薬師見習い少女のお使いの旅~回復魔法がある世界で薬を運ぶ~
庵屋
見習い薬師と不思議な少年
第1話 薬師の見習い少女
お母さんへ
わたしがいるイアソー村はとてもありふれた村です。日々作物を育てたり、狩りで周辺の動物などを狩ってそのお肉を村総出で干し肉にしたり調理したりと、みんな仲良くすごしています。
わたしが師匠と一緒にこの村にきたときも、村の人たちは明るく受け入れてくれました。わたしたちはこの村で小さな薬屋をさせてもらっています。
わたしたちと言っても、わたしはつい2年前くらいからようやく調合や薬草の採取の方法を師匠から教えてもらったんですけどね。
昨日も回復薬の調薬しても師匠から「まだ、配合の仕方がなってないね。混ぜる速度が速すぎる。」と呆れながら言われてしまいました。
やっぱり師匠の回復薬と比べると効能も全然違って、調薬方法を学べば学ぶほど師匠にかなわないことが実感できてしまうんです。でも、ちょっとくらい褒められたいなぁとはたまに思っちゃいます。
だから!いつか師匠に認めてもらえるように今日もがんばらなきゃ!
「ルル!ちょっときてくれるかい!!」
大きな声で呼ばれてわたしは返事をしつつ手紙を机の引き出しに戻した。
・・・師匠のことだから店番を変わってくれとかかな?
わたしは二階の自分の部屋からお店でもある一階へ駆け下りた。降りるとちょうど師匠は調薬中だったのか室内には薬草を煮ているときの独特なツンとする匂いがしている。
「師匠?なにかご用ですか?」
師匠は作業着の白い羽織にシルバーホワイトの髪を束ねたままの姿で薬倉室からでてきた。
「ルル、すまないが明日アルビオの森の周辺でヨツメソウとオラブの実を採ってきてくれないかい??」
「オラブの実はわかるんですけど、ヨツメソウは最近師匠と採取にいきませんでしたっけ?」
2つとも採取が簡単かつ時期を問わず広範囲に群生しているため、師匠と採取に言った際についでに採っている。オラブは軟膏や料理に使ったりとかなり用途が多く減りがはやいがヨツメソウは回復薬につかうからとかなり多めに採ったはず。
「そろそろ冬が近いからね。外が冷え込んでくると植物達の実りは悪くなる。みんな越冬のための蓄えを始める時期だからね。私たちも材料がなくては薬はつくれないから日持ちのする薬草を今のうちに蓄えておこうということさね。」
それに・・・と窓から外を見ながらため息交じりに続けた。
「冬は太陽の加護が薄れる。日は早くに沈み、暗い闇の時間が多くなる。そうなると魔物が活発化するからね。採れる物も採れなくなってくるのさ。」
「越冬の準備ってことですね。でも今年は豊作でしたし!かなり余裕がある越冬になりそうですよね!!」
「ルルにもそろそろ採取を一人でできるようにもなってほしいからね。今回は量もすくないし採取も手頃な薬草達だから任せたいのさ。明日はわたしも村長の家に用事があって見送ってはやれないがきっちり準備していくんだよ。」
「わかりました師匠!早速採取道具の点検や準備行ってきま~す」
わたしは納屋にある採取道具の点検に急いで向かった。
****
納屋の戸をあけて目的の道具達をさがす。納屋には採取して処理をした薬草や製法などを書いた紙の束が棚に師匠によってきれいに整理してある。目的の道具はすぐ見つかった。
師匠は「日々つかう物を整理しとかないと、いざ使うというときに使えないことがある。整理は常にやっておくのさ。」とわたしに口酸っぱく言ってくる。
たまに、ほんとにたまにうるさいなぁと感じることはあるけど。こうやって目的の物がみつけやすい納屋をみると師匠の言ってることは正しいと感じる。
「採取かごは・・大丈夫だね、あと・・あ~鎌が結構錆ちゃってる、師匠に言って代わり用意してもらわないと。」
道具の点検をしていると、誰かが納屋のそばにくる音がして
「おや、ここにいたのはお嬢ちゃんのほうか。マーキュリーさんはお店の中かい?」
声がした方を向くと大柄の男性が納屋の入り口の前にいた。
「レックスさん!師匠はお店の方で調薬中ですよ。レックスさんは?また狩猟中に怪我ですか?」
レックスさんは村の狩猟番の長をやっている人で村にある干し肉や薪などはレックスさん率いる狩猟番の方達のおかげ。狩猟番は動物や稀だけど魔物との戦闘があるため怪我の治療のためのポーションを定期的に持って行っているため。レックスさんとも顔なじみになっている。
「まぁそれもあるな、越冬準備のために大がかりの狩猟を行うつもりでな。若いもんの怪我が後をたたなくてな。不足分とあと多めに作ってもらうようにたのんでいたのさ。」
「あぁそれでわたしに明日アルビオの森へ採取にいってくれ~って突然いったんですね。」
「あん?嬢ちゃん一人でいくのか??アルビオの森の中に一人で入るつもりか?」
レックスさんは無精ひげをなでながらくい気味に聞いてきた。迫力ある顔なのでちょっと怖い・・・。
「いえいえ!アルビオの森の周辺です!森に一人ではいってはいけないと師匠からずっと言われてますし。」
わたしは手を振りながらレックスさんに説明した。レックスさんは少し安心したのか「ならいいんだが・・。」と言いながらもとの位置に戻っていった。
「いいか嬢ちゃん、アルビオの森周辺はしばらく魔物の出現がないとは言え、魔物地帯のすぐそばだ見つけたら前に教えた方法ですばやくにげるんだぞ、けっっして見つかんじゃねぇぞ!」
「わっかりましたーー!!」
また、レックスさんの怖い顔に詰め寄られたくなかったので、間髪入れずに返事をする。
「心配だが、嬢ちゃんも薬師見習いだもんな・・・。しかたねぇのか。嬢ちゃんなんかあったらすぐ言えよ。」
「俺はマーキュリーさんと話してくるから」とレックスさんは薬屋の方へ行った。
レックスさんに言われた薬師見習いという言葉、そうわたしは薬師見習い。
将来は師匠にも認められる薬師になるんだ。採取くらい一人でできないと・・。
わたしは気合いを入れて点検を再開した。
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