第2話 イカロスの飛翔 ②
ソンジェは、マイケルのことが心配で、会社にいても仕事が手に付かなかった。
ソンジェの会社は、主体である芸能事務所から、人気アイドルの自殺者を出したばかりだった。そのウェルテル効果で、世界中で自殺者が急増していた。
病院へ行くと、いつになくルーカスが怒っていた。
「あの子の会社の代表がいつ意識を取り戻せるか、いつからステージに立てそうか、と、毎日、暇さえあれば電話してくる。
うるさくて、仕事にならない」
そしてルーカスはソンジェを睨み付け言った。
「そういえば、お前の会社も自殺者を出したばかりだったな。何でこんなに自殺者が出るんだ?」
ソンジェには、返す言葉がなかった。しかし勇気を出して言った。
「所属アーティストの心までは管理できない。
それはお前たち、医者の仕事だろうが・・・」
ルーカスは怒って、ぶすっとしていた。
ソンジェはため息を付きながら言った。
「彼の所属しているグループがもうすぐ新譜を出すことになっている。
それで焦っているんだろう」
「だとしても、あの患者は生死を彷徨っている状態なのに、俺からすれば、何を考えているんだ!と怒りを覚えるよ」
「だから当面は、はやくとも一月は無理だと、ドクターストップを出してやった」
と誇らしげに言った。しかし、その後、ルーカスは付け加えた。
「もし一月たっても意識を取り戻さない場合は、ほとんど回復は見込めない」
その後、一週間も経たないうちにマイケルの事務所は、「個人的な事情」によるマイケルの脱退と、事務所からの解雇を発表した。
そしてマイケルは、一月経っても意識がもどらなかった。
イカロスの飛翔 来夢来人 @yumeoribitoginga
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