私には3分でやらなくちゃいけないことがあるんです

クライングフリーマン

私には3分でやらなくちゃいけないことがあるんです

 私には3分でやらなくちゃいけないことがあるんです


 庭に侵入者を見付けた。先日も、同じようなことがあった。

「おい。君!」と、私は若者に声をかけた。

「そこで、何をしている?」

「鬼ごっこです。知らないんですかあ?」

「子供の頃、やったよ。その時も、他人の家に入り込んで、と叱られたよ。」

 小型カメラを持った若者は、私に『撮影許可証』のコピーを黙って差し出した。

「テレビの番組ですよ。知らないんですかあ?」

「関係無い。そこの住居表示と、この紙切れをよく見比べてみたまえ。」

「だから、ちゃんと許可を取ってあるんです。我々は、『一般の方々』とは違うんです。」

「だから、家宅侵入だろ。泥棒と同じじゃないか。『一般の方々』とは違う?」

 若者は、私を無視して、スマホで、どこかに電話をかけていた。

 私の説教は無視され続けた。

 私は、後ろ手に、ガラケーのスイッチを押した。

 2分が経過した。彼の嵌めている腕時計が点滅し始めた。そして、音が発生していた。

 ピコ^ン、ピコ^ン、ピコ^ン。音は大きくなり、点滅は激しくなりだした。

 3分が経過した。点滅は消え、音も消えた。そして、若者も消えた。

 跡に残ったのは、小型カメラと腕時計だけだった。

「ふうん、便利な世の中になったものだ。」

 私は、家に入った。

 鬼ごっこを撮影していた彼は、永久に『鬼』になった。



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私には3分でやらなくちゃいけないことがあるんです クライングフリーマン @dansan01

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