第3話
「なにこれ」
私が村に着くと一面に炎が広がっていた。
見慣れた家や畑は跡形もない。
ところどころに焼死体が転がっている。
「うっ......。リリア達を探さないと。」
吐き気を抑えながら村の中を駆け回る。
炎と煙で位置関係が分かりづらく自分の家にたどり着けない。
「生き残りがいたとはな。」
しばらくさまよっていると、想定外の方向からから声をかけられる。
声の主は私の頭上高くを浮遊していた。
この場所に似合わない燕尾服を身にまとい背中にはドラゴンの翼。
赤い肌に燃えるような赤い瞳。
そして3メートルは超えるだろう巨体、私はこいつを知っている。
「魔人イフリートッ!」
「ほう、我を知っているのか」
主人公ラウドの因縁の相手であり魔界六将が一人、
火をつかさどる魔人の姿がそこにあった。
(因縁......?)
そこで、主人公のプロフィールを思い出す。
『魔族によって滅ぼされたとある村出身』とあった。
(まさか、それがここだったなんて)
私が知らなかったのも無理もない話だ。
なぜなら、ゲーム開始地点でこの村は存在していなかったのだから。
「貴殿が予言の者なのか。」
「えっ?」
「予言があったのだ、遠い未来に我らが主を滅ぼすものがいると」
間違いなく主人公のことだろう。
しかし、私はそれらしき人物を見たことがなかった。
大きな村ではなかったのでひと月もあればほぼすべての村人と交流できる。
ラウドのように目立つ人物であれば記憶に残る。
「村違いでは?」
「間違えるものか、予言は絶対だ。」
「見逃してくれたりはしないよね」
「無理だな、予言で誰かわからない以上は皆殺しと決めている。」
わずかな希望にかけてみたが無駄なあがきだったようだ。
どうやらここで覚悟を決めるしかない。
(ゲームシステム通りなら可能性はゼロではないと思う。)
私は少なくとも情報戦では勝っている。
あとはステータスの出目次第。
「やるしかないようね。」
「覚悟は決まったな、いくぞ」
(ステータスッ)
戦闘開始とともに自身の能力を確認する。
すべてはここにかかっている。
【ステータス】
HP:250
MP:60
魔攻:400(±0)
魔防:600(±0)
物攻:20 (±0)
物防:50 (±0)
速度:60 (±0)
(終わったわ)
イフリートは魔攻が高く物防が極端に低い。
理想のステータスは魔防500以上、物理700以上だった。
(魔法も覚えていないから、せっかく良乱数を引いている魔攻も無意味だし......。)
(せっかく、好きな世界に転生できたのにあんまりだ。)
こうなったのもすべてあの神様のせいだ。
もし、もう一度出会うことがあるならぶん殴ってやりたいところだ。
いくら何でもひと月でデッドエンドになるのはクソゲーすぎる。
チート能力の一つでもくれていれば助かったかもしれないのに。
(ん、そういえば。)
「どうした、戦う気がないのか?なら、こちらからいくぞ。」
イフリートが片手をあげると魔法陣が出現する。
魔法陣の前に炎が凝縮され巨大な光球となる。
「散れ。<
手を振りかざすと光球が私に向かって飛んできた。
大きさ的によけようがなく直撃コース。
こうなったら、一か八か。
「<
神様がくれたゴミスキルを使用する。
お茶会ができるだけのスキルなのだが、茶菓子等は用意してくださいとある。
つまり、私が必要であると判断すればお茶会に持ち込めるということだ。
結果がどうあれ、あの神様を巻き込めるならば願ったりかなったりだ。
次の瞬間、世界が白く染まっていく。
◇
目が覚めると白い世界が広がっていた。
最初に神様であった空間である。
前回と違う点を挙げるとすれば。
「ここはどこだ......。」
私以外に客人がいるということだ。
イフリートは困惑しつつ私と対峙する。
「貴様がやったのか?」
「そうよ。」
「空間魔法の一種か。驚きはしたが、だから何だというのか?」
彼は再度手を上げ魔法を行使しようとする。
しかし、先ほどと違い魔法陣が出現しなかった。
「魔法が使えないだと!?だったら――。」
魔法が使えないとみると、イフリートは拳を握り振りかぶる。
物理防御力皆無の私ではワンパンに違いない。
(やっぱり、あんま意味ないじゃんこのスキル)
「お痛はメッですよ~☆」
どこからともなく声がする。
死を覚悟していたが、魔人の拳は私の体の数センチ前で止まっていた。
正確には私と拳の間に光の幕ができている。
光の幕は収束していき手の形を形成していく。
そこから腕・体と人の形を形成し金髪巨乳のお姉さんが出現する。
今回はちゃんと服を着ていた、バニースーツだが。
「神様ありがとぉぉぉ!」
私は大粒の涙を流しながら抱き着く。
誰だ、こんな聖人をぶん殴るといったのは。
「あらあら、甘えん坊さんね~☆」
神様は私を抱き返してくれる。
ほんわりと良いにおいもするし全体的に柔らかい。
「今回はお茶菓子用意したからぁ☆」
そういって神様は何もない空間を指さす。
そこに突然テーブルとお茶菓子が出現する。
「あなたは、まさか。」
そんな中、イフリートは驚きの表情をしていた。
まるで存在しない幽霊を見たかのようだ。
「ラミちゃんは元気にしてる~☆」
(ラミちゃん、誰だろう?)
それよりも神様は、なぜこの魔人と面識があるのだろうか。
そこがわからない。
私が知らないということはゲーム外の設定だろうか。
神様も彼と話したい様子なので気を聞かせてお茶菓子がある席に向かう。
決してお菓子が食べたい欲に負けたわけではない。
移動する際に少しだけ会話の内容が聞こえた。
「はい、お転婆ですが元気にしております。」
「よかったわ~☆それだけが心残りだったのよね☆」
「そういえば、最近上級魔法を覚えましたよ。」
「まあ☆」
「それと...。」
テーブルについてお茶菓子を堪能する。
向こうでは神様と魔人の談笑が続いていた。
さっきまでの命のやり取りがあったとは思えない。
だが、私は知っている。
あれが魔人イフリート本来の姿だということを。
本来、六将軍きっての穏健派であり無意味な殺生は好まない。
だからこそ命乞いをしてみたのだ。
(まあ、命乞い失敗してしまったようなんだけど。)
会話が終わったのだろうか。
神様とイフリートがこちらに向かってくる。
「すまなかった。」
「ふぇっ?」
急にイフリートが頭を下げた。
驚きのあまり変な声が出てしまう。
「許せとは言わない」
「村のこと?」
「そうだ、大勢殺してしまった。」
「許せるわけがないよ、普通なら」
「普通ではないのか?この空間を作れる時点で普通ではないか。」
普通であれば許せないだろう。
だが、私は普通ではない転生者なのだ。
この世界で過ごした時間はひと月に過ぎない。
なので、あの村の誰よりも人間関係が希薄だ。
(思い入れが全くないというわけじゃないけど。)
「私はあなたを許そうと思う。
まあ、許さなかったとしてもどうにかなるわけでもないし。」
「感謝する。だが、許せないのであればいつか我を殺しに来てもかまわない」
「勝てると思う?」
「それは手段次第だと思うがな。」
「そろそろ時間よぉ~☆」
神様が急に話に割って入る。
どうやら残り時間が少ないようだ、体の輪郭がぼやけ始めている。
イフリートもそれを察してか少し悲しそうな表情をしていた。
「そういえば、名前を聞いていなかったな。」
「私はリリム。次があるかわからないけど。」
そこで白い世界が暗転し元の空間へと引き戻される。
変わらずあらゆるところで炎が上がっていた。
「リリムか良い名だ。もし、...なら主を...に.......」
バタン。
疲労からか元の空間に戻ったとたん倒れこむ。
なので、彼の最後の声がうまく聞き取れなかった。
聖剣を求めて ~ 美少女たちとXXXするために 聖剣が必要なんですっ! ~ もがみ @Moga3
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