第27話 学園編入試験本番①
あれから1週間が立ち、俺は編入試験受験のためにルクスタント王国の王都フォルテンブルクに来ていた。
昨日までは毎日殆ど寝ずに勉強をしてきたが、昨日はちゃんと21時に寝たので、体調は万全だ。
勉強は国語、数学基礎、王国史はおそらく完璧。魔法理論は9割がたは理解した。
おそらく試験自体は大丈夫であろうが、最高峰のSクラスに入ることができるかは怪しい。
とにかく出来ることは万全を尽くすのみだ。
俺は学園の門をくぐった。
門をくぐると、学園内は制服に身をまとった学生ばかりだった。
軍服で来た俺は明らかなる場違いだな。
そう思っていると、1人見知った制服姿の人を見つけた。
向こうもこちらに気づいたようで、手を振りながらこちらに近づいてくる。
「お久しぶりですわね、ルフレイ様。受験のための勉強はしっかりできましたかしら?」
彼女はルクスタント王国女王のグレースであった。
制服を着ていても、彼女からは不思議な高貴なオーラが溢れているな。
「お久しぶりです、グレースさん。頂いた参考書のお陰でなんとかなりそうです」
「そうですか。それは良かったですわ。今から試験でしょう? 私が試験会場にお送りいたしましょう」
ありがたい。
【世界地図】を使う手間が省けそうだ。
グレースは俺の手を引いて校舎へと連れて行く。
周りから変な視線を向けられていたが気にしてはいけない。
「おや、グレース女王様ではないですか。そちらの男性はどなたで?」
校舎に入ったところにあるカウンターのような場所に座った女の人に呼び止められる。
彼女は外にいた生徒たちとは異なる服を着ており、頭には大きな三角形の帽子を被っていた。
おそらく彼女はこの学園の先生なのだろう。
「御機嫌よう、メリル先生。彼は今日編入試験をうけるルフレイ=フォン=チェスター様ですわ」
「ほほう、この人が例の編入試験を受けるという方ですか。女王からの直接の推薦なんて初めてのことなので皆んな驚いていましたが、この方はそんなにすごいのですか?」
メリルは俺をしげしげと眺める。
異世界の女の人は美人であるという例に漏れず彼女もなかなかの美女なので、間近で眺められると恥ずかしいな。
「まぁどちらでも良いです。それは今から行う試験ですべて分かりますので。ルフレイさん、私についてきて下さい。第一次試験の試験会場へと案内します」
ここでグレースとは一旦お別れだ。
案内してきたことを感謝し、俺はメリルについていく。
後ろからグレースが手を振りながら励ましの言葉をかけていてくれ、俺はやる気が漲ってきた。
こうなったら絶対に彼女と同じSクラスに入ってやる!
「この部屋が第一次試験の試験会場です。どうぞ入って下さい」
試験会場に入ってみると、そこは何やら大きな板のようなものだけが置かれた部屋であった。
全面が液晶パネルのような板でステータスを確認するのだろうか。
「では、改めまして。第一次試験の監督をしますメリル=シュミットと申します。以後お見知りおきを」
「ルフレイ=フォン=チェスターです。本日はどうぞ宜しくお願いします」
軽い挨拶を済ませた後、第一次試験に入る。
第一次試験は事前情報通り、ステータスの確認を行うだけであろう。
魔法理論の教科書に乗っていた、この世界の一般人のステータスよりも俺は高いので、この試験は難なくSクラスの水準でクリアできるだろう。
「この板はステータス測定板といい、名前通りこの板に触れたもののステータスを表示します。この板はとある遺跡から掘り出されたもので、測定ミスが今までに一度も起きたことのない優れものですので、測り間違えの心配はございませんので、安心して手で板を触れて下さい」
俺はメリルに促され、板に触れる。
突如板からまばゆい光が発せられ、視界が真っ白になる。
視界が回復してくると、板に文字が写っているのが見えた。
――■■■■、のステータス――
○基本情報
・名前:■■■■=■■■=■■■■■
・年齢:■■歳
・性別:男
○基本ステータス
・MP:616156/ERROR
・装備:??? ■■■■■■■
??? ■■■■■■■■■
??? ■■■■■■■■■
??? ■■■■■■
??? ■■■■■■■
??? ■■■■■■
??? ■■■■■■
??? ■■■■■■
○固有スキル
・??? 【■■】
・??? 【■■■■】
・??? 【■■■■】
・??? 【■■】
○汎用スキル
なし
○称号
・【■■■】
・【■■■■■■■■】
・【■■■■■■】
・【■■■】
・【■■■■■■■■】
ステータス測定板に表示されていたのは、殆どが黒く塗りつぶされた俺のステータスだった。
これから読み取れる情報は性別と、MPと、汎用スキルの有無だけ。
名前すら黒塗りにされているのはなぜだろうか。
もしや、名前の横に表示されている[神名]というのが原因かもしれないな。
横を見ると、メリルは口をあんぐりと開けたまま固まっていた。
絶対に起こらないと思っていたことが起こった時の反応って皆んなこうなんだろうか。
『絶対に大丈夫』という彼女の言葉がフラグだったのかもな。
「そんな、ステータス測定板が故障した? まさか……そんな事が起こるの?」
メリルが変わりにステータス測定板に触れる。
だが板には正しい数値が表示された。
この女は再度俺に板に触るように言い、俺ももう一度触ってみたが、さっきと結果は変わらなかった。
「測定板が壊れているわけでは無さそうですね……ということはルフレイさんのステータスがおかしいだけ?表示されているMP616156も明らかに人間の数字ではないし……」
メリルは頭を抱えて悩む。
明らかにおかしな数値だが、測定板が壊れているわけではない。
これをどう説明すれば良いのか迷っていた。
「あ、あれを使えばあの値が正しいか証明できるわ。我ながら名案ね。早速取ってくるから少し待っていてね」
メリルは何か思いついたのか、部屋の外に出ていった。
数分後、彼女の手には丸い水晶球のようなものが乗っていた。
本当にこれを使えば正確な数値が図れるのだろうか。
「これは昔MP測定に使用されていたMP測定用の魔法球よ。手を触れたもののMP総量に応じて色が変化するの。今のところ測定値の上限は確定していないから、試しにこれを使ってみましょう」
俺は魔法球に手を置いた。
球は赤から橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色、そして白色へと変化していく。
Ph試験紙みたいに色が変化するので面白い。
白で色の変化が止まったので、この時の値が球の上限か俺の上限かのどちらかだろう。
そう思っていると、魔法球が急に先程の色に点滅し始めた。
点滅の速度はだんだん速くなっていき、パチンコの当たり演出の様になっている。
右手が勝手に動くのは御愛嬌。
それからも速さは増し続け、ついに色の違いも分からなくなった。
ピシッ
魔法球にヒビが入り、球が粉々に砕け散った。
どうやら球の限界値に達したようだ。
「わ、割れた。これは新発見ですので上になんと報告すれば良いのやら……。取り敢えず、第一次試験は問題なく通過でいいです」
よし。少しトラブルはあったが、なんとかなったようで良かった。
メリルは、俺を第二次試験の会場へと案内する。
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