イカロスの飛翔

来夢来人

第1話 イカロスの飛翔 ①

 その頃のユン・ソンジェは、大手芸能事務所に席を置く敏腕プロデューサーとして、業界ではその名を知らぬ者はいないほど有名人だった。

 その頃は、飛ぶ鳥も落とす勢いがあった。

 彼が育てたスターは数知れず、マイケルと出会うまで失敗したことのないプロデューサーだった。


 マイケルはソンジェが出会ったスター候補生の中で、一番才能があった。

 一番才能のある若者だったから、つい大き過ぎる夢を見てしまったのかもしれない。


 ソンジェはその知らせに、とにかく驚いた。


「昔、お前の事務所にいたマイケル・ハートが、昨日、俺の病院に運ばれてきた」


「えっ?」


「お前の事務所の練習生だったころ、お前、良く連れて歩いていただろう。

 美術館で、偶然あって、一緒に食事をしたこともある。

 だから俺も顔は良くぼえている」


「だから俺が主治医をすることにした。今、ICUにいる」


 急ぎ病院に駆けつけたソンジェに、親友のルーカス・クワンユーは病状を説明した。


「オーバードースだ。

 かなり前から準備をしていたのかもしれない。

 だから発見が遅れた。もう少し早ければ、意識を取り戻すことはそれほど難しくは

なかったはずなのだが、意識がなぜかもどらない」





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