第7話 島内散策
空軍基地の建設を昨日決定した俺たちは、建設場所を決定すべく島内散策に乗り出すことにした。
【世界地図】で確認する限り、島の東側半分には山脈が連なっており、さらに北にも山がある。
必然的に基地を建設できるのは南西部の平野のみとなるな。
俺はその平野をイレーネ平野と名付けた。
平野を南西に進むと、1つの大きな湾があるようだ。
かなり今後そこには海軍基地を建設したいものだ。
ちなみにイレーネ神殿もこの平野の真ん中あたりに存在する。
調査には第一小隊50名とゲパルト自走対空砲、追加で先ほど召喚した工兵5名が参加する。
広大な平原を歩きで移動するのは大変なので、移動用の車両を召喚することにしよう。
移動に使う車両はアメリカの有名な高機動多用途装輪車両、ハンヴィーに決めた。
「【統帥】スキル発動。ハンヴィーを召喚!」
いつもと同じく光の中からハンヴィーとその運転手が現れる。
ハンヴィーには12.7mm重機関銃が搭載されているので、魔物に襲われても安全だろう。
これでも魔物相手にはオーバースペックだと思うが。
「よし、ハンヴィーに4人1組で乗りこんで移動をする。ゲパルトは先頭をお願いね」
全員が乗り込んだことを確認し、いざ出発!
◇
ゲパルトを先頭に、車両たちは草原を走りぬける。
実は既に大体の場所の目星はつけてあるので、後は実際に行ってみるだけだ。
道中数匹の魔物に遭遇したが、皆車両たちに怯えているのか襲ってはこなかった。
襲ってきたら重機関銃で蹴散らしてやろうと思っていただけに残念だ。
今回の予定地であるイレーネ平原の真ん中には川が流れており、その川よりも北側に空軍基地を建設しようと考えている。
その間は大きな丘陵などがなく、整地が容易であると思ったのだ。
「司令官、もう少しで目的地に到着いたします」
ハンヴィーの運転手が告げる。
もうそんなに走ったのか。特に気持ち悪さなどは感じなかったな。
「分かった」
目的地にはハンヴィーのおかげもありかなり早く着いた。
そこにはやはり地図通り丘もなく、滑走路などがひきやすそうだ。
ただ草が少し生えているので、それらの伐採には少し時間がかかるだろう。
「工兵のみんな、一応ここが建設予定地なんだけど、何か意見や問題はある?」
5人の工兵たちの中で、最もベテランそうな人が答える。
「なんの問題もないと思います。整地作業が短縮できるので、かなり早く建設に入れると思います」
良かった。俺のチョイスは間違っていなかったようだ。
俺が考えているのは、全長3000メートル級の滑走路を2本持つ大型の飛行場だ。
ここには爆撃機部隊を配備しようと思っている。
大陸への実現可能な唯一とも言って良い攻撃方法が爆撃機による空爆である現状、早く滑走路を完成させることはとても重要である。
「どのぐらいで1本目の滑走路を完成させられそう?」
「早くて2週間、というところでしょうか」
「そんなに早くできるの? でも速さも大事だけれどみんなの安全が疎かにされてはいけないよ」
その後も話を聞いてみると、彼らはあくまでも魔力の塊であり、身体的疲労もないため1日中働き続けられるんだとか。だから時間外労働も全然構わないらしい。
ブラック企業が泣いて喜びそうな超有能労働資源だな。
他にも彼らは空腹や痛みも感じないんだそう。
じゃあなぜロバートはあんなにもコカトリスを食べることに固執するのだ?
何? 食べようと思ったら食べれるし味も感じる? ただ必要ないだけと。
なんて不思議で都合の良い存在なんだ。
とにかく工事を早く始めよう。
「では今日から滑走路の完成まで、この地で野営をしようか」
俺達は建設現場近くに野営をすることにした。
工兵たちが建設作業中に魔物に襲われないよう、我々は警戒を続ける必要があるからだ。
それに野営の経験も、いつか役に立つだろう。
第一小隊の隊員がせっせと野営の準備を始める。
テントを広げ、火を起こし、寝袋を放り込む。
というかお前ら眠気も感じないのになぜ寝袋が必要なんだ? まぁ気にしないでおこうか。
「建設に必要なものは、俺のMPから好きなだけ出して使ってね」
「助かるよ司令」
空軍基地の建設工事の場所が正式に決定した。
そうと決まれば、神殿から残りの工兵を呼んでこよう。
大勢の人員の輸送にもハンヴィーが大活躍だ。
俺達はハンヴィーでピストン輸送を行い、全員を運び終えた。
建設現場についた工兵たちは、それぞれの機械を取り出すとせっせと作業を始めた。
大まかな要点だけ伝えば、後は彼らが設計から建設までやってくれるので楽ちんだ。
そういえば先程、ここには爆撃機部隊を配備するといったが、戦闘機はここには配備しないのだろうか。
答えはノーだ。だが将来的には戦闘機用の基地をもう1つ建設しようと思っている。
陸軍基地と海軍基地の建設が終わってからなので当分先にはなるが。
工兵たちがせっせと作業をしている周りを、魔物警戒のために第一小隊が巡回している。
だが魔物は一向に現れず、隊員の中には欠伸をする者も現れた。
そうしていると、ほかの隊員の例にもれず退屈していたロバートがやってくる。
「司令官、第一小隊50名で魔物狩り大会をしたいのだが」
ロバートからの突然の提案に驚く。
なんだよ魔物狩り大会って。
「ロバート、基地建設の護衛を忘れてるんじゃないだろうね?」
「だってめっちゃ退屈ですし」
頼むから真面目に仕事をしてくれ……と言いたいところだが、正直なんだか面白そうだ。
魔物狩り大会で島内の魔物の数を減らせれば一石二鳥かもな。
では早速ルールを考えるとしようじゃないか。
俺は数分考え、ある程度ルールの案がまとまってきた。
俺の考えたルールは以下の通りである。
○第1回魔物狩り大会 ルール
・日没までに倒した魔物の数を競い、最も倒した数が多い人が優勝。
・ダークウルなどの魔物が落とす魔石を集め、その数で倒した数をカウントする。
・チームは組んではいけない。
まぁこんなものか。
これなら少しは競争らしくなるだろう。
ルールを説明して、早速始めるとしよう。日没までには後4時間ほどある。
あ、ゲパルトはここで待機ね。え? 参加したかった? ダメなものはダメ。
「では、これより第1回、魔物狩り大会を開始する。始めっ!」
ウォォォォォォ!!!!
何であいつ等あんなに元気なんだよ。
さっきまでの退屈そうな雰囲気は吹き飛び、全員目を血眼にして走り出した。
さて、皆んなはどれくらい魔物を狩って来るかな?
「賭けをしましょう。司令官殿は誰が一番になると思います?私は小隊長以外の誰かですね」
暇そうにしていたエーベルトが俺に賭けの提案をしてきた。
しかしエーベルトよ、それでは賭けにならないぞ。
どうも昨日の一件以来、エーベルトはロバートを嫌っているように見える。
2人にはぜひ仲良くしていてほしいんだけどなぁ。
結局俺も賭けに参加することにした。
俺はエーベルトとは逆にロバート1人に賭ける。
頼む、小隊長としての威厳を見せつけてくれ。
――4時間後、狩りを終えた隊員たちが続々と帰ってきた。
皆んなお互いの魔石の数を競い合っているらしい。
隊員たちは全員戻ってき、残るはロバートのみとなった。
10分ほど待っても彼は帰ってこなかった。
もしや迷子にでもなっているのかと思ったが、それは間違いだったようだ。
「おい! あれを見ろ!」
隊員の1人が指を指して叫ぶ。その先に見えた物のは――
何やら大きなもの魔石を引きずりながら帰ってくるロバートの姿だった。
他にも多くの魔石を持っているようであり、なんとも重そうだ。
「おいあれ……コカトリスの魔石じゃないか?」
確かに、あの大きさと色がコカトリスのものと一致していた。
とすると、なんとロバートはコカトリスを仕留めてきたのだ!
あの大きなコカトリスを彼の持つ小銃だけで倒したというのか、驚きだ。
「賭けは残念ながら司令官殿の勝ちのようですね。」
エーベルトが少しふてくされた顔で言う。
コカトリスを落とすというゲパルトの専売特許を奪われたのだから仕方がないか。
俺はロバートの優勝を全員の前で宣言する。
「この勝負、ロバートの優勝だ」
パチパチパチパチ……
第一小隊の隊員からロバートに拍手が送られる。
全員楽しんでくれたようで何よりだ。
よし、今日一日終わり。後は小隊が用意したテントでぐっすり眠ろう……
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