第2話 仕事前の団らん
朝日が昇り始めるころわたしは、今日のために少し早起きをした。
部屋の窓を開けると朝の澄んだ冷たい空気が頬を触り眠気がふっとどこかへいってしまう感覚がした。師匠と住んでいるこの薬屋は村から少し離れたところにあるため窓から村の様子がよく見える。まだ外にでている村の人が少ないのか、村はとても静かな感じがする。
さむっ!まだ寝間着のままだった・・・。早く着替えて準備をしなくちゃ出発が遅れちゃう。
アルビオの森は村から近場ではあるが、到着が遅れるとその分帰宅も遅れる。
万が一夜にでもなったら危険。
急いで着替えて、わたしは朝ご飯や目的地で食べる塩づけ肉を包むために一階へ降りる。
台所に立ち師匠の分の朝ご飯も一緒に用意する。ご飯を用意するのは基本わたしの仕事になっている。こう見えても料理は得意。・・・・得意にならざる得なかったの・・・。
師匠は基本きっちりしているが料理だけは壊滅的なのだ、調薬ができるのに料理はできない。わたしは師匠と物覚えがつくまえから一緒にいるみたいだけど、師匠のご飯がおいしかった記憶はまったくない。
材料も火加減もレシピも何一つ変なことは無いのにできたものはとてもおいしいと言えるものでは無くなるのだ・・・・。
師匠本人は「結局食べれるなら問題ないさね。」と顔色変えずに食べていたが、わたしにとっては不味すぎて食べられるものじゃなかった・・。
そこで、村に移り住んだことをきっかけに村の人たちから少しずつ料理を教えてもらって、今や料理はわたしにとってのお仕事のひとつ。
二人分の朝ご飯もできて、干し肉を包み終えたころ師匠がとなりの調薬室からでてきた。
「師匠!おはようございます!朝食がちょうどできましたよ!!」
師匠は「あぁ」と簡単な返事をして食卓へむかってきた。食卓に朝ご飯を並べむかいに座って朝ご飯をたべる。今日は干し肉を焼いたものとパンとスープ。うんお肉が少ししょっぱいからスープを少し薄味にしといてよかった。一緒に食べるといい感じ。
「ルル」と呼ばれ向かいにいる師匠の方を向くと「今日もおいしいよ。」と言ってくれた。師匠はいつもわたしのご飯を食べてるときに言ってくれるんだ・・・むずがゆいけどうれしい。「ありがとうございます!」と返事を返してまた食べ始めようとすると
「ルル、今日の採取の準備の方はどうなった?終わったのかい?」
「あ、はい!昨日師匠から新しい鎌をいただけたので大丈夫です!アルビオの森までの道と薬草の群生地もしっかり確認してますよ!」
「・・・昨日レックスから聞いたのだがどうやらラージベアがこの周辺にでてきているようでね。出てきたのはアルビオの森の北部の方らしいから、南部側で採取するようにしなさい。」
「ラージベアって確か去年レックスさんが一人で狩っていたあの大きい熊型の魔物ですよね?わたしも実物見ましたけど、あのサイズはわたし一人じゃどうしようもないですよ・・・レックスさん強すぎです」
「あの筋肉ダルマは腕っ節だけは王都の力自慢集めてもなかなかいなさそうな傑物だからね。この村が安泰なのもあいつのおかげさね。」
それでさ・・・と師匠はおもむろに3本の薬品を取り出した。赤と黄色、青とそれぞれ異なる色の薬剤だ。・・・・・・どこからでてきたの?
「この赤いのは
「えぇー!?これうちで取り扱う中で一番の高額品じゃないですかっ!もてませんよ!」
「本当ならあたしが付き添うか、ベアが討伐されるまで待てばいいんだけどね。
今回の依頼先は王都の薬師協会からのものでね遅れるわけにはいかないのさね。」
あぁだからこのところ師匠は調薬室にほとんど籠もりきりになっているんだ
師匠は疲れた顔をしながら椅子に深く腰をかけ直した。
「で、この残りの2つの薬剤に関してだがね・・・爆薬だよ。」
「爆薬っ!!」あまりの物騒な物におどろきで立ち上がってしまった・・。
「なんでこんなものをわたしが・・・師匠も普段は作らないし、使わないじゃないですか・・・。え?というか食卓において大丈夫なものなのですか?いきなり爆発しませんか??」
「この薬剤は2つを混ぜ合わせることで反応が始まってだいだい20秒後に爆発する。護身用としてもっとくさね。ただし、これらは逃走用であって倒せるほどの威力はない。くれぐれも立ち向かおうとか考えないこといいね?」
あとで地図と渡した薬剤の資料を渡すからとりにくるさね。と師匠は言い食事を再開してしまった。
呆然と薬剤を見てたわたしは師匠が食べ終えそうなことに気づき急いで朝食を口へ運ぶ、今日はなんだか大変そうだなぁ・・・。
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