第3話 アルビオの森

 「おはようルルちゃん!今日はまた大層な荷物だねぇ。」


「テオさんおはようございます!今日はですねーアルビオの森まで薬草採取です!」


「ははぁ・・・それで大きな篭を背負ってるんだな。」


薬屋を出た頃には、村は早朝とは違い活気に包まれている。みんなに挨拶しながら

村の出口にさしかかったところで村長のテオさんに声をかけられた。


「マーキュリーさんはいねぇのか」


「師匠は今手が離せない仕事があって、わたしだけで行くことになりました。」


「本当かい?最近じゃラージベアを見たっていうやつがいるからかなり危険だと思うがなぁ」


「大丈夫です!師匠が遭遇しないように採取場所も変えてくれましたし、いざと言う時の備えも持たせてくれました。」 


ポンポンとテオさんに道具の入った鞄をたたいて見せる。


 あのあと師匠から地図と薬剤の資料を師匠からもらったけど、地図の方にはラージベアを見たという場所と師匠がわたしに採取してほしい薬草の採取場所が記されてあった。


 ラージベアはアルビオの森の北側といって言っていたがかなり北端の方にいたみたいでもともと採取しようとしていた場所からでもかなり距離があった。

 師匠はそれでもわたしの安全を考慮してくれているのか、今回の採取場所は南側の端になっている。


「それならいいんだが気をつけていけよ」


テオさんは依然心配という表情を隠せていないがわたしを門まで見送ってくれた。


ーーーさぁ初めての1人で採取だぁ!がんばろっ!


****


アルビオの森は村から近く、村の人たちも狩猟などでよく利用している。

魔物も生息はしているものの、アルビオの森の周辺の魔物は比較的弱いものが多くて

なんなら人間を見て逃げ出す魔物もいるくらい。


---ラージベアなんて大きな魔物はそれこそ


そうこうしている内にアルビオの森の目的地についたので、師匠に頼まれた薬草たちを採取していく。


ヨツメソウの採取地は水辺の近くの湿ったところなので、少し肌寒いけど天気がとっても良く、作業をしながら耳を澄ませると木々の葉が揺れる音や動物たちの鳴き声が聞こえてる。


私たち薬師の多くは採取などを自分でおこなう。それは薬草の鮮度が調薬に大切なのもあるけど、薬師は薬だけでは生計をたてることが難しい。


調薬だけで生計をたてられるのはそれこそ王都の宮廷薬師や薬師協会の人くらい。と師匠が言っていた気がする。


ヨツメソウを鎌で刈り取っては採取篭へ入れていく、篭はいつもと同じ大きめのものを持ってきているけど今日は一人で採取をしているため、いつもの倍以上採らないと目標の量までいかない。腰がいたい・・・・・。



篭の半分くらいまでヨツメソウを採ることができて、ようやく目的の量を採り終えた。


「ようやくヨツメソウ採り終えた~~!あーー腰がいたい・・・。」


しゃがみ込み過ぎてすっかり固くなった腰を伸ばしほぐしていく。


「折角だしお昼ご飯にしようかな・・・。」


---あれ?


一息ついて、採取していたときの集中が切れたことで感じる違和感。


森が静かすぎる・・・・。


来たときに聞こえていた動物たちの鳴き声が一切聞こえなくなっていた。


まずいかも・・・ひとまず篭も置いてこの場を離れよう。




鞄だけ持って、アルビオの森の外へと移動としようと動き始めたとき、背後の草木が大きく音をたててゆれた。


まさか・・・・揺れた方向へ振り向くと


銀髪の少年がよろよろと出てきた、村では見たことがない顔だし灰色の外套をまとっているところを見るとこの周辺の依頼をこなしにきた冒険者のようにもみえる。


でてきた少年はうつむき表情がうかがえない。


「・・・こんにちは~・・・。あの・・・大丈夫ですか・・・っ!?」


とりあえず少年へ声をかけてみたけど

少年はそのままわたしの方へ近づいてきて、突然倒れた!


倒れたことにもおどろいたけど、それ以上に彼の背中をみて絶句した。


彼の背中には大きくえぐられたであろう傷がありそこから大量の血が流れていた。

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薬師見習い少女のお使いの旅~回復魔法がある世界で薬を運ぶ~ 庵屋 @kikuruaruku

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