15-3
食事が終わった頃には時刻はすでに18時を過ぎていた。
夕食後は解散して、また各々の時間を過ごすことに。
自分はグラウンドに行ってベンチに座り、いつものように夜空を見上げる。
流石に11月にもなると夜の風が冷たく感じるなぁと思ったが、ここは北海道。
こちらへ移動するまで夜は程よい気温だったけど、北に近い地域なだけあって本州との気温差を強く感じる。
空は戦場が近いからか、ごく僅かにモヤがかかっており、本州と比べると澄んでいないのが残念。
しかしながら周りに輝度の高い照明群はないため、星がちゃんと見えるのはグッド。
はあぁ〜.....星を見ると癒されるなぁ.......。
なんだか穏やかな時間により、我慢していた眠気が襲ってきた。
「んー、良い夜空だね」
「ふぇあ!?」
眠気によって現実と夢との境目があやふやになっているところへ、他者に話しかけられて必要以上に驚いてしまった。
けど声から相手が初瀬部さんだとすぐに判別できた。
「うわっ。驚いた」
「す、すみません。でも私も驚きましたよ....」
「それはゴメン」
「どうしてこちらに?」
「その辺を歩き回ってたら愛星さんを見つけたから、声をかけてみた」
「そ、そうでしたか」
う、うーん....なんだろう、理由が分からないけど初瀬部さんは他の班員と比べると、どうも話しにくいような。
隣に座った彼女に対して何か話を続けないと....うー……。
「そういえば初瀬部さんには弟さんがいるとか?」
「それ、誰から聞いたの?」
「えっ。えっとぉ....」
若干、不機嫌そうな表情をされているのはなぜですか?
もしかして聞いてはいけない内容だったとか!?
これは聞いた相手を言ってはいけない雰囲気、堪えるのだ私!
「だ、誰だったかは忘れましたが....すみません。口に出さないほうが良い話題でしたか?」
「ん?別に問題ないけど??」
え、あれー??大丈夫なのですかー!?
「どうしたの、驚いた顔して」
「ええっと、弟さんの話題を出した際に少し不機嫌な顔をされていたので....」
「んんっ?単に目が霞んでて眉を寄せてただけだから、怒ったりとかはしてないよ。ごめん、紛らわしくて」
「不快な思いをされていないのであれば、こちらとしても安心しました」
なんですか、その紛らわしい理由は!
心臓に悪いのでしっかりしてください、初瀬部さんのおめめ!
「それで弟の話だけど、識火さんから聞いてる通りいるよ1人。可愛いし、私なんかとは比較にならないくらい頭がいい。自慢の弟」
「あ、識火さんから聞いたのバレちゃいましたか。初瀬部さんは格好よくて、可愛いですからその男の子バージョンみたいな感じなのでしょうか?」
「褒めてくれてありがと。んー、でも弟のほうが自分より可愛いかも?格好よさは分からないけど」
「ふむふむ。後、初瀬部さんは頭が良いと思いますよ?比較対象は自分で申し訳ありませんが」
「ふふ、ありがとう。そう言う愛星さんも言うほどじゃないんじゃない?」
「いえいえ。ついこの前まで9+4を13ではなく12と答えていたくらいなので....あ、なんだか悲しくなってきました」
「よしよし。得手不得手はあるからしかたないよ。でも、今は間違えないでしょ?」
「時折不安にはなりますが一応、大丈夫かと。それと頭を撫でられるのは恥ずかしいので、ほどほどでお願いします」
「ん、分かった。小さいことかもしれないけど、ちゃんと頑張ったから成果が出てるんだと思う。挑んだり続けたりって大変だから。あやふやにしなかったのは、偉い」
「そんなに褒めてもらうような内容ではないと思いますが.....ありがとうございます」
「あ、そうだ。愛星さんはここで星見てたんだよね。冬の大三角って今でも見えるの?」
「あー、見えますよ。実は早秋....9月ごろから東の空に出てます。今は冬に近いので南東あたりにいるはずですね」
そう言うと初瀬部さんは首を上に向けて、星空を見回す。
しかし、どれがどの星なのか分からなかったようでヘルプが飛んできた。
「ぜんぜん分かんない...へこむ」
「星に関しては非常にわかりにくいですから、しょげないでください。えっと....あれです」
そう言って後ろから彼女の手を取って、その手で星を指差す。
どれだろう?と言われたので少し工夫をして、自分の手を初瀬部さんの頬に優しく当てがう。
ひんやり、もちもちしていて気持ちいい。
「愛星さん、ほほツンツンはくすぐったい」
「はっ、すみません」
何をやっているのか自分は。
仕切り直して、彼女の目の横に自分の指を持っていって、その状態で星のある位置へ頭を動かす。
「あの3つ光ってるやつ、かな?」
「はい、そうです」
「ん?なんか周りにも明るい星が3つくらいあるけど」
「えっとですね、それは冬のダイヤモンドと言われるものです。大三角はプロキオン・シリウス・ベテルギウスの3つから構成されますがダイヤモンドはプロキオン・シリウス・リゲル・アルデバラン・カペラ・ポルックスの6つでできてます」
「へぇ、ダイヤモンドのほうは学校じゃ習わなかった。いいもの知れた、ありがと」
「私も学校では習わなかったです。星を観測するようになってから知りました」
「そっか、いい趣味だね」
「全、天体観測者に代わってお礼を申し上げます。ありがとうございます」
「あはは、そんなに畏まらなくても。ふぅ、そろそろ私は部屋に帰ろうと思ってるけど愛星さんは?」
「私も戻ります」
「じゃ、帰ろっか」
ニア・フューチャー・ガールズ Athymia @Athymia
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