第2話 レヴェルク

 

「ロンベルクくんさ」

 

 道中、ブルーノは退屈なのか朗らかにヴィクトルに話しかけ続ける。

 

「何です?」

「キミはどんな作品レヴェルクが得意なんだい?」

「それは……」

 

 ヴィクトルがアルブレヒトから学んでいる──と言うよりも見ていると言った方が正しいか──のは、椅子やテーブルに食器棚と日用品が主である。

 だが、これらはヴィクトルの得意とは合致はしていない。

 

「……まだ、分からないですね」

 

 興味深そうな目をして見てくるブルーノから視線を外して答える。

 嘘を吐いてる。

 直ぐに分かるが、ブルーノは「まあ、そう言う事もあるよね」とうんうんと頷く。

 

「因みにブルーノさんは?」

「ボクはね〜……杖とか箒だね。手に持てる範囲で木製の物が殆どだ」

「箒って言うと……空飛ぶ箒とかですか?」

「そうそう。乗った事とかある?」

「かなり低空でしたし、低速でしたけど。結構コツが必要だった気が……」

 

 ヴィクトルの言葉にブルーノは苦笑いを浮かべる。

 

「だね。レヴェルクだから馬みたいなモンだよ」

 

 それが空を飛ぶ時に振り落とされるかもしれないとなれば高速高空移動など出来るはずもない。

 

「画期的な発明かと思ってボクも乗っかったけど、あんまり売れなかったね。正直、ボクとしてももう少し家具とかの方が適性あったら良かったと思ってるよ」

 

 得意と好きは必ずしも合一しない。

 

「そうなんですか?」

「そう。ボクね、本棚とかタンスとかさ。そう言うのが造れた方が嬉しいんだよね」

「……俺も、分かります」

 

 家具が作りたいという気持ちが。

 ヴィクトルもアルブレヒトの様にやりたいと思うのに。適性の問題か、家具には一向に生命が宿らない。

 

「だよねだよね! あ〜、羨ましいな〜」

 

 ヴィクトルは地図を広げる。

 

「……これもレヴェルク?」

 

 ブルーノが上から覗き込む。

 

「ん、現在地も表示されてるし、これもレヴェルクだね。キミの先生も親切だ。レヴェルクの地図を渡すなんて」

「…………」

 

 ヴィクトルも確かにと思い、黙り込む。これはアルブレヒトの適性ではない。わざわざ何処かで購入したんだろう。

 

「で、王都までは……歩きだとだいぶ掛かる。次の町で馬車に乗せてもらおうよ。ボクは元々その予定だったし」

「そうですね」

 

 アルブレヒトに渡された路銀も馬車に乗る事を計算に入れているのか、それなりに入っていた。

 

「────いやぁ、無事に乗せてもらえたね」

 

 町に着くと直ぐに馬車の御者と話し、問題なく乗せてもらえる事になった。

 

「言っておきますが、ブルーノさん。金は出しませんよ」

「あ、あはは。その点は大丈夫さ。用心棒として乗せてもらう事になったから。このレボルティーズ見せたら、快く頷いてくれたよ」

「そうなんですか」

「レボルティーズ持ちの用心棒ほど心強いのはないって」

 

 先程の盗賊の反応からしても。

 恐らく野獣に対しても効果を発揮するだろう。

 

「……それにボクは野獣との戦い方も分かってるしね」

 

 ブルーノは自信がある様で、この言葉を信じても良いだろう。

 

「森を通りますよ〜! ブルーノさん! 野獣が来た場合はお願いしますよ!」

 

 御者の言葉を聞きブルーノは外に乗り出す。

 

「言っておくとね、レボルティーズは生命ある装具だから……これが一番効率的なのさ!」

 

 ブルーノは外套を広げ、内側から複数のナイフを空中に投げる。

 

「こうして展開すれば自動的に迎撃してくれる。撃ち漏らしはボクがサクッと」

 

 言いながら腰の剣を抜く。

 

「……これがレボルティーズでの正しい闘い方だよ、ロンベルクくん」

 

 ナイフが反応した。

 野鳥が地面に落ちる。胴体を深く切り裂かれていた。

 

「…………」

 

 ナイフは的確に向かってくる野獣のみを切り裂いていく。御者はそれを信頼し馬車を走らせる。

 

「いや〜、助かります」

「ははは、馬車に乗せてもらってるからね」

 

 ブルーノは爽やかに告げた。

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生命の職人〜彼らの手には魔法が宿る〜 ヘイ @Hei767

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