第10話エピローグ
そんな、《最悪なクリスマス》から、既に三週間程が経過したある日の事である…
新年を迎え、事務所でのんびりとくつろいでいたシチロー達の所へと、少し興奮した様子で羽毛田がやって来た。
「おいシチロー!これ見たか!これ!」
そう言って、羽毛田がテーブルの上に広げた一冊のある音楽雑誌に、シチロー達四人の目は釘付けになった。
「えええぇぇぇ~~っ!ホントかよ~~これ!」
そこに書かれていた内容とは…
【あのジョン・レノンの未発表曲デモテープが存在していた!】
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本国イギリスで発見されたというそのデモテープは、ファンからの熱い要望に応え来月初旬にもシングルCD化が決定。発売に先立ってその曲を試聴した音楽プロデューサーの話によれば、あの名曲【イマジン】に勝るとも劣らない最高の仕上がりであったという。発売が待ち遠しい限りである。
プロデューサー《ジョニー・ハドソン》氏の談話
『レノンが我々人類の為に最後に残してくれたこの曲は、戦争の愚かさ、平和の尊さ、そして命の尊さを存分なまでに感じさせてくれる遺作である。
改めて聴くレノンのあの伸びやかな歌声には、懐かしくて思わず涙が溢れ出してくる。
曲のバックに流れる激しい銃撃の効果音は、斬新でありリアルな戦争の悲惨さを訴えるに充分なレノンのアイデアであろう。
今世紀最高の名曲のひとつとなる事は間違い無い!』
「…だってさ……」
「ホントに、知らないって事は恐ろしいねぇ……」
☆FIN
†おまけのあとがき†
『チャリパイEp11~ジョン・レノンの幻の楽譜~』を読んでいただき、本当にありがとうございます。いつもあとがきは書いてなかったんですが、今回は最終話が短くなって少し余白が出来てしまったのであとがきを書こうかと思います。
今回の作品で一番のテーマとなったものは、やはり平和に対する考え方なんだと思います。
最後の方でチャリパイ&アルカイナとMI6は、レノンの作った素晴らしい平和を訴えた曲に感動しながらも、その感動も覚めやらぬうちになんとも派手な銃撃戦をおっ始めてしまいます。
なんて滑稽な!ナンセンスな!
と、読者の皆さんに思って頂ければ、幸いです。
平和とは何なのでしょう?
人間は、どこかしらに破壊願望や攻撃願望のようなものを心の片隅に少なからず持っているのではないかと思います。
スポーツだと言いながら、大晦日には格闘技で殴り合う男達を観て喜び、ゲームだと言いながら、画面に出てくる敵を夢中になって殺しまくる。残忍な殺人鬼と派手な爆発シーンの出てくる映画は大ヒット。それが、けしからんと思う人はいないでしょう。
僕は、平和は……人にはそういった感情がある事を知る事から始まるんだと思います。そして、そんな感情を認めながらもそれらを上手くコントロール出来る事。
それが平和なんじゃないかと思うのです。
アルカイナの派手な銃撃戦も、小説だから良いのです。アナタの積もり積もったイライラや憤慨は、決して人に向ける事無く、現実とは別の『頭の中に思い浮かべた敵』にぶつければ良いのです。そこでなら、たとえ脳天に『踵落とし』を喰らわせようが、核ミサイルのボタンを押そうがアナタの自由です。そんな訳ですから、これからも街中で機関銃をぶっ放し、ハイウェイで暴走運転を繰り返すかもしれないチャリパイやアルカイナを、どうか温かい心で迎え入れてやって下さいませ。
最後に、この作品は完全なるフィクションです。
本文に出てきたレノンが書いたという平和の歌は実際には存在しません。
あの詞についても、僕が勝手に考えたもので、レノンの詞ではない事を付け加えておきます。
チャリパイEp11~ジョン・レノンの幻の楽譜~ 夏目 漱一郎 @minoru_3930
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