桃太郎(大根ゆん朗読配信ver)

ユークリウッド

第1話 桃太郎

 桃太郎

 作Eucliwood


 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

 おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。

 おばあさんが川で洗濯をしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。

「おや、これは良いおみやげになるわ」

 おばあさんは大きな桃をひろいあげて、家に持ち帰りました。

 そして、おじいさんとおばあさんが桃を食べようと桃を切ってみると、なんと、中から元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました。

「これはきっと、神さまがくださったにちがいない」

 子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、大喜びです。

 桃から生まれた男の子を、おじいさんとおばあさんは桃太郎と名付けて大事に大切に育てました。



 それから三年、

モモ「おいクソババァ、朝飯はまだなのか? クソジジィもさっさと働いてきやがれってんだ」

 桃太郎はスクスク育って、やがて強い男の子になりました。

「どうしてこんな子に育ってしまったのじゃろうか」

「いいじゃないですか、元気な子でとっても幸せそうだわ」

 唯一の働き手であるおじいさんは、残り少ない余生に嫌気をさしながらせっせと身支度をします。

 おばあさんの方は、クソと呼ばれてたのに桃太郎と笑い合っていて幸せそうです。

モモ「俺に前振りはねぇ、最初から最後までクライマックスだ」

 カメラに目線をあわせて、桃太郎は言い続けます。

モモ「まぁ飯はご馳走だったらいつでもいいか、今から決まり事を言うからな?」

「なんなんじゃ~」

 おじいさんは頭を抱えて聞きます。

モモ「お前の望みを言え、どんな望みも叶えてやろう、お前が払う代償はたった一つ」

 すっかりグレてしまった桃太郎におじいさんはほとほと困り果てました

「あ、悪霊退散」

モモ「なるほどな。鬼ヶ島(おにがしま)へ行って、わるい鬼を退治してくるぜ」

 その言葉を聞いたおばあさんは、涙を浮かべて大手をふります。

「なんて勇敢ないい子に育ったんだろう、いますぐごちそうを作って旅の資金をととのえてあげるわね」

 そして、おばあさんにお財布を腰に付けられ、伊勢海老のパエリアと黒毛和牛のローストビーフを作ってもらうと、さっそく鬼ヶ島へ出かけました。



 旅の途中で、怪獣カネゴンに出会いました。

「桃太郎さん、そんな大荷物でどこへ行くのですか?」

モモ「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ、まったくだるすぎだぜ」

「それでは、お腰に付けたお財布を1つ管理させてくださいな。おともしますよ」

 カネゴンはいやらしい目つきで頭を低くしながら申し上げます

モモ「そうだな、腰につけてたらいつかスられるのがオチだぜ、マネジメント任せたぞ」

「へっへっへっ」

 実はカネゴンは優秀な詐欺師でした、その美貌とやさしさに何人騙されたことか。

 桃太郎が鬼たちと必死に戦ってる間にとんずらしてお財布を持ち逃げしようという魂胆でした。

 それを見通すこともできずに、まんまとお財布を任されて、桃太郎のおともになりました。

 さてさて、中身をしめしめと確認して、まずは欲しかったロールスロイスを仮契約します。



 そして、こんどは怪獣ツインテールに出会いました。

「桃太郎さん、そんないい匂いでどこへ行くのですか?」

モモ「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ、おっとそろそろお昼だな」 

 おばあさんに作ってもらったごちそうをテーブルに置いていただきます!をします。

「それでは、その伊勢海老を1つ下さいな。おともしますよ」

 とってもお腹が空いていたツインテールは涎を垂らして伊勢海老のパエリアを下から見つめて、上から二本の触手を伸ばします

モモ「1つだと?てめぇなんぞにご馳走を分けてやる腹なんてねぇな」

 黒毛和牛を口に含みながら、桃太郎はめっちゃ怒ります。

「そんなこといわずにどうか、このままではあなたの赤い足まで海老に見えて噛みついてしまいそうです」

 ツインテールがあまりにもしつこいので、桃太郎は仕方なく伊勢海老のパエリアの伊勢海老だけを分けてあげました。

モモ「どうだ? クソババァの飯はうめぇだろ?」

 ツインテールはうんうんと顎を地面にこすり、頭の上で伊勢海老の殻を二本の触手でしゃぶりながら、桃太郎のお供になりました。



 そしてこんどは、宇宙電磁怪獣ゲバルガに出会いました。

「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」

モモ「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くんだ、ほら、あの島に用があんだよ」

 桃太郎が指さす海の先にはおぞましい鬼の形の山をした、島が見えます。

 あれが鬼ヶ島。

 もう目と鼻の先ですが、夕日が地平線からまた明日と覗いてます。

「それでは、インターネットと電話回線の契約を弊社に任せてくださればお船を出して、おともしますよ」

モモ「なんだそりゃ、いらねぇのがついてるぞ」

「今ならキャッシュバックで5万円、さらにクルージング代金から2万円値引きしますよ」

 お金のことはよくわからないので、カネゴンに相談します。

モモ「どうなんだカネゴン?」

「いい話ですが、鬼を退治した後、高額な月額料金がかかると思います、ここはクーリングオフをうまく使いましょう」

モモ「あんだそりゃ」

「契約書面を受け取って8日以内に、電話または書面による解約の申し込みをするのです。大丈夫。私が全部手配しますのでさっさと仮契約して島に渡りましょう!」

 ゲバルガとカネゴンの話し合いが終わると、豪華な宇宙船に案内されて、スマートフォンをもらった桃太郎は感心しました。

 ゲバルガが最後に契約者様ご本人に何か言います。

「何かありましたら私にお電話ください、サポートは万全です」

モモ「ここに電話すりゃいいんだな、援護頼むぜ!」

「お任せください」



 こうして、カネゴン、ツインテール、ゲバルガの怪獣仲間を手に入れた桃太郎は、ついに鬼ヶ島へやってきました。

 もう夜は深く、いい子は寝る時間です。



 後半です、休憩タイム。



 鬼ヶ島では、悪い鬼たちが近くの村からぬすんだ宝物やごちそうをならべて、酒盛りの真っ最中です。

モモ「俺!参上!」

 桃太郎は先陣をきって、宴の席に殴り込みばったばったと鬼の手下たちを刀で切り殺しました。

 手下の一人が桃太郎の姿をみて驚きます。

「あなた様はモモタロス! あの日桃に偽装して村に送り出した大鬼様の息子なのです! 我々の目的を忘れてしまったのですか?」

モモ「あん?」

 桃太郎はそういえば自分の姿や行動は周りの人間たちと違うまるで鬼のようだと気付きました。

モモ「そんなもの覚えてねぇな」

「今からでも人間たちを滅ぼすことはできます、どうか我々と……ぐはぁ!」

 命乞いをする鬼に向かって桃太郎は刀を振りかざしました。

モモ「ていうか、俺はこういうのがやりたくて来たんだよ、相手は関係ねぇ!」

 桃太郎の暴走にカネゴン、ツインテール、ゲバルガの仲間たちもクルーザーの上から困惑です。

 どんどん鬼たちが集まって来て桃太郎を囲みます、一対千の戦いの様子でした。

モモ「忘れてたぜ、俺! 変身!」

 桃太郎の姿が戦闘フォームへ変わりました。

「たった一人で反逆とはバカか! やっつけてしまえ!」

モモ「いっとくが俺は、最初からクライマックスだぜ!」

「みんな、ぬかるなよ。それ、かかれ!」

 カネゴンは宇宙船をジャックし舵を百八十度まわして、ツインテールは上陸して鬼たちのごちそうを頬張り、ゲバルガはお得意の電子戦でEMP攻撃を始めあらゆる通信を途絶させ使用不能にしました。

モモ「雑魚に用はねぇ! 親玉を早く呼んできやがれ!」

 そして桃太郎も、刀をふり回して大あばれです。

「通信以前使用不能! 状況はどうなっている!? なに、突破されただと!?」

 口伝いに戦況を確認する鬼たちは、とうとう潮時と、親分を呼びます。

 それまでにたくさんの骸が出来上がりました。

 ひろう骨も燃え尽きて、濡れる肌も土にかえる、荒野を走る死神の列、黒く歪んで真っ赤に燃える。

 ちゅどーん!

 大きな破壊音を背に、桃太郎たちの乗ってきた宇宙船が真っ二つに割れて、間に一つ目の大きな鬼が現れました。

「戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ」

 そう言って、敵の戦艦から潰した賢い鬼の親分はみんなから、ズゴックさんと呼ばれて頼りにされてます。

モモ「てめぇが親玉か随分とでっけぇな」

 桃太郎は飛んでくるカネゴンを乱暴に受け止めて刀の切っ先を向けます。

モモ「いくぜ、俺の必殺技パート2」{穏やかに言う}

 刀が赤く光ると刀身だけ飛んでいき、それは回転してズゴックを切りかかっていきます。

 それは桃太郎の振りかざす刀に合わせて厚い装甲を容易く切り裂き丸裸にします。

モモ「決まったぜ」

 とうとうズゴックさんが、

「まいったぁ、まいったぁ。こうさんだ、助けてくれぇ」

 と、手をついてあやまりました。

モモ「反省したか? そんじゃもう悪いことするなよ?」

 桃太郎は最後にデコピンをして、仲間たちに戦いの終わりを告げます。

 乗ってきた宇宙船が壊れてしまったので帰りは明日になりました。



 帰りのお船の上で、桃太郎たちはこれからのことを言い合ってました。

「わたしにとって桃太郎さまは命の恩人です、あの時受け止めてくれなかったらわたしは頭を打って死んでました」

 とカネゴンは桃太郎を心から慕っているようです。

「鬼たちのごちそうよりおばあさんのごちそうの方がおいしかったなぁ」

 ツインテールは超一流のイタリアンシェフであるおばあさんに興味があるようです。

「それでは、お家の光回線工事を手配いたしますね、相当田舎のようですので電柱を建てる工事が必要かと……」

 ぶつぶつとゲバルガは言ってて頭を抱えてます。


モモ「てめぇら、家にまでついてくる気かよ! まぁ賑やかな方が楽しいか!」


 桃太郎とカネゴンとツインテールとゲバルガは、鬼から取り上げた宝物をロールスロイスにつんで、がっはっはっと元気よく家に帰りました。

 ~めでたしめでたし~

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桃太郎(大根ゆん朗読配信ver) ユークリウッド @Oogami

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