はるうらら
水原緋色
第1話
いつものようにお昼前に起きる。カーテンを開けると、今日もうららかな日差しが差し込んでくる。洗濯物もよく乾くだろう。
朝食と一通りの家事を済ませて、紅茶を入れなおす。ゴウンゴウンと洗濯機が回る音が響く。
SNSをチェックながら、そろそろ3分経ったかなと思ったころ、インターホンが鳴った。
そういえば、何か届くとメールが来ていたなと思い出して、一応モニターをチェックし荷物を受け取る。
なんだっただろうか、と箱へ目をやればファッションサイトのロゴが印刷されている。
カリカリとテープをはがし、引っ張る。やっぱり綺麗にはがれなくて、ため息をつき鋏を探す。たぶんここだ、と思ったところにきちんとしまわれていて、やればできるなと自分をほめる。
箱の中には先日注文したばかりの服が梱包されていて、頬が緩んだ。
「あ、紅茶。渋くなる~」
茶こしを取り出して、ティーポットの中を覗く。
それほど濃い色にはなってなくて、そのままマグカップに移す。
炬燵に入りながら、カップに口をつけて、熱くて思わず顔を後ろにたおした。
少し冷めるのを待つ間に、先ほど届いたものを取り出す。
透かし編みのニットカーディガンがずっと欲しくて、今まで使っていた別のタイプのものを買い替えてもいい時期だと、思い切って買ったのだ。セールもしていたし。
紅茶を飲みながら、天気予報を確認する。本日は一日快晴。
ならば、と考えたとき洗濯が完了した音が聞こえた。
「さて、最後の
近所に住む小学生のただいまという、大きな声が聞こえる。
新しいカーディガンに袖を通し、姿見を見ながら何度もうなずく。
最近何となく買った、使い捨てのフィルムカメラをサコッシュにいれる。水筒を持つほど歩くつもりはないから、コップ一杯の水を飲み、歩きなれたスニーカーを履いた。
外の空気は、もう冬のにおいなど一切残していなくて、時折強く吹く風が新しい季節の香りを運ぶ。
少し歩いたところにある、まだ蕾をつけるばかりの桜の木を眺めて歩く。
まだ色づいていない木々に、ほんの少し早かったかと思いながら、ファインダーをのぞきシャッターを切る。
カチカチとフィルムを巻きながら、また歩く。足元にも様々な草花が生えていて、そちらもカメラに収めた。
次の休みの頃には、きっと木々は色づいて、蕾が大きくなっていることだろう。
まだまだ使い終わらないフィルムの数を見ながらそう思って、跳ねるように一歩踏み出した。
はるうらら 水原緋色 @hiro_mizuhara
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