最終話 : いっしょに。

 エアデ王国に戻って一週間が過ぎた。

 クレーエンはラメッタの家に住む。

 クレーエンは、朝早く目を擦りながら水を飲むために一時的に起きた。


 こそこそと黒い影が。


 クレーエンは背中に手を置く。

 魔剣は寝室だった。

 まだ日が出ていない早朝に一体何が。

 クレーエンが外に出ると、ぎくっとその影が揺れた。


「ラメッタ、何してる?」

「あはは。聞いて驚くな、世界樹に忍び込んでバオムで考えた実験じゃ! クレーエンと一緒に不老不死やもん、ラブラブやもん」

「ラブラブってなんだよ。その話は許可が出るまで待つって話じゃなかったか? 魔法使えるようにするって名目で入れるようにするから」

「遅いのじゃ。それにな、暴走してるし大抵のミスは世界樹に影響ないと言ったんじゃが、怒られて。絶対駄目って」

「それはそうだろ!?」


 世界樹に魔法薬をかけて暴走させた当人が言うことではない。


「わしはクレーエンが老いる前に開発しないとなのじゃ」

「そんなすぐ老いない。それに、ラメッタはそんなに苦戦するつもりなのか?」

「すぐ作ってやるわい! じゃが、クレーエンの気が変わるかもじゃろ」

「変わらな。言ったろ、一緒にいてやるって。許可をもらって堂々とやっても大丈夫だ」

「そうか。分かった。寝る」

「そうしよう」


 ラメッタは室内に戻ってきて。

 隣の部屋でふわふわな寝巻きに着替えて出てくる。

 水色の腹は薄赤色のショートカットヘアに合う。


「じゃあ、俺は寝るから」

「うむ」

「どうして付いてくる?」

「わしの家やもん。わしの勝手じゃろ!」

「……、一瞬納得しそうになった」

「置いていくの?」


 ラメッタは円らな瞳で上目遣いをする。


「分かった」

「えへへ」


 寝室に入る。 

 横になると、ラメッタも布団に入る。


「俺は寝るぞ」

「ああ。……クレーエン、起きてる?」

「ああ」

「何度も、何度も、何度も。信じてくれてありがと」


 ラメッタはクレーエンに背を合わせるような向きへ変えた。


「寝たか? 静かやし」

「答え方分からないし恥ずかしいんだよ、全く」

「そうじゃったか。つまり好き?」


 クレーエンは黙る。

 ラメッタが寝息を立てると、クレーエンはゆっくり目を閉じる。


 誰にも聞こえない声で。


「ラメッタ、お疲れ様」


 その声は優しくて柔らかいものだった。



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世界樹を暴走させたマッドサイエンティスト、死刑だけは嫌だとごねる! アメノヒセカイ @WorldONRainyDay

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