5話 本当の宝物
カイルは自分に何かできることはないかと真剣に考えた。
そして、少しずつ貯めていた貯金を全て持って、マナの元へと走った。
「マナ!」
勢いよく駆け込んできたカイルにマナは驚く。
「ど、どうしたの?」
乱れた息を整え、カイルはマナに袋を差し出した。
「俺の貯金」
「は?」
マナはわけがわからないという顔をした。
「俺の貯金もナナのペンダントを買う足しにしてくれ」
カイルはマナに袋を押しつけた。
「待って、どうしたの? 私……受け取れない」
マナは首を横に振る。
「俺だって、ナナの喜ぶ顔がみたい。それに……おまえが苦しむ姿は見たくないんだ」
カイルの表情は真剣だった。
「カイル……あなたにそんなに心配させて、ごめんなさい。でも」
「受け取ってくれ! でないと、俺は……」
カイルはいつもマナのことを気にかけてくれる、優しい人だ。彼の気持ちは素直に嬉しかった。
「わかった。受け取る、ありがとう。ナナを喜ばしてあげよう」
マナが微笑むと、カイルの表情がみるみる明るくなっていく。
「ありがとう、マナ」
次の日、二人はペンダントを買いに行った。
二人のお金を合わせても、小さなルビーのペンダントしか買えなかった。
「こんな小さいのしか、買えなかったね」
マナは少し残念そうに俯く。
「何言ってんだ。ナナはきっと大喜びするさ」
カイルの笑顔にマナはつられて微笑んだ。
「おねえちゃん……ありがとう」
マナがナナにペンダントをプレゼントすると、ナナは泣いて喜んだ。
どんなに小さなルビーだって嬉しかった。そこにはマナの想いが詰まっているのだから。
「お姉ちゃんが、私のために無理してるのわかってた。ごめんね、ありがとう……お姉ちゃん、大好き」
ナナが声をあげながら泣く。
マナももらい泣きする。
二人は抱き合いながら姉妹の絆を確かめ合った。
その様子を少し離れたところからカイルが見守っており、その瞳には涙が光っていた。
マナはこの前のお礼にカイルを自宅へ招待し、ゆっくりとティータイムを楽しんでいた。
「カイル、本当にありがとう、あなたのおかげよ。私一人ではとても……」
「何言ってんだ、マナの気持ちが俺を動かしたんだ」
カイルは急に立ち上がると、マナの後ろへ回り、マナの首にネックレスをかけた。
「これ、俺からマナへ」
マナは驚いて、カイルを見つめた。カイルの顔がほんのり赤くなっていた。
「マナは、いつも人のことばっかりでさ、たまにはいいだろ。受け取ってくれよ」
そのネックレスはいろいろな材料が組み合わさっていて、バラツキがあり、手作り感があった。
「もしかして、これ……手作り?」
「ああ、俺の手作り、買う金なかったからさ、ごめんな」
「ううん。すっごく、嬉しい、ありがとう」
マナはカイトの優しさに、心が満たされていくのを感じていた。
「こんな暖かい贈り物ははじめてよ」
カイトは照れくさそうにそっぽ向いていた。
「こらー! 二人でずるい、何してるの?」
急に、ナナが二人の間に入ってきた。
「ナナ、見て、カイルがくれたの」
マナがネックレスを見せると、
「ずるーい、私も欲しい」
ナナが頬を膨らませた。腕に絡んでくるナナを振り払いながら、カイルが叫ぶ。
「あのなあ、あれ作るの大変だったんだぞ! あれが最初で最後だ」
カイルとナナのじゃれあう姿を愛おしそうに見ながら、マナは幸せをかみしめていた。
今日も白怪盗は夜の街へと現れる。今を懸命に生きる人々の味方として
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心の宝石 あなたの宝物は何ですか 桜 こころ @sakurakokoro
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