Tempest tost -灰の悪魔の場合-
少し、余談を挟む。
〝悪魔〟と一口に言えど、その種類は実に多種多様だ。宗教ごと、地域ごとに色々いる上、『悪魔的な側面を持つ神格』なんかもまた別にいる。
あるところに、一匹の
──
『死体に憑依しているのだ』『いや、
つまり、
故に、ほとんどの
しかし、
みんなと同じに、人間のことは、好きだ。でも、みんなとは違って、性行為をしたいとは思わない。
素敵な夢を見せてあげるというのも、ロマンチックで良いと思う。でも、それがえっちな夢で、しかも最後に殺してしまうなんて、とんでもない。
それは、たぶん、家畜の牛を見る子供と同じようなものなのだろう。美味しいから好きなのではなく、好きだから好きなのだ。彼女は、みんなよりも少しだけ無垢で、純粋で、とうてい悪魔には向かない子だった。
そんな子だから、ごくごく自然な結果として、みんなとは反りが合わなかった。
「輪姦だー!」と、男子高校生が集団でトイレに行くようなノリで
「私たちは
そんなことを繰り返す内、順当に、彼女は孤立していった。そこには、単純に興味を失くして離れていく場合と、
不幸なのは、彼女の周囲に――正確には、
無理もない。彼女を人間に置き換えてみれば、食欲も性欲も生きる意欲もない上、いまひとつ会話が成立しない――そんな少女なのだから。不気味でさえある。
彼女を迫害する者達からは、実に多種多様なあだ名がつけられた。単純な罵詈雑言に始まり、『
彼女は人間の娯楽を好んだ。料理や裁縫に始まり、読書やゲームなど、一人で時間を潰せる趣味を延々と消費し続けた。酒や煙草にも手を出した彼女の姿は、娯楽を餌に人間を堕落させる悪魔の目に、とても奇妙なものに映った。
一人で居たかったのではない。ただ、一人でしか居られなかっただけ。
――――それから、長い時が過ぎた。
不意に訪れた
微風の吹く音にもかき消されそうな、蚊の羽音にも負けるような、とてもか細い呟き。
けれどもそれは、少女の耳にとてもよく響いた。
――優しくしてあげたいな、と思った。優しくされたいな、とも思った。
だから少女は、扉を叩いた。
斜陽的ファウンドフッテージ 望月祐希 @umiwzm_101
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