第4話 初めての仲間たち

 なんだ俺、こんなところで寝て……

ん、冷たくで硬い床……だな。ここはどこだろう? というか俺は何をし――


 ――あっ、思い出した! 俺は女神によって転生したんだった。

自分の感覚を見る限り、どうやら俺の転生は成功したようだ。

しかし周りには壁があるようであり、野原にポーンと放り出された感じではない。


 とりあえずここがどこかを探ろう。

女神がくれたスキルの中に地図系のスキルがあったな、それを使ってみよう。

スキルの発動方法は……これで合っているはず。


「【世界地図】、起動……」


 物語で見たように俺は小声でスキル名をつぶやく。

地球上でこんなことを言ったら間違いなく変人認定を受けるであろう。

頼む、これで合っていてくれ……


 ――ヴォンンッッ


 目の前に急に球体型の世界地図が映し出される。どうやら正解だったようだ。

ホログラムのようだが、触ると俺の動きに合わせて回転したり拡大、縮小したりする。

球体では見づらいと思っていると、地図が平面図に変わった。便利だな。


 世界地図によると、ここはアルマーニ海に浮かぶイレーネ島にある神殿の中らしい。

道理でこんなしっかりとした石(?)のようなもので作られた部屋なわけだ。


 後ろを振り返ってみると、あの女神の像といつから燃えているのかわからない松明が2対あった。

女神像は見た感じ鉄のような金属で作られているが、松明の光に照らされている部分だけ淡く虹色に輝いている。

おそらくこの世界特有の金属なのだろう。


 女神像を観察していると、少し違和感があることに気づいた。

何に違和感を感じているのかわからなかったが、よく観察すると何が原因か分かった。

その原因とは――


「なんか女神の像胸盛られてね?本物と全然違う……」


 そう、像の胸の部分が本物より大きいのである。

本人のものを見たときにはDぐらいだと感じたが、これはFカップぐらいあるように見える。

何でそんなことに気づくのかだって? なぜなら俺は本物を揉んだからだ。

何だか像の目が一瞬こちらを睨んだ気がしたが、気のせいだろう。


 胸の大小なんてことをいちいち気にしているわけにはいかない。

とりあえずこの神殿の外に出てみよう。

後ろの松明を1本拝借し、部屋を出て外へと向かうべく扉に向かう。


 部屋を出ていくときに、扉に『転生の間』と書いてあるのを見つけた。

俺があそこにいた状況から推測するに、この世界に転生してきた人が最初に目覚める場所なのだろう。

最初から転生する場所決まっているなら、ベッドの1つでも置いておいてほしかった。

固い床の上で寝ていたせいで腰がめっちゃ痛い。


 【世界地図】を見ながら外を目指す。このスキルは間取りも分かるとても便利なスキルだ。

この神殿は見たところかなり広いので、しばらくはここを拠点に生活をしていこうと思う。

道中、異世界らしく魔物が出てきたりなどしないかとヒヤヒヤしていたが、最後まで遭遇することはなかった。


 いくつかの部屋を通り過ぎ、ついに神殿の出口にたどり着いた。

この扉を開ければ地上に出られるようだ。あぁ、早く外が見たい。

出口の扉を開けた先にはどんな街並みが広がっているのか、オラワクワクすっぞ!


 期待を胸に扉に手をかける。

ぐっと押すと、かなり重たい扉がゆっくりと音を立てて開いていく。


 ――ギィィィィ


 完全に扉が開き、まぶしい光が差し込んでくる。

初めて見る異世界の外の景色だ。

きっと扉の先には素敵な街並みが広がって――


 ――いることはなかった


 一面見渡す限りの平原が広がっていた。

人気は全くなく、風の吹く音だけが聞こえてくる。

……あれ?もしかして人っ子一人もいない?


 確かに【世界地図】に町のようなものは表示されていなかった。

だがこれはあくまで地理的な情報のみが載っているからだと思っていたのだが。

 

 もしかして本当に家が1軒もない無人島なのか?

いや、まだ諦めるわけにはいかない。そうだ!【鑑定】でこの島を鑑定してみよう。


 「――イレーネ島を【鑑定】!!」


 【世界地図】のときと同じくスキル名をつぶやく。

すると脳内に直接声が響いた。


○対象「イレーネ島」 鑑定結果

 自然豊かな島。島を東西に分けるように山脈が走っている。無人島。


 あっ……無人島だ。人なんて1人もいないわ。

この雰囲気じゃもはや動物さえいないんじゃないか?

流石にそんなことはないか。ははっ。


 ――ガサゴソ


「ん?」


 ガサガサッ!


 目の前の草むらが突如大きく揺れだす。

しばらくすると、草むらの中から1匹の真っ黒なオオカミが出てきた。

もしかして友好モブ? いや敵モブだろうなぁ。涎ダラッダラ垂らしているし。

得体のしれない生き物はとりあえず鑑定!


「――あのオオカミを【鑑定】!!」


○対象「ダークウルフ」 鑑定結果

 Aランク相当の魔物。頭がよく、集団で獲物を狩る。


 鑑定結果を見ながら、これがどういったものなのかよく分からず少し混乱する。

そもそも地球上に魔物なんてものは生息していなかった。


 だかこういった類の生物は既に異世界ものも物語で予習済みだ。

読んできた物語の中だとAランクは強い、初心者には絶対に勝てない魔物であることが多かった。

この世界も例外がないのだとしたら、おそらくかなり強いのであろう。

 

 というか……「集団で獲物を狩る」とかいてあるな。

じゃあ他にも仲間がいるってことだろうか? 1匹でも手ごわそうなのに複数匹は勘弁してほしい。

しかし願い届かず――


 ――ガサガサッ


 先程の草むらから、ダークウルフが追加で4匹出てくる。

こちらは1人。あちらは5匹。勝利はおそらく不可能であろう。


 ただ、このまま突っ立っていても確実に殺されるだろう。

となればどうするのか、答えはもちろん決まっている。


「逃ーげるんだよぉ~!!」


 ダークウルフたちに背を向けて全速力で神殿に駆け込む。

重すぎて扉を閉めることができなかったが、神殿には魔物が嫌がる何かがあるのか、ダークウルフたちが中に突入してくることはなかった。


 神殿の扉を閉めている間も、ダークウルフたちは外でずっと吠えている。

口には鋭い牙が並び、大きな爪を持っている様子が確認できた。

あんなものに嚙まれたり引っかかれたりしたらきっと死んでしまうだろう。


 だが神殿の外を探索するにはあの扉の先に進まなければならない。

しかしその過程で必然的にあれらの魔物と戦闘をしなければならない。

だがあんなのどう対処すればいいんだ?対処するためには武器が――


 ――あるじゃないか、武器を呼び出せるスキルが。しかも激ツヨの。

そう、女神からもらったメインともいうべき【統帥】スキルが。

【統帥】スキルで兵士を出してあれらに対処すればいいだろう。

現代兵器であればあれらの魔物にも十分勝算はあると思う。

 

 そうなればさっそく召喚しよう……と思ったが、ふと頭の中を女神の言葉がよぎる。

そういえば召喚にはMPがいるんだったな。

しかし今どのぐらいMPがあるんだ? というかどうやったら見れるの?

あの女神、それらの説明を一切してくれなかったぞ。

まぁいい。こういう時に言う言葉は相場が決まってんだよ。


 異世界ものの定番であるあの言葉を叫ぶ。


「ステータス・オープン!」


 当たりである。目の前にホログラムのウィンドウが表示される。



 ○基本情報 

 ・名前:ルフレイ=フォン=チェスター [神名]

 ・年齢:15歳

 ・性別:男


 ○基本ステータス

 ・MP:100/∞ [ロック中:チュートリアル終了後開放]

 ・装備:SSR 異世界の服[上]

     SSR 異世界の服[下]

     SSR 異世界の肌着

     SSR 異世界のパンツ

     SSR 異世界の靴下[熟成] 

     SSR 異世界の靴


 ○固有スキル 

 ・UR 【統帥】

 ・SSR【世界地図】

 ・SSR【言語適応】

 ・SSR【鑑定】


 ○汎用スキル

  なし


 ○称号

 ・【転生者】

 ・【女神イズンの使徒】



 なになに? ルフレイ=フォン=チェスター……[神名]?

女神に与えられた名前だから[神名]なのだろうか。

特に違いがあるようには思わないが。


 年齢は15歳。あっ15歳なんだ俺。

MPは『100/∞』、ロック中ということは今は100で固定のようだ。

おそらくチュートリアルとやらを達成すれば解禁されるのだろう。


 続いて装備品ね。異世界シリーズみたいな感じになるのか。

SSRといってもただただ転生前に来ていた部屋着なんだがな。

それにしても『異世界の靴下[熟成]』って。確かに2〜3日履き替えてなかったけど。


 次は固有スキルか。

女神からもらったスキルがしっかりと反映されている。

【統帥】スキルだけレア度が違うようだ。

あと汎用スキルというのもあるが、これは1つも持っておらず何を指しているのかわからなかった。


 後は称号なんてものもあるな。

俺が今持っているのは【転生者】【女神イズンの使徒】の2つか。

というか使徒? いつの間に使徒になったんだろう。

……十字光線撃てるかな?

 

 話が脱線した。何だったっけ? そうだ、MPの値だ。

MP100でどれぐらいの戦力を呼び出せるのだろうか。

【統帥】スキルを起動してみる。


――チュートリアル:初めての仲間を召喚しよう!――


 起動するやいなやいきなりチュートリアルが始まった。

これがおそらくスキルボードに書いてあったものだろう。


 ◯お題:MPを消費して、歩兵を50名召喚しよう。(0/50) 報酬:MP上限の全開放


 歩兵を持っているMPで召喚すれば良いんだな。

歩兵を頭の中でイメージすると、歩兵の召喚に必要なMPが表示される。

一人当たり2MPの消費なので、ちょうど50名召喚できる。

では早速召喚してみよう!


「――【統帥】スキル発動。歩兵を召喚!」


 直後、周りが急に明るくなり、次の瞬間……

光が収まり、歩兵が50名が現れた。

腕のマークから推測するに、彼らは元は米国陸軍兵のようだ。

彼らの装備しているM16が、松明の光を反射して鈍く光る。


 彼らの中でも一際がっしりした男がこっちに近づいてくる。

どうやら彼がこの隊(50名なので小隊?)の隊長のようだ。


「俺がこの小隊の隊長のロバートだ。これからよろしく頼むぞ、司令官」


「こちらこそよろしくね」


 ロバートが俺に手を差し出してきた。

俺はロバートとガッシリと握手を交わす。

その手を俺はとても心強く感じた。


 ――チュートリアル:初めての仲間を召喚しよう! を達成。MPの上限を全開放します。

 ――新たな称号【異世界司令官】を入手しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る