chapter:2-6

 進む電車に揺られながら、赤い革の座席に座って、玲は向かいにいる心多を見る。


 この男、自炊とか毎日してるのか?女を誘うのに慣れてるのか?などなど、ちょっとした好奇心から生まれる疑問は頭にたくさん浮かんでいる。気になる、ならば直接聞けばいい。


「なぁ、心多はしょっちゅう女を家に連れてくのか?なんか、慣れてそうだよなぁ」


 多少ニヤニヤしながら話をふる。大分面白がっているのは確かだった。

 まるで新しい玩具でも見つけたかのように玲は心多に疑問をぶつけていった。

 もちろん、玲の性格上、逆に聞かれればアッサリ答えるのも確実だ。


「ははははっ、そんな風に見える?ショックだなぁ」


 なんとも反応しづらい質問だ。何をスーパーで買うか考えてた心多は突拍子もない玲の質問に少しだけ苦笑いをしながら、心にもないことを告げる 。


 女を連れ込んでいないわけではないが、それは俗に言うツレの女どもであり、基本的にそいつらも男連れでくる。

 否定したらそれは嘘になるし、きっと彼女が考えていることとも違うので肯定もしづらい。何とも言えない、っということで取れる反応は話をそらす。


「っと、ついたみたいだね。玲はよく男の家に行くの?」


 苦笑いする彼をジッと見ていたら、ちょうど 駅についたようだ。タイミング悪いなと玲は不満気な表情を浮かべ、席から立ち上がる。

 同時に心多からの質問に答える為、口を開いた。


「いや?行かない。……うん、多分。あれは家じゃないし。拉致られるのは、よくあるな」


 即答したものの、燈弥に捕まって研究施設に泊まりこみになるのを思いだし、若干言葉を濁す。

 でもあれは半ば無理矢理、強引な連れ込みなので、今回のパターンとは違う。


 よって、男の家によく行くことはない。


 それよりも気になるのは心多だ。

 初対面の女を軽く連れ込む感じ、結構慣れてるなと思い聞いてみたが。彼の口ぶりからして違うのかもしれない。でもハッキリ 否定はしないので、正直よくわからない。


 そんな話をしながら、二人は駅に着いた電車の扉をくぐる。そして、扉の向こう側で心多は玲に向け手を差し出し――。


 っというのも、なぜかはわからないが、この東地区の彼の自宅に一番近い駅は電車と駅のホームの隙間が少し広いのだ。

 いくら田舎の雰囲気を 出すとは言え、そのあたりまで凝らなくてもいいと思う。(きっと、そういった理由で 隙間があるのではない)。


 玲は心多に続いておりようとしたが、彼の行動に対して少し立ち止まる。扉の向こう側で手を差し出す心多に、どう返したらいいか迷ったからだ。


 普通の女なら可愛くお礼の一つでもいって、男の好意を受け取るだろ う。だが玲は、それができない。恥ずかしいからだ。


「……女扱いしなくていい」


 淡々と彼の好意を突っぱね、自分で電車をおりる。確かに、少し隙間があったが、こん

 なことで女扱いされたら、困る。慣れないことは、反応に困るのだ。

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