第5話 魔物との初の戦闘
心強い味方を得ることができたし、早速さっき襲ってきたダークウルフとやらを討伐しよう。
しかし俺だけの独断で決めるわけにはいかない。とりあえずロバートに意見を聞いてみよう。
「小隊長、我々はこれより神殿前の魔物の殲滅、および周辺の調査を行う。何か意見はあるか」
俺は映画で見たような威厳のある話し方をしてみる。
軍を指揮する立場になる以上多少は威厳が必要であろう。
「司令官、その見た目でその口調はどうかと思うぞ。後俺はロバートで良い」
そういえば今の俺は女神によって15歳ぐらいの肉体になっていたんだったな。
15歳の少年があんな口調でしゃべってきたら痛いやつに見えるか。
じゃあ少年らしい口調に変更しなければならないか。
「……おほん。ロバート、今から神殿の周りの調査をしようと思うんだけどどう思う?」
「それでいいと思うぞ司令官。それよりも司令官は魔物とやらを目撃したのか?」
「うん。ダークウルフという黒いオオカミの魔物と遭遇したよ。俺にはどうすることもできなかったけれどもね」
ロバートは自分の持っているM16を見つめる。
まるで自分の愛銃に語りかけているように見える。
「そうか……ソレはコイツでヤれそうかい?」
ロバートがM16を掲げる。
俺は撃退できると思っているが、確証はない。
地球人の感覚からすると、銃で殺せない獣はいないと思うのだが果たしてどうなのだろうか。
「多分大丈夫だと思うよ。でも実際に魔物と戦ったわけではないから100%大丈夫だと保証することは出来ないね」
そうか、といってロバートは頷いた。
数秒考えた後、彼はニヤッと笑って言った。
「まあ犬の数匹ぐらいであれば余裕で殲滅できると思うよ。司令官」
ロバートはダークウルフを倒す自信があるようだ。
正直これを倒せないと外にすら出ることが出来ないので、サクッと倒してほしいところではある。
「分かった。ほかに聞いておきたいことはある?」
ロバートはニヤニヤして言う。
「魔物は狩りつくしても良いのか?」
なんて好戦的な奴なんだ。
魔物と言うだけあって人に害をなす存在であろうから、駆逐しても問題は無いはずだ。
何ならこの島で安定して生活が送れるよう絶滅させた方が良いかもしれない。
「あぁ、もちろん構わない。小隊に告ぐ!我々に楯突く獣はMI☆NA☆GO☆RO☆SIにしろ」
「「「「「「Yes, Sir! 」」」」」」
士気は十分に高まっている。
兵士たちは自分の手の中の銃を握り、今か今かと出撃を待っているようだ。
そんな彼らに俺は作戦開始の合図を出す。
戦闘中ぐらいは口調を司令官風にしてもいいだろう。
「第一小隊、これより作戦を開始する!!」
俺の合図で扉が開かれた。
ロバートを戦闘に第一小隊50名は、神殿を出て平原へと足を進める。
ちなみに俺は陣形の中央で守られている。
扉の前に陣取っていた5匹のダークウルフは諦めて去っていったようだ。
今はダークウルフの姿は見当たらないが、そう遠くないうちに接敵するはずである。
そう言っているうちに兵士の1人がダークウルフを発見したようだ。
彼は小声で部隊の仲間に出現を知らせる。
「10時の方向に、ダークウルフと思われる獣の群れを発見。発砲許可を求めます」
「発砲を許可する。撃てぇ!」
――タタタタタタタタ……
俺は兵士たちに発砲許可を出す。
乾いた音とともに、銃口から火を吹きながら弾がダークウルフに向かって飛翔していく。
――ギャウンッ!ギャウンッ!……ドササッ
鉄の嵐がダークウルフの群れを襲う。
Aランクだと表示されたダークウルフの群れが、銃弾によって一瞬の間に殲滅されてしまった。
後に残るのは穴だらけになったダークウルフの躯のみ。
やはり現代兵器は強いんだなぁと改めて実感した。
「司令官、魔物の群れを殲滅しました」
兵士の1人が報告に来る。
これなら余裕でモンスターを現代兵器で倒せそうだ。
「凄いなみんな。でも何時また敵が出て来るか分からないから警戒を怠らないようにね」
「「「「「「はっ!」」」」」」
兵士たちは引き続き周囲を警戒する。
そんな中、俺とロバートは死んだダークウルフの死骸に近づく。
死骸は銃弾で穴だらけになっていた。
「そういえば司令官、あの死骸はどうしよう?」
そういえば死骸の処理なんて一切考えていなかったな。
異世界物語ではよく素材を回収してギルドに持っていたが、この島にそんなものはない。
食料にもなりそうにないので、放っておいてもいいだろう。
「どうするって、放っておけばいいんじゃないの? 食べられそうにもないしね」
「しかし司令官、放っておけば匂いにつられて新たな魔物がやってきかねん」
なるほど、死骸の匂いか。
そういえばサメは血の匂いを嗅ぎつけてよってくると聞いたことがある。
それみたいに血の匂いや腐った匂いで大勢の魔物が集まってくるのは困るな。
じゃあ燃やしてしまえばいいか。
「確かにロバートのいうとおりだね。よし、じゃああの死骸たちは焼却処分してしまおうか」
回復し始めているMPを使ってガソリンとライターを召喚する。
火が燃え移らないように草の生えていないところに死骸を移動させた。
ガソリンを死体にかけて、ライターで火をつける。
中々大きい死骸だから、燃え切るには少し時間がかかるだろう。
それにしてもロバートはえらく頭が冴えるな。
優秀な部下を持つことが出来て本当に良かった。
そう言っている間にいつの間にか死骸が燃えきっていた。
跡地には灰はなく、代わりに小さな宝石のようなものが落ちているのを見つけた。
これが何なのかは帰ってから鑑定しよう。
「3時の方向、新たにダークウルフ8匹接近してくる。撃ち方始め!」
またダークウルフの群れを見つけたようだ。
見つけると同時に銃弾が叩き込まれてバタバタと倒れる。
「殲滅完了。これより死骸の処理に入る」
…………かれこれ2時間ほど夢中で魔物を狩っていたと思う。
討伐数は30匹目ぐらいから数えるのをやめたので正確な数は分からないが、およそ160匹ぐらいだろうか。
そういえばダークウルフの他にも様々な種類の魔物と遭遇したな。
どの魔物も銃の前には無力だったが。
特にBランクのデスホーンラビットとはよく遭遇した。
奴は小さくてすばしっこく、ダークウルフよりも倒すのが面倒くさいのでできれば遭遇したくないとロバートが愚痴をこぼしていたな。
今日はこれぐらいで調査を終了しよう。
俺は部隊に号令をかける。
「よし、本日はこれにて終了とする。小隊、神殿へと帰還する」
あーつかれた。
俺が銃を撃っているわけではないのだが、二時間も平原を歩き回ると疲れる。
でも今日はこれで終わり。神殿に帰ってさっさと寝よ――
「司令官!空をKFC(キムラ・フライドチキン)が飛んでますぜ」
えっ、KFC?ロバートは一体何を言っているのだ?
あぁ理解した。KFCって鶏のことか。
確かにでっかい鶏がとんでいる。でも尻尾は緑で……蛇みたい。
あれ、鶏の胴体に蛇の尻尾?それってもしかて――
「――あの鶏を【鑑定】!」
鑑定結果を見てやっぱりかと思う。
嫌な予感ほど当たるもんだ。
「馬鹿!あれはKFCじゃない、あれはコカトリスだっ!」
◯対象「コカトリス」鑑定結果
雄鶏の体と蛇の尻尾を持つSランク相当の魔物。その目を見てしまうと石化してしまう
「みんな、絶対にあの鳥の目を見るんじゃないぞ!目が合ったら石にされてしまうからね」
とりあえず兵士たちには目を向けないように言っておいた。
さて、あいつをどうやって撃破しよう。
鶏のくせに空を飛んでいるから小銃では命中させることができない。厄介なものだ。
仕方ない、新兵器を召喚するとしようか。
どうせいつかは召喚する予定だったので、いま思い切って召喚することにする。
今のMPは約7800、新兵器は4000必要だからMPは十分だ。
「【統帥】スキル発動、ゲパルト自走対空砲を召喚!」
体からMPがごっそりと抜けていく感覚の後、2つの砲身を持つ対空砲が姿を表した。
ドイツのゲパルト自走対空砲である。
「やあ司令官殿、はじめまして。……挨拶の前にまずはあいつを撃ち落せばいいのかな?」
ザ、ゲルマン系な車長が顔を見せる。頼りになりそうだ。
「話が早くて助かるよ。よろしく頼むね」
「了解。目標コカトリス、ゲバルト Feuer frei!」
ゲパルトの砲身がコカトリスに狙いを定める。そして――
ドパパパパパパパ!!
2門の35mm機関砲が一斉に火を噴いた。
弾はコカトリスに吸い込まれるように飛んでいく。
そしてその胴体に多数が命中した。
『コケェェェェ!――』
断末魔とともにコカトリスの体は地面へと落ちていく。
流石は対空砲である。コカトリスを一瞬で撃ち落としてしまった。
Sランクと書いてあったが大したことは無かったな。
「目標の撃破を確認。火器収め」
ゲパルトが射撃を終えて砲身を冷却させている
「うん、流石の威力だね。これからは貴重な対空火力として期待しているよ」
「Guten Morgen、司令官殿。私はエーベルトといいます。これから宜しくお願いします」
「もちろん。こちらこそよろしくね」
エーベルトもロバートと同じく優秀な人材のようだ。
やはり部下に恵まれるのは良いことだ。
――がやがや
後ろの小隊がなんだか騒がしい。
一体何があったのだろう?
そう思っていると、私の隣に若干興奮気味のロバートが走って来て言った。
「司令官、この死骸をフライドチキンにしていいかい!?」
マジか、まさかコカトリスの死骸を見て言う事それ!?
結構でかい顔にでかい蛇の尻尾を持つコカトリスを食べようとなぜ思えるんだ。
それにそんなに食べられないだろう。
「ロバート、何が入っているからやめなさい。さっさと燃やしてしまって」
なぜそんなに悲しそうな顔をするんだロバート。そんなにKFCが食べたいのか。
流石はアメリカ人、といったところかな。
何か食べれそうな普通の動物がいてくれたらいいのだが……
それはまた今度探すことにしよう。
「あっ、燃やしたら焼鳥じゃないか。バレないように食べてしまおう」
ロバートが燃え盛るコカトリスを食べようとする。
しかしダークウルフたちと同じ用に、一定時間燃えると消滅してしまった。
あとに残るのはダークウルフのものよりも少し大きめの宝石のようなもの。
鑑定にかけてみると、これはどうやら魔石らしい。
生命が終わったときに、死体に残留していたMPが結晶となってドロップする仕組みだ。
そしてMPを失った肉体は形を保つことが出来ず霧散する。
コカトリスも倒したことだし、今度こそ神殿に帰ろう。
もう一度俺は部隊に号令をかける。
「よし、全員改めて神殿へと帰還する!」
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