第3話 スキル【統帥】

  統帥――それは『軍隊を支配下に置き率いる』こと。

女神は俺に簡単にスキルの説明をしてくれた。

彼女の話から得た【統帥】スキルに関する情報は以下の通りである。


――スキル【統帥】概要――


○MPマジックポイントと引き換えに、望んだ兵器と運用者を召喚する。兵器のみも可能。

○MPは1秒につき1回復する。

○運用者は人に似た形であるが人ではない魔力の塊である。

○運用者は、前世の世界でそれらの兵器を運用していた人の技能を受け継いでいる。

○召喚された兵器は、魔力の塊ではなく本来の素材へと変換されている。

○MPは前借りすることができる。ただし借りた分を返すまでMPは回復しない。

○召喚された運用者は召喚したものに対して忠実であり、召喚者を害することは出来ない。

○召喚された者同士で害しあうこともできない。


 話を聞くに、一度召喚したら絶対忠誠の最強軍隊ができるってことだ。

呼び出すには何を召喚したいかを指定して、それの召喚に必要なMPを消費するだけで良い。

戦車や戦艦、空母に戦闘機。大陸間弾道ミサイルだって出せちゃう。

現代兵器のネックであったコストの問題を見事に解決した素晴らしいスキルである。


  ただ……


「GPS衛星や通信衛星なんかは自分たちで打ち上げないといけないのかぁ」


 そう。GPS衛星などの衛星たちは現代戦を陰ながら支える重要な存在なのである。

彼らのおかげで精密爆撃や無人機などの遠隔操縦が可能になる。

異世界にそんなものが存在するはずもなく、そのような情報網の構築には多大な時間がかかるだろう。

まぁ構築できないのに比べたら全然ましだが。


「なるほど、そこは盲点でしたね。うーん……どうしようかしら」



 イズンが考え込んでしまった。

うなりながらイズンは思考を巡らしている。


――数分後、イズンのうなり声が止まる。考えがまとまったようだ。


「では、それらの衛星をコピー、そしてそちらの世界に同じ物を展開しておきましょう」


 え、マジで言っている?

そうしてくれると転生後の立ち回りがだいぶん楽になるだろう。

衛星網を構築する時間を他のことにあてられる。


「そんなことできるんですか!? いやまぁとても助かりますけれど……」


「私を誰だと思っているの? 創造神にできないことは一つもないわ。追加のギフトだとでも思いなさい」


 神の力って便利なんだなぁ。

【統帥】スキルじゃなくてその力をくれたらいいんじゃね?なんて思っては絶対にいけない。


 こうして女神パワー(?)によってインターネット通信、GPSの問題は解決した。

なんとも都合のいい話ではあるが、ここでわざわざ拒否する必要もないので甘えさせてもらおう。


「あ、あと異世界で生活するのにいるであろうスキルをいくつか追加でつけておくわ」


 まだ追加してくれるのか?

正直これでもう十分だが、もらえるものはもらっておけの精神だ。

さぁーて、何をくれるのかな?


「そのスキルは?」


「【言語適応】、【世界地図】、そして【鑑定】スキルよ」


○【言語適応】:どんな国の言葉でも理解し、会話をすることができる。


○【世界地図】:自分の前に世界地図(球体)を出現させることができる。

        拡大や縮小、平面図に起こすことも可能。


○【鑑定】:指定したものの情報を知ることができる。どんな情報でも基本的に鑑定可。


 どれも地球の異世界系物語では定番のスキルだ。

それもどの作品でもとても優秀なスキルである。


「おぉ、こんなにも優秀なスキルを下さるんですか」


「当たり前よ。でもそれ相応の働きはしなさいよ」


 これだけあれば十分にも程があるだろう。

異世界でも、これだけの有用スキルたちがあれば生きていけるに違いない。


「じゃあ次は、あちらの世界で使うための名前を授けましょう」


 スキルの次は名前をくれるらしい。

しかし名前か、今の名前があるから特段変更は必要ないのだが……

異世界では日本風の名前は変に思われるかもしれないしな。

でも慣れ親しんできた名前をそのままにしておきたい気持ちもある。


「今のままではダメですか?」


「あっちの世界はヨーロッパ風の名前だからねぇ。そっちに合わせた方がなじむかと思って」


 やはり定番通りヨーロッパ風の名前なのか。

まぁ心機一転ということで良いかもしれないな。

それに大抵の場合、ヨーロッパ風の名前は格好良く聞こえるものだ。


「あと創造神直々に授ける名前だからね、大事にしなさいよ」


 俺は女神の言葉にうなずく。

確かに、神から直々に名前をもらうという行為は名誉なことなのかもしれない。


「どんな名前が良いかしら? ギンギン=シコルスキー? いや、ムチム=チダイスキー?」


 いやセンスよセンス。どうやったらそんな名前が思いつくんだ。

アレなジャンルの同人誌に出て来るモブキャラの名前みたいじゃないか。

本当に神なのか疑わしくなってしまうぞ。


 とにかくそんないかがわしい名前はゴメンだ。

どうかちゃんと考えてくれるようお願いしよう。


「お願いですので真面目に考えてください(切実)」


「う~ん……真面目にねぇ。ルフレイ……ルフレイ=フォン=チェスターなんてどうかしら?」


 なんだ、真面目な名前も考えれるじゃないか、最初からそれで良いんだよそれで。

どうして最初にあんな方向に曲がってしまったんだ。あれが女神の地の顔なのか?


「おぉ、かっこいい名前で良いですね。あと真面目だし」


「ふっふっふ。もっと創造神を讃えなさいっっっ!」


 こういうタイプの人間(神)は褒めておけばいいだろう。

俺は感情のこもっていない声でイズンを褒める。


「ワァースゴイデスネーパチパチー」


「フハハハハ!」


 ダメだこいつ。イカれてやがる。

でも『ルフレイ=フォン=チェスター』か。うん、気に入ったぞ。

いかにも異世界の貴族って感じの名前でかっこいい。


「では次で最後ね」


「まだやらないといけない事があるんですか?」


「そうよ。あと残っているのはあなたの新しい肉体の創造ね」


 新しい肉体を創造神が直々に創ってくれるのか。

『Made in 創造神』は特別感があって良いな。

もしかすると神話のように粘土をコネコネする姿が見れるかも。


 そんなことを考えていると、突然辺り一面が強い光に包まれた。

なんだ、何が起きたんだ?


「はい。出来たわよ、あなたの新しい体。」


 女神の前に現れた若い男の肉体。

これが俺の新しい体か。これは……


「おぉ、前世よりも若返っていて、しかもなんだがめっちゃイケメンに仕上がっている!」


 前世の俺の面影は一切残っておらず、男でも無条件でイケメンと認めてしまうほどの美男子が出来上がっていた。

さらに肉体も15歳ほどに若返っており、肉体はいたって健康そうだ。

この姿が女神の趣味なのだろうか? まぁどちらでもいい。


「喜んでくれたようね。なら良かったわ。これにて転生の準備は全て完了よ。何か質問はある?」


「特にありません」


「分かったわ。行ってらっしゃい。あの世界を宜しくね」


  約束は守るよ。……たぶん。

守らないで天罰でも落とされたらたまったもんじゃないからな。

それにこれだけのスキルを得たなら案外簡単に達成できるかもしれないしな。


「良い異世界ライフを」


 その女神の言葉を聞きながら、俺の意識は段々と薄れていった。

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