第4話 薬師見習いの治療
薬師見習いをやっているから先生に着いて村の人たちの怪我や病気の治療をしてきた。当然その中には出血するくらいの大怪我の人もいたが・・・彼の傷はそんなものではない。背中の肉がそのまま一部なくなっているのだまるでバターをスプーンで削りとったかのように。
目の前で人が死ぬ・・・・・・
恐怖、驚き、焦り、悲しみいろんな感情がわたしを押し流そうと吹き抜けていく。「いっ・・・いやっ・・・・」声にならない声が森の静けさに響く、汗がでる、力が抜ける・・・・
薬師見習いを始めたばかりのころ、大怪我の人をみたときと同じように無力感と逃げたいという感情に支配されていく。あのときはどうしてたっけ・・・・
あのときも大きなイノシシの魔物が発生したみたいで、村の狩猟を生業としている人たちが討伐に向かった。そしてそのうちの一人がその魔物の突進を受けて大怪我をしていたんだ。
運びこまれた人は腕や足が変な方向に折れ、体中が血まみれになっていた。血のにおいやその姿を一目見たとき吐き気と恐怖でその場にへたれこんだ記憶がある。
逃げたい・見たくないそんな気持ちがわたしの頭の中をぐるぐるしていた。
「何をやってるさね!!ただそこで見るだけなら誰でもできる!!!薬師になりたいなら今手元にある薬を使えるのか、必要なものがないか、冷静に考えな!!!私ら薬師が動かなきゃ救えるものも救えやしないよ!」
師匠が大声でわたしに怒鳴りつけた時に、
わたしが動かないとこの人を救えない・・・・!
落ち着けわたし、立ち止まることは今できることをやってからでもできるっ!
すぐに鞄のなかにあるポーションをとりだす。師匠からもらった回復薬なら傷はすぐになおるはず!
本来なら飲ませた方がいいが、少年は意識を失っているため口に入れようとしてもポーションは口からこぼれていく。わたしにとって一人で急患の患者などみたことないため、イレギュラー1つでも焦りがでてくる。
口からが無理ならっ!
少年の上着を破り、あらわになった裂傷に向けて薬をかけていく。瞬く間に血は止まり傷も完全ではないにしろ治りつつある。
少年の呼吸も穏やかになっていっていることに安堵した。
ただ失った血の量は相当だから油断はできない・・・。
どうしようこのまま放置もできないし、かといってわたしひとりでこの人を運ぶこともできないよ・・・・。
最悪彼が起きるまでそばにいることも考えていたが、少年の意識が戻ってきた。
うめきながらも目をあけ、ぼんやりとわたしをみている。
とたんに何かはっとした表情になると飛び起きあたりを見渡す。
その姿をみてようやくわたしも始めに感じた違和感を再度感じれるようになった。
そして思い出した、少年のことで頭の片隅に追い込んでいた事実。
今のアルビオの森はいつもと違うことに。
ズシン・・・と大きな音がした後遠くで木がなぎ倒されている音が森中に響く。
音のする方を向くが木々によって暗くてよく見えない。
ただ黒く大きなものがこちらへ向かってきている。
突然のことに頭の中が真っ白になっていると、木々の木漏れ日にそのなにかが照らされ大きなかぎ爪やその巨躯の一部が視界に入った。
「ラージベア・・・・」
そこには今一番会いたくない、会わないように行動をしていたはずのラージベアがこちらを完全に見ていた。
薬師見習い少女のお使いの旅~回復魔法がある世界で薬を運ぶ~ 庵屋 @kikuruaruku
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