第3話 キャプテン(仮)

 昼休み、バレー部の何人かで4組に集まって弁当を食べる。購買とか食堂とかあるけど僕はあんまり行かない。僕の高校は敷地が広く、比較的他の高校より生徒数も多いから食堂は図書室とか自習室がある第2棟にある。だから教室からはちょっと遠いし(実際はそんなに遠くないし結構近いのは内緒)購買とかに買いに行くのも面倒だし、普通に足りない。今、弁当を一緒に食べてるやつらも同じこと思ってる。去年、このメンバーで初めて学食を食べたとき全然足りなくて午後の授業がしんどかったことがあったからだ。でも本当にごくたまに行くときもあるけど。


 「そういえばさー 昨日、帰り際に監督から2年生に伝えとけって言われたんだけど、再来週の2年生大会のキャプテン考えとけって。この大会で次のキャプテンが決まるわけじゃないからじゃんけんとかでも良いってさ」

 今話してるのは仲瀬拓也なかせたくや。陵との会話のテンポ感が合っていて陵と共にバレー部2年のムードメーカー。妹と2人弟がいるので面倒見がほんとに良い。多分、キャプテンも拓也になるだろう__

「だよなっ!優」

「...な、にが?」

「だからー、2年生大会んときのキャプテンだって」

「あー、拓也とか向いてそうだよな」

「拓也が優がキャプテンに良いんじゃないかって言い出したんだぜ?聞いてなかったのかよー」

僕のこと言ってたのかよ...

「そうだそうだ、俺が言ってたの聞いてなかったのかよー」

「なんか、ごめん、でもなんで僕、、」

陵は拓也のせいみたいに言ってるけど2人で口裏合わせたと思う。

「俺も優くんが良いと思うな」

彼は星谷樹ほしや いつき、名前からして女子でも違和感はないしかっこいいし可愛い。見た目もそうだ。バレー部の中では小柄なほうで目も丸くぱっちりとしていてバレー部の姫的な扱いをたまに(冗談でだけど)される。とりあえず一旦この話題を終わらせたいから何かしら話そう。

「あー、えーっと、他のやつらにも聞かなくていいの?僕ら4人で決めなくても良いじゃん?拓也だってほんとはやりたかったりするんじゃないの?」

「いや俺は副キャプになった。それに、キャプテンどうするかってのは先月の合宿のときに優以外の2年で集まってるときに話した」

「なんで僕以外で集まってんだよ誘えよ、、」

僕もみんなが集まるなら混ざりたいよ。

「いや、誘うも何も、樹に女子役やってもらって誰が1番上手い告白できるか大会しようぜって言ったのに”僕は良い、寝る”って言うから」

前言撤回。自分で断ってた。

「なんでその大会からキャプテンの話になるんだよ」

木谷きたにが告白のときに”俺、バレー部のキャプテンになったんだよね...”みたいなこと言い始めたから、付き合うことと関係ないしそもそも木谷にキャプテンが務まるわけないだろってとこから雅光が良いんじゃないかって、だよな陵、樹」

だったらすぐに言ってくれても良いだろ、と思った。あと、その告白大会みたいなやつやったんだ。

「っていうか優くんはなんでそんなにキャプテンやりたくないの?」

まあ、そう言われれば絶対にやりたくない理由はない...でもいくら2年生大会だとしても全国大会はないけど県大会まであるから、”強豪校の2年”としてある程度の注目は浴びるだろうし、何より責任を感じたくない。

「優、思い浮かばないんだろ」

陵はニヤニヤしながら言ってきた。

「ち、違うしっ」

「優、大丈夫だ、未来の副キャプテンがサポートしてやるぜ!」

そんなやる気あるなら拓也がキャプテンやれよ...

 結局僕がキャプテンをすることになった。まあ地区主催だから2日間だけだしこのくらい平気(と思いたい)。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うたた寝と月 Marshmallow Bunny @blue_hour_ghosting

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ