第2話 周囲

 先月席替えをして、僕の今の席は窓側の後ろから2番目。授業中の教室の様子がよく見える。真面目に授業を受けてノートをとっている人。授業を受けようとしている姿勢は見受けられるが睡魔と戦っているような人。次の授業の小テストの勉強をしている人(これは僕もよくやる)。恐らく先生に気づかれているが隠れてスマホを開いている人。

 だいぶ前に陵から言われたのだが、僕はよく周りをぼーっと眺めているらしい。確かに間違ってはいないかもしれないと自分でも思う節はある。待ち合わせとか電車の中ではスマホをずっといじって待つより、その時の気分に合ったプレイリストを選びイヤホンで音楽を聴きながら外の景色を眺めたり電車に乗っている人々を見て過ごすほうが多いし、そっちの方が好きだ。これからこの人はどこに行くのだろう、この家族は買い物帰りで父親が荷物持ちにされているのだろうか、とか考えると結構面白い。


 4時間目の体育は天気が良くてグラウンドで自由に好きな競技をした。体育館も使えたらバレーをやってただろうけど友達に誘われたのもあって僕はサッカーにした。走るのが嫌な訳では無いが疲れるからキーパーをやりたかった。まあ、キーパーやりたいなんて言わなかったけど。ジャン負けがキーパーをやることになってここでジャンケン強いことが不利に働いてキーパーはできなかった。楽しかったし2回ゴール決めれたから良かったかも。


 「まって、先週マツパしたばっかなのにもうカール緩くなってんだけどー」

「それで下がってるとか贅沢すぎー、うちなんてマスカラだよ?下まつ毛は朝時間なくてサボったから違和感エグいんよ」

the女子って感じの会話だ。

「前髪やばくない?」

「あー、体育の前と比べたら崩れてるかもね。アイロン使う?」

「え、まじ?サンキュッ」

ヘアアイロンって持ち運ぶものなのか?そういや陵のやつ、僕の単語帳2時間目に古典終わったらすぐに返すみたいなこと言ってたような...まあ、弁当食べるのに陵のいる4組に行くつもりだったし良いか。

「昨日弟の野球の大会連れて行かれてさー、めっちゃ日焼け止め塗ったりしてたんだけど_」

 ドンッ

席が僕の隣の男子、玉木のリュックに足が引っかかって立ち上がった僕とぶつかった。僕の不注意だ。

「いっった...ってごめん!」

「まあ、僕は大丈夫だけどそっちこそ平気なの」

「うん、大丈夫〜!心配ありがとね、あ、これチョコあげる」

「え、あ、うん、ありがとう」

絶対に今彼女が謝る必要はなかっただろう。謝るべきは僕だったのにびっくりして思わずクールぶってしまった。僕とぶつかった彼女は今週週番の加藤。僕の右斜め前の席だ。誰にでもフレンドリーで先生からも好かれていて今みたいにお菓子を持っていてよく周りの人に渡している。って、4組に行こうとしてたんだった。


 「なんかさー清原くんってあんまり目立たないけど隠れイケメンじゃない?」

「わかるー!頭良いしさっきの体育のサッカーとかめっちゃ活躍してたし」

「2点くらい決めてなかったっけ?めっちゃ足速くてびっくりした」

「まじ?見たかったわー」

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