19世紀後半:アントワーヌ・ダレスト『フランス史』ゴベール大賞受賞

 リヨン大学で文学部教授を長く務め、学部長を経て、リヨン大学とナンシー大学の学長を歴任したアントワーヌ・ダレストは、『フランス史(Histoire de France)』でゴベール大賞を二度受賞した。


 ゴベール大賞(grand prix Gobert)とは、アカデミー・フランセーズが歴史学分野で「フランス史の中でもっとも雄弁な作品、またはもっとも功績を残した作品」に授与する賞だ。


 研究の信頼性と節度ある判断力において、ダレスト著『フランス史』は、間違いなく19世紀最高の一冊だろう。


 長年、研究機関に所属する博識な歴史学者は、1863年に刊行した第3巻でシャルル七世について次のように評価している。




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 シャルル七世は、歴代フランス王の中でもっともふさわしくない王としてスタートしたが、最後にはもっともふさわしい王となった。


 彼はあらゆる場所で独立と反抗を見つけて、あらゆる場所で勝利を収めた。

 彼は、この国が不満と落胆に満ちているのを見つけて、それを拾い上げて自信を回復させ、必要なエネルギーを与えた。


 当時の文筆家たちはみんな、フランスが自分自身を再び自由にしたこと、自分自身をコントロールして、誰にも邪魔されずに自分の強みや資源を発展できることに喜びを感じていたと証言している。


 シャルル七世が単独でこの偉大な結果をもたらしたわけではない。

 成功の背景には、王の周囲にいた優れた人物たちと、並外れたエネルギーで目覚めた大衆の精神があった。


 しかし、シャルル七世はこの困難な仕事を、並外れた手腕と忍耐力で成し遂げたのだ……。


 彼はイングランドをフランスから追い出し、秩序を回復し、王侯貴族を服従させ、軍事と司法制度を改革し、半世紀にわたる災厄を一掃した。そして最後に、もっとも強固な土台の上にある権力を、後継者に遺した。

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 ダレストは『フランス史』の他にも、シャルル七世にまつわるさらに詳しい著作を多数刊行している。


 例えば、『ディドー伝(Biographie Didot)』では、ジャンヌ・ダルク、アニエス・ソレル、イザボー・ド・バヴィエール、ジャック・クールなど、当時の興味深い人物たちの伝記をまとめている。


 当時の年代記をいくつか編纂して、15世紀フランス史の研究に重要な貢献をした後、1862年から1865年にかけて『シャルル七世とその時代の歴史(Histoire de Charles VII et son temps)』全三巻を出版している。





(※)ディドー(Didot):カルタゴを建国したと言われる伝説の女王。

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