chapter:3-3
瀧と呼ばれる坊主頭の考察に玲は耳を傾ける。
なかなか冷静な分析、これはアホキャラではないなと彼を見直す。
そして話を振られ、玲は目をパチクリさせた後、即座に返事をした。
「いや、いない」
瀧の言うような人物が玲は思い付かなかった。しいていえば……心多だ。
きっと彼は目を覚ました後、自分がいなければ慌てるだろう。彼はイイヤツだから。後は、燈弥が浮かぶが……奴は玲がいなくなったところで何も思わないだろう。困る姿もイメージできない。
玲は少し考えた後、もう一度「やっぱり、誰も思い付かない」と瀧に答えた。
「自分の考察に不備はない。となると、仮定を間違えたか?いや、そんなはずは……」
玲の否定の言葉に、もう一度思考にふける瀧を尻目に、茶髪は苦笑する。
「なぁ、お前らって一体なんなの?何の組織?かなり大規模な感じだけど……瀧、だっけ?それに茶髪の……私餌になるようなスペックないからね、マジで。それとシャワー浴びたい。帰りたい。四番隊には行きたくない」
四番隊がどんな場所かはわからないが、とにかく玲は無駄な抵抗というのをした。
文句を言いながら、足は緩めることなく真っすぐに突き進む。
いつのまにか一歩前にでた玲。端から見れば連れ去られてるというより、二人の男を従えている風に見れた。
そんな前を歩く玲の放った言葉に、やっと会話が成立したと言わんばかりに、茶髪は口を開いた。
「んーと、俺らも街で悪さしてて、危ない奴らに目をつけられたところを、神内さんに拾われたんだ。学園島の思想に合わない奴の居場所『アウロラ』って名前で、今は全部で八つの部隊が作られてるよ。 まぁ、お頭は何考えてるのかわからないって有名だし!瀧も色々考えてるけど、お頭にしかわからないスペックがあるんだよ!あ、あと四番隊には、ってかどこのビルにもお風呂あるよ?」
考察を再開する瀧の代わりに茶髪の男が玲の疑問に丁寧に説明する。
その内容に玲は益々首を傾げた。ハッキリいって、どう考えても自分がここにいるのか理由がわからない。
茶髪が話す中、玲はただただ黙って思考を巡らした。
神内さん――確か武という男が金髪のオールバックをそう呼んでいた気がする。
学園島に合わないとはつまり反対組織。
『アウロラ』という八つの部隊がある大規模組織のボスは、よくわからない考えの持ち主。……とりあえず、ビルにはお風呂があるらしいので一安心はした。
ビル全体はかなり入り組んでいるが、この道は基本的に真っ直ぐなので、迷いはせずに一つの大きな両開きのドアの前に出る。
「ふぅ、いつの間にかついてたのか」
「ここが俺らの城!」
茶髪の男が両開きのドアの片方を開けて招き入れてくれたので、玲もためらわず中に入った。
「おー……なんかイメージと違うな。ここ、本当に拉致部屋?」
あくまで玲は拉致されるらしいのだから、それ相応の覚悟はしていた。だが目の前に広がる部屋は拉致部屋というより、普通の部屋だった。
牢屋のようなものを想像していただけに拍子抜けである。
部屋の中心まで足を踏み入れ、玲は後ろを振り返る。未だに思考にふける瀧と愛想のよい笑みを浮かべる茶髪。
「茶髪、そーいやお前の名前は?坊主は瀧っていうんだろ?ああ、私は玲っていうんだ。とりあえず、この部屋でおとなしくしてれば問題ないんだろ?」
茶髪を見ながら、面倒そうに言葉を漏らし玲は頭をかいた。
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