蜂蜜で代用できるよね……? 小麦とかも使うんだっけ? ……ご、ごめんね? 作ってあげたいんだけど……」
「そうか……。うん、大丈夫だ! 蜂蜜は舐めるだけでも美味しいしな!」
「りょ、料理には使えるはずだよ? お肉を柔らかくしたり、確か色々使い方も習ってる! 果実を発酵させて蜂蜜を加えたお酒とかも甘くて美味しい……あっ。でも、少し時間が……!! ご、ごめん! 嗜好品まで頭が回らなく、」
ポンッ……
俺はリリアの頭に手を置き、言葉を遮る。
「リリアはちゃんと仕事をしてくれてるんだから謝ることなんて一つもないぞ? 俺の方こそ悪かったな。少しわがままだった」
「……ぜっ、全然! ルーカス君が謝ることないよ! い、いつも守って貰ってるし、食材だって準備してもらってるし、ルーカス君がいてくれるからボクは生きてられるんだからさっ!」
「ふっ……、お互い様だ」
「……ぅ、うん……」
リリアはじんわりと頬を染める。
俺の安堵は計り知れない。
ぽっと出のイケメン重騎士クソ野郎に『嫁』をたぶらかされたのかと、正直クソ焦っていたのだが、その心配はなさそうだ。
「んじゃ、食材ドロップだけ回収して帰るか」
「……うん! そうだね」
「……ん? どうかしたか?」
「ううん! ちょ、ちょっとだけラスト君たちのこととか、巫女様のこととか気になっちゃって……。でも、大丈夫だよね! ルーカス君がいてくれれば、すぐに追いつけるだろうし!」
リリアは無邪気に笑顔を作る。
文句なしの笑顔だが、俺は軽く絶句する。
リリアは「……ん?」と可愛らしく小首を傾げるが、「ハハッ……」と笑いながら、ドロップ品へと歩くと、「あっ、ボクも集めるよ!」とリリアもドロップ品を回収し始めた。
もちろん、「俺は帰ろうと思ってるんだが?」と言うタイミングだったような気がしないでもない。だがまぁ、これはセックスができてからだろう。
それよりも……、
『アイツらはもう死んでると思うぞ?』
俺とリリアの認識がかけ離れていることに少し驚いた。
ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ……!!
一つ目のドロップ品に手を伸ばせば、鎧がぶつかる音が近づいてくる。
「なぁ! 話は聞かせてもらったぜ!! 本当にありがとなッ!! 2人を助けてもらって本当に感謝してもしきれない!!」
「……はぁ〜……声がデカいんだよ」
「あっ、カハハッ!! すまん! でも、ちゃんと感謝を伝えたくて!! 気持ちが声に出ちまった!!」
「別に助けたわけじゃない。そんなことより、さっさと失せろ。俺は忙しいんだよ」
俺はドロップ品を回収しながら、片手で追い払うようにイケメン重騎士クソ野郎をあしらうが……、
「じゃあ、それくらい手伝わせてくれよ! お前ら2人か? 他の“オークウェル”のメンバーはどうしたんだ?」
何やら一緒にドロップ品を集め始めやがる。
「……知るか。俺に喋りかけるな。めんどくさいっ……」
俺はポツリと呟き、無視することを決めた。
声がデカいヤツもイケメンなヤツも大嫌いだ。
(……《聴覚凪(ヒアリングカーム)》……)
俺は雑音を遮断しながら、久々に使ったなと無音の中で思っていた。
――このクソ無能が!
――囮にくらいなったらどうだ!?
――マジキモイからこっち見ないでくれるぅ?
――さっさと死んでくれてもええぞい?
イキリイケメンリーダーも、真面目デカブツワイルドイケメンも、淫乱クソビッチも、陰険クサレザコジジイも、どうせ今頃魔物の腹の中だと「ふっ」と小さく笑う。
そうすると……、
コロコロッ……
別に要らない素材ドロップが足元に転がってくる。
物を拾うことすらできないのかと顔をあげれば、少し驚きつつもパーッと弾ける笑顔のイケメンが待っている。
「ぉ、おぉっ!? それはオッケーって事か? おぉーい! ジェイド! マーリン!! この2人もしばらく同行してくれるってよぉ!!」
何も聞こえない俺は眉間に皺を寄せたが、余裕で無視をした。
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