竜に転生したスイラが「人間として生きること」を目指す物語。前世の記憶を持つ彼女は人間の価値観を捨てられず、暴力的な竜たちの世界になじめません。人間ならきっと価値観を共有できるはずとヒトの世界へ向かうものの、そこでは竜は恐怖の象徴。正体を隠して生きることを決意した彼女は、やがて冒険者としての名を馳せるようになります。しかしコンビを組むことになったエルフの青年リュカは竜を憎んでおり、彼女の正体が知られれば関係は崩壊するかもしれません。
異種族間の価値観の違いを描く点が魅力の本作。スイラはヒトとして受け入れられるために試行錯誤しますが、そんな彼女と人間社会に根付く「竜への恐怖」とのギャップが、この物語に緊張感を生み出しています。また、黒竜カタストロフの一途すぎる求愛やスイラのユーモラスな語り口が物語を軽やかに彩り、シリアスと笑いのバランスが絶妙です。
異世界転生の枠を超えて「異種族間の壁を越える」ことをテーマにした本作は、ただのチート転生には物足りない人におすすめの作品です。