シャルル七世の歴史的な運命

 モンテーニュいわく、


「人間というものは、多様で、起伏に富み、

 素晴らしくむなしい対象である。

 ゆえに、人間について、

 一定かつ統一された判断を下すのは難しい」


 ラ・ブリュイエールいわく、


「ひとりの人間の生涯を眺めると、

 心も精神もまったく異なっている。

 若いころの姿だけで判断すると、

 必ず誤解する」


 ボシュエいわく、


「ひとりの人間の中に、

 何人もの人間がいるように見えることがある。

 複数の異なる感情が、

 どこまで真実でどれほど鮮明であるだろうか」




 実際、ある歴史上の人物に、たったひとつの「型」を押し付けるのは間違っている。「変化は人間の法則であり、移動は大地の法則である」ということを忘れてないだろうか。


 人間は、善と悪とが共存している。

 長い間に矛盾が生じるが、やがてその矛盾は減少し、消滅していく。

 その人の本質は、生涯の最後に、最終的な特徴として現れる。


 生まれ育った環境に支配され、ある時は逆境に屈し、またある時は幸運に救われながら、長い人生の中で、ずっと自分自身に忠実であり続ける人がいるだろうか。


 若き日の約束——夢や誓いを、生涯一度も裏切らなかった人はいるだろうか。

 あるいは、突然の転機で思いがけないキャリアが始まったり、外部要因に触発されて迷いが生じたり、不安に負けて方向転換したことは?


 シャルル七世もそうだった。彼の治世と同じように、シャルル七世の内面にさまざまな人格がいたと言えるかもしれない。それが、矛盾だらけの多種多様な評価の原因ではないだろうか。


 時代の変遷と、彼の変貌ぶりをよく研究しなかったために、適切な区別がつかず、ある人は絶対的に非難し、ある人は誇張して賞賛した。


 もうひとつの誤解の原因——間違いなく、もっとも多い誤解——は、ある時代や人物の評価に、自分が生きている時代の価値観や課題を当てはめることにある。アベル=フランソワ・ヴィルマンの言葉を借りれば、


「現代の精神ですべての時代を評価したり、

 現代のものさしですべての人間を測ろうとするのは

 とんでもない偏見だ」


 私たちは、ケルトから学んだ歴史の法則「物事や人物を判断するのは、同じ時代にいた人だけだ」ということを忘れすぎている。


 シャルル七世の評価はどのように形成されたのか?

 それを明らかにするために、各時代の歴史家たちの証言を集め、15世紀から現代に至るまで、彼らの評価がどのようなものであったかを探ることにしよう。


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