chapter:3-4
両開きの扉の中は、いわゆるエントランスのような待合室になっている。
「アウロラ」のメンバーの殆どは、何らかの理由で学園の闇に狙われていたり、様々な理由で街で生きづらくなった者たちだ。
故に、このビルはそういった者たちを匿う全員の家なのだ。
「あぁ、言ってなかったっけ。俺は
茶髪の名前を頭に入れ、玲は再び少し考えた。四番隊のメンバー……それも隊長やら副 隊長クラスの者との対峙。更には、まだ後ろに君臨してるであろうボスの存在。
やはり、自分の置かれている状況は穏やかではない。目の前の二人も良い人そうだが 、完全な味方ではない。
……どっかのタイミングで逃げるにこしたことはないな。
玲は表情には出さずに考えをまとめると、周りの状況をチラッと確認し、丈と瀧の会話に耳を傾ける。
廃ビルとは思えないほど、綺麗に整備された洋風のエントランス。シャンデリア何かが似合いそうな雰囲気すら醸し出している。
エレベーターも起動しているらしく、奥の両側にはそれぞれエレベーターもあり、2 階ブチ抜きのエントランスには斜め階段と、左右に扉が並んでいる。
「どうする? 余ってる部屋は男部屋しかねぇけど?女衆は買出しに行ってるらしいし」
「とりあず、大浴場に連れてったほうがいいんじゃない?服は……俺のでいい?」
瀧と玲の待遇を話しながら、不意に着替えのことを思いつき、そんな風に丈は聞く。
「あぁ……貸してくれんなら助かる。風呂は覗くなよ?」
瀧の言った女衆という単語からして、まだまだメンバーがいるのがうかがえた。もし逃げるのであれば、人数が少ない時の方がいい。
風呂の時間中に、なんとかならないかな……。
そう思案し、玲は丈達には風呂を覗かないように釘を刺しておいた。拉致されてる身とはいえ、まさか風呂までは監視されないと思うが一応である。
「覗きはしないが、逃げないように入口で待たせてもらうからな?」
玲の言葉に釘を刺すようにそう告げる。
丈にしろ瀧にしろ、玲に対してどうこうする つもりはない。ただ、自分たちに居場所をくれたこの組織には思い入れがあるのだろう。
「そうだね。上に申し訳ないしね」
命令には、 どこか奔放な丈であろうとも従順で、瀧に至ってはもとから仁義には厚いらしく、玲のことをしっかり観察している。
瀧、丈の返事に玲は小さく舌打ちをした。やはり簡単には逃げだせないようである。
「なぁ、そーいやさ、このビルがあるのは何処の地区なんだ?こんな目立つのがあれば、すぐ人目につくと思うんだけど」
エントランスにあるソファーに座り、玲は疑問を口にした。もちろん、これから脱走するための情報収集もかねてである。
「ここはね、一応東地区……と、北地区の間く らいにあるらしいよ?」
丈は瀧に「お風呂まで案内したげて」っと言って扉の向こう側に消える。きっと玲に貸すための服でも持ってくるのだろう。
瀧は、相変わらずあまり喋らず、歩くたびにピアスが電灯に反射する。
「こっちだ。とりあえず、男風呂の方にしか案内できないが、この時間なら大丈夫だろ」
エレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押すと、若干の重力がかかり、上へと静かに上がっていく。
丈から現在の場所……東と北地区の境である事を聞き、玲は更に頭を抱えそうになった。
ビルから脱出しても無事に中央地区まで行くのは難しい。
スマホで誰かに連絡をとってみるのもありだが……下手に弱い奴や友達は巻き込めない。
連絡手段があって、強いといえば……頭も下げたくない闇帝くらいしか浮かばないが、第一に拉致られた最初の時点でスカートのポケットに入れていたスマホが取り上げられてしまい連絡がとれないのが痛かった。
鞄は心多のバイクに入れてたので、そのまま彼と一緒にあるのだろう。
難しい問題に玲は眉根を寄せ、唸る。その上、隣にいる瀧も黙って余計なことは喋らなそうな感じでなので、丈といる以上に緊張した。
無言で乗り込むエレベーター。
まるでお通夜かというレベルの静けさだ。
「風呂って最上階にあるのか……これはまぁ、御丁寧に……これじゃあ逃げられないなぁ。そうだ、私の荷物は?いつ返してくれんよ?」
乾いた笑い声を零しながら玲は瀧の背中に声をかける。荷物とは、もちろんスマホのことである。
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