あとがき:シャルル七世のプレジャーズ・オブ・ライフ

シャルル七世のプレジャーズ・オブ・ライフ(1)快楽について

 各時代の歴史家たちの「シャルル七世」というべき印象について、長々と書いてきたが、共通する印象のひとつに「快楽にふける」というものがある。享楽的、快楽主義者だとも。


 一般的に、この言葉からどんなイメージを思い浮かべるだろう?

 シャルル七世の愛妾アニエス・ソレルの存在と重ね合わせて、肉欲的・性的快楽におぼれる、いかがわしい印象を思い浮かべる人もいるかもしれない。


 なお、原語のフランス語は、plaisir/plaisirs(プレジール)。

 『歴史家たちのポジショントーク』の引用文ではなんと15回も登場する。


 シャルル七世は矛盾だらけ……、いわば多面的な顔を持っているが、快楽主義者というのは、間違いなくこの王を構成する要素のひとつだ。





 しかし、「快楽にふける」という語感は、私がこれまで探求してきたシャルル七世の人格イメージとどうにも結びつかない。史実・史料を否定するつもりはないが、ずっと違和感を感じていた。


 いやらしい、いかがわしい……、鼻の下を伸ばしながら美しいアニエスと快楽にふける陰険な暗君? それがシャルル七世の本性なのか?


 ぐぬぬ、やっぱり受け入れがたい。



【余談】そもそも、私がシャルル七世に興味を持ったのは、数年前にヒプノセラピーによる退行催眠下で引き出された前世人格(?)数十人のうちのひとりがシャルル七世かも?ということがきっかけなのだ。本筋からそれるので前世うんぬん……のいきさつは省略するが、シャルル七世は私自身または近親者だったかもしれず、(当初は「過去の自分」と「前世の真偽」を知りたくてシャルル七世について調べ始めた)、今となっては前世かどうかに関係なく、ごく普通に「興味深い歴史上の人物」だと思っている。そんなわけで、私のは歴史愛好家でも小説家志望でもなく、かなり特殊だと思う。



 思い入れが強すぎて、ネガティブな印象を受け入れられないのか?と自問自答したこともある。


 ところが、数年来のこの違和感が、今回の翻訳を経て、自分でも説明しがたい不思議な流れできれいになくなった。「シャルル七世の快楽主義」の本当の意味がつかめたと思う。


 本作のあとがき代わりに、そのことを書いてみようと思う。



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